ABMの成果が上がらない場合のターゲティング改善法

ABMの成果が上がらない場合のターゲティング改善法

はじめに

ABM(Account-Based Marketing)は、限られた優良顧客に的を絞り、
深い関係性を構築して成約率を高めるBtoBマーケティング戦略として、多くのSaaS企業で導入が進んでいます。
しかし、「施策は打っているのに成果が出ない」「ターゲット企業から反応が薄い」といった
悩みを抱えるケースも少なくありません。

その原因の多くは、ABMの"入口"である「ターゲティングの精度」にあります。
見込み度の低い企業を対象にしてしまっていたり、狙うべき部署や決裁者を誤っていたりと、
初期段階のズレが施策全体の効果を大きく左右してしまうのです。

本記事では、SaaS企業におけるABMの成果が上がらない原因を「ターゲティング」の視点から分解し、
どのように見直せば成果が改善するのかを、具体的なフレームと手順で解説します。
単に理想顧客像を定義するだけでなく、データ活用や社内連携を通じて、より実行性の高い改善策を提示していきます。

ABMの成果を高めたいと感じているSaaSマーケター・営業担当の方にとって、実践につながる視点を提供できれば幸いです。

1. ABMにおけるターゲティングの重要性と成果が出ない典型パターン

■ ABMはターゲティング精度が成否を左右する

ABMは、一般的なリードジェネレーションとは根本的にアプローチが異なります。
広く浅く集めたリードに対して個別対応していくのではなく、「最初から本当に狙うべき企業だけを絞り込む」
ことから始まります。つまり、ABMの効果を最大化するには、「最初に誰を対象に選んだか」が、
その後のあらゆる施策の成果を決定づけるのです。

特にSaaSビジネスでは、プロダクトとの親和性、導入ハードル、
既存の業務プロセスとの相性などがターゲティングの成否に大きく関わります。
適切にターゲット企業を設定できていなければ、いくらパーソナライズされたコンテンツや提案を行っても、
反応が薄く、無駄なリソース消費となってしまいます。

ターゲティングはABMの「土台」です。この土台が不安定なままでは、
いくら高度なキャンペーンを重ねても建物は崩れてしまいます。まずは「誰にアプローチすべきか」を
徹底的に見極めることが、すべてのスタート地点になります。

■ 成果が出にくい典型的なターゲティングミスとは

ABMがうまくいかない企業には、いくつかの共通した「ターゲティングの落とし穴」が存在します。
特にSaaS企業では、次のようなパターンがよく見られます。

〇 スコープが広すぎる

「この業界の企業すべてを狙おう」といった考え方は、ABMの本質と矛盾します。ABMは狭く、
深く関与することで成果を出す戦略であり、対象を広げすぎるとメッセージが薄まり、誰にも刺さらなくなります。

〇 意思決定者ではない部署をターゲットにしている

資料請求やセミナー参加などの接点があったからといって、その人が本当に決裁権を持っているとは限りません。
技術担当や実務者に訴求しても、予算の意思決定に関与していなければ、ABMの進行は停滞します。

〇 理想顧客像(ICP)の定義が曖昧

「この業界のこの規模の企業」というレベルで止まっていると、商談化しやすい顧客を見極めるには不十分です。
ABMでは、さらに深く業務プロセス、課題感、導入ハードルまで踏み込んだ顧客理解が必要になります。

こうしたズレを修正せずにABMを続けても、期待する成果は得られません。むしろリソースだけが消費され、
ABMそのものに対する社内の評価が下がってしまうことすらあります。

この章では、ABMにおけるターゲティングの重要性と、そのよくある失敗パターンを明確にしました。
次章では、これらの課題をどう見直し、改善していくかのステップに移っていきます。




2. 理想顧客像(ICP)の再定義とターゲット精度の高め方

■ ABMにおけるICPとは何か?再定義の重要性

ABMにおける「ICP(Ideal Customer Profile)」とは、単に業界や企業規模を指すのではなく、
「自社のサービスが最も価値を発揮し、かつ成約や継続利用につながりやすい企業の特徴」を多角的に定義したものです。
SaaSの場合、製品の利用シーンや導入までの意思決定プロセスが企業ごとに異なるため、
この定義を浅く済ませてしまうとABM全体の精度が下がってしまいます。

ICPの再定義を行う際には、以下のような観点から分析を深めることが有効です。

〇 直近6〜12ヶ月以内の受注企業に共通する要素(業界、従業員規模、拠点数など)
〇 初回商談から受注までのスピードが早かった企業の属性
〇 カスタマーサクセスの視点で、利用定着・継続率が高い企業の傾向
〇 契約時の意思決定に関わった部署や役職、社内の合意形成プロセス

これらを洗い出すことで、単なる「見込み顧客リスト」ではなく、
「今後も成果につながる可能性が高い企業群=本当に狙うべき対象」が明確になっていきます。

SaaSの特徴として、導入前の課題感やITリテラシー、社内体制の成熟度などが契約の成否に大きく影響します。
そのため、数字上の条件だけでなく、「顧客社内の心理的・構造的ハードル」も含めて、
ICPを再定義していくことが成果改善の第一歩となります。

■ ターゲティング精度を高めるための実践的なフレーム

ICPが明確になった後は、それに基づいたターゲティングを「実行可能な形」に落とし込んでいく必要があります。
マーケティングや営業が実際に動けるリストとして、どの企業・どの部門・どの役職を狙うべきかを具体化する段階です。

ここで活用できるのが、以下のような3層構造のターゲティングフレームです。

〇 ファーミング層(広い母集団)

業界全体、規模、地域、導入実績有無など、最初に抽出できる客観的条件で絞り込みます。

〇 フィルタリング層(条件の細分化)

受注傾向に基づいて、意思決定構造、導入ハードルの低さ、成長フェーズなどで精度を高めます。

〇 フォーカス層(営業アプローチの優先順位付け)

実際に商談化しやすく、営業効率が高い企業をピックアップ。さらに、ターゲット部署・役職を特定します。

このように、段階的に絞り込むことで、「広く調査しながらも、深く狙う」というABMらしいアプローチが可能になります。
また、特定の部署や役職名まで明確にすることで、パーソナライズされた提案やコンテンツの設計にもつなげやすくなります。

SaaSの導入は、多くの場合「情報システム部門」や「業務部門」との連携が鍵となります。
したがって、「どの部門の、どのような役割の人に、どんな課題感を持ってアプローチすべきか」を
明文化することで、マーケ・営業の共通言語が生まれ、連携精度も高まります。

3. ターゲット企業の理解を深める情報収集とスコアリング戦略

■ 企業理解を深めるための情報収集のポイント

ターゲティングの精度を高めるには、単に「誰を狙うか」だけでなく、
「その企業が今どのような状況にあるか」を深く理解する必要があります。
ABMでは、リストアップした企業それぞれに対して"個別戦略"を立てていくことが求められるため、
企業の外部・内部環境に関する情報収集が不可欠です。

具体的には、以下のような観点から企業理解を進めていきます。

〇 企業の事業戦略・ビジョン

IR資料、プレスリリース、代表メッセージなどを通じて、企業の中長期目標や成長方針を把握します。
特にSaaS導入に向いている「業務効率化」「DX推進」「新規事業開発」などのキーワードが出ていれば、有望な兆候です。

〇 組織構造や導入のキーパーソン

SNSやコーポレートサイトを使い、情報システム部門や業務改革部門の役職者の有無を確認します。
組織構造が明確で、責任者が可視化されている企業は、意思決定までの流れが見えやすくアプローチしやすくなります。

〇 競合の動向と市場トレンド

同業他社の導入事例やサービス選定傾向を参考にし、業界全体での変化に敏感かどうかを見極めます。
SaaSに対する意識が高まっている業界・企業群であれば、アプローチの反応も得やすくなります。

このように、企業理解を深めることで、表面的なターゲット設定にとどまらず、「なぜこの企業なのか」
「どういう切り口でアプローチすべきか」という戦略設計まで踏み込むことができます。

■ スコアリングで「商談可能性の高い企業」を浮き彫りにする

ターゲットを詳細に理解したうえで、さらに必要になるのが「優先順位の整理」です。
限られたリソースで最大限の成果を出すには、すべてのターゲットに同じ熱量でアプローチするのではなく、
「今、商談に進みやすい企業」を見極めることが重要です。

そこで活用したいのが「スコアリング」の考え方です。
スコアリングとは、企業の属性や行動に点数をつけて、商談可能性の高さを数値化する方法です。
たとえば、以下のような軸でスコアを設計します。

〇 属性スコア(業界・従業員数・拠点数・既存利用サービス)
〇 行動スコア(資料ダウンロード回数・ウェビナー参加・メール開封)
〇 時期スコア(新年度、決算期、新規拠点開設などのタイミング)

これらを組み合わせて算出されたスコアに基づき、営業やマーケティングがアプローチの優先度を決定します。
たとえば、一定スコア以上の企業に対しては、個別提案型のABM施策を展開し、
スコアが低い企業には継続的なナーチャリングを行うというように、施策の棲み分けが可能になります。

このようなスコアリングの導入は、ターゲティング精度の客観性を高め、
社内での施策の意思決定や評価軸の統一にも貢献します。SaaS商材のように検討期間が長く、
導入判断に複数の関係者が関与するビジネスモデルでは、特に効果的な手法です。




4. 営業・マーケ連携によるターゲティングの精度強化と組織内浸透

■ ターゲット像の認識を全社で揃える

ABMにおけるターゲティング精度を継続的に高めるためには、営業とマーケティングだけでなく、
組織全体で「理想顧客像」の認識を揃えることが重要です。なぜなら、ABMは単なるキャンペーンではなく、
顧客との関係構築を中長期で行う"戦略"であり、社内での解像度にズレがあると、成果が分散してしまうからです。

たとえば、マーケティングは「中堅製造業向け」とターゲットを捉えていても、
営業は「IT予算が豊富な大企業」に主軸を置いていた場合、訴求内容や提供コンテンツ、
アプローチタイミングがバラバラになります。このようなギャップは、
見込み客に「的外れな情報」を与える原因となり、せっかくの関係構築のチャンスを逃してしまいます。

ターゲット像の認識を社内で揃えるためには、以下のような取り組みが有効です。

〇 マーケ・営業合同のターゲティング見直し会議を定期開催する
〇 ICPやペルソナをドキュメント化し、全メンバーに共有する
〇 商談・失注事例をもとに、ターゲット像の微調整を行う機会を設ける

これにより、誰がどの企業に・どのような課題意識でアプローチするべきかが明確になり、
社内全体で統一された顧客戦略を展開できるようになります。

■ 組織内でターゲティングを運用するための仕組みづくり

ターゲティングは一度設計すれば終わりではなく、「運用の中で定期的に見直し・改善していく」ことが成功への鍵です。
そのためには、ターゲティング情報を一部門だけが抱え込まず、全社で活用・更新していける仕組みをつくる必要があります。

まず重要なのは、データの一元管理です。営業、マーケティング、カスタマーサクセスなど、
異なる部門が持つ顧客接点情報を、CRMやSFA、MAツールなどに統合して蓄積する体制を整えます。
これにより、過去の接点履歴やニーズ変化を正確に把握し、より精度の高いターゲティングに活かせるようになります。

次に、運用ルールの明文化です。ターゲット選定基準、スコア更新のタイミング、
営業アサインのルールなどを具体的に設計し、属人化を防ぎます。
たとえば、「スコアが80点以上になったら営業に通知」「90点以上でカスタム提案資料を送付」などの
アクションをルール化することで、スムーズな連携と再現性のある成果が生まれます。

また、成功事例の蓄積と共有も重要です。どのターゲット像が成果につながったか、
どの切り口が反応を得やすかったかなどを定期的に全体に共有することで、
ターゲティングの知見が組織全体に広がり、施策全体の質が高まっていきます。

このように、ターゲティングは一部の担当者の知識ではなく、
組織としての"資産"として扱う視点が、ABMの継続的成果につながります。


5. ターゲティング改善でABMの成果を再構築する実践ステップ

■ 初期設計の見直しと小さな検証から始める

ABMで成果が出ない場合、原因の多くはターゲティングの「初期設計」にあります。
見込み企業の選定が不十分なまま施策を進めてしまうと、いくら優れたコンテンツやツールを投入しても効果は限定的。
だからこそ、改善の第一歩は「最初に立ち返る」ことから始まります。

とはいえ、すべてを一度に見直そうとすると現場は混乱し、施策が止まってしまうリスクもあります。
そこで重要なのが、「一部のセグメントに絞った小さな検証」を行い、
成果が出るパターンを見極めてから、全体に横展開するアプローチです。

たとえば、以下のような進め方が有効です。

〇 過去6ヶ月で受注した企業の中から「商談までのスピードが早かった業種・部門・規模」にフォーカス
〇 そのセグメントに対して、専用コンテンツやメールキャンペーンを短期間で実施
〇 商談化率や反応率を観察し、効果があれば別の類似層へ拡張していく

このような「小さく始める→結果を見て拡張する」という流れを作ることで、現場の納得感も得られやすく、
実践レベルでの改善がスムーズに進みます。

■ ターゲティングのPDCAを継続的に回すために

ABMのターゲティング精度は、一度設計すれば永続的に機能するものではありません。
市場環境や顧客のニーズは常に変化しており、それに応じて狙うべき企業像や訴求ポイントも変わっていくからです。
だからこそ、ターゲティングにもPDCAの考え方が必要です。

以下は、ターゲティング改善を定常的な業務として組み込むためのポイントです。

〇 「月に1回のターゲット再評価ミーティング」を設け、成果データをもとに微調整を行う
〇 営業とマーケが共同でKPIレビューを実施し、現場の声と施策の成果を突き合わせる
〇 新規ターゲット候補企業の反応をモニタリングし、必要に応じてコンテンツやアプローチ方法を見直す

このようにPDCAサイクルを運用に組み込むことで、ABMは単なる施策ではなく
「顧客に寄り添い続けるビジネスプロセス」として組織に根付きます。
SaaSのように顧客接点の長いビジネスモデルでは、
こうした継続的な見直しが中長期的な成果を生み出します。



6. まとめ

ABMは、SaaS企業にとって継続的な収益を生み出すための強力な戦略です。
しかし、期待した成果が得られない場合、多くはターゲティングの精度に課題があります。
「誰を狙うか」という出発点が曖昧であれば、その後のあらゆる施策は成果につながらなくなってしまいます。

本記事では、ABMで成果が出ないと感じたときに見直すべき「ターゲティング改善の実践手法」について、
戦略から運用までを体系的に解説してきました。ターゲットの定義を深め、
データに基づいた優先順位づけを行い、営業とマーケが一体となって改善を続けることが、ABMの本質的な成功に直結します。

以下に、本記事の要点を整理します。

▷ ABMの成果が上がらない場合のターゲティング改善法の要点まとめ

■ ABMでは、最初のターゲティング設計が成果を左右する「戦略の土台」となる。
■ 理想顧客像(ICP)の定義は、業種・規模に加えて、業務課題や導入決定プロセスまで踏み込む必要がある。
■ スコアリングを活用することで、「今商談化しやすい企業」の優先順位を客観的に判断できる。
■ 営業・マーケティング間でターゲット像を共有し、組織的に運用・更新していく仕組みが成果を支える。
■ 改善は小さく始めてPDCAを回すことで、実践的かつ継続可能なABM戦略として成熟させられる。






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