前回は、1to1マーケティングにおける4Pの側面について解説しました。最終回となる今回は、顧客管理におけるビッグデータとAIの応用について紹介します。
第6回「ビッグデータとAI」を解説していきます。
第6回もくじ
1. ビッグデータで何ができるのか
ビッグデータは、データの収集、取捨選択、管理および処理に関して、一般的なソフトウェアの能力を超えたサイズのデータ集合と定義されています。情報技術の発達は、さまざまなタイプのデータを日々、大量に生み出しています。その結果、一人ひとりの顧客を深く理解し、より効果的なマーケティングを実践するための情報が、以前とは比較できないレベルであふれています。こうしたビッグデータは、分析に至らなくとも、ユーザーによる評価や投稿レビュー、顧客の好みを学習したレコメンデーションシステムなどで顧客のスイッチングコストを高め、企業の競争優位の武器にもなり得ます。しかし裏を返せば、ここから有用な知見や知識を得られなければ、これらは保存するに値しない単なるごみとなってしまいます。現在、多くの企業は、このビッグデータからいかに有用な情報を抽出し、マーケティングに利用するかに行き詰まっている状態です。
ビッグデータは、Volume(容量)、Variety(多様性)、Velocity(速度)の3次元で特徴付けられます。そこからVeracity(正確性)とValue(価値)を導き出すことが、今、ビジネスにおける最優先の課題になっています。
2. データの山から宝を探せ!― データマイニングとAI
データマイニングとは、大規模なデータから有用な情報を抽出するプロセスのことで、計算速度や実用性を重視し、解析の探索的な側面が強調されます。そこでの解析手法は、目的(従属)変数の有無とアプローチによって分類することができます(図1)。
マーケティングで使われる代表的なデータマイニングには、アソシエーションルール、クラスター分析、回帰分析、判別分析などが挙げられます。この4つについて説明します。
・アソシエーションルール
アソシエーションルールとは、どの商品が併買(へいばい:同じ売場にある任意の商品を一緒に購入すること)されやすいかを、大量の購買データから自動的に抽出する手法です。これは、店舗の棚割りやレコメンデーションに重要な示唆を与えます。
・クラスター分析
クラスター分析とは、過去の購入商品の種類によって顧客を分類する手法です。セグメント別に適切なプロモーションを仕掛けることができます。
・回帰分析
回帰分析とは、連続値をとる従属変数と説明変数との関係を推定する手法です。例えば、コンビニの需要予測では日時、天候、近隣のイベントなどが商品別の販売量にどう影響するかを、過去の販売データを使って分析します。
・判別分析
判別分析とは、従属変数が離散的な場合の回帰分析と解釈できる手法です。顧客の所属するRFM分析のクラス、あるいは顧客が、購買するか否かを、顧客のデモグラフィック特性に関連付けたりします。
データマイニングに使われるAIにはさまざまな定義があります。総じて、機械学習を発展させることによって、意思決定の能力が加わったものと解釈してよいでしょう。1950年代後半に考案されたニューラルネットワークによって、AIの1次ブームが起こりました。現在の3次ブームは、ディープラーニングの実用化によってもたらされたとはいえ、その背景にはビッグデータと膨大な計算を並列処理で可能にしたハードウェアの発達があります。
3. AIのわな ― ビジネスでAIを用いる際の2つの弱点
4. ビッグデータのパラドックス ― データが足りない!?
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 マスから個々人へのマーケティング
- 第2回 優良顧客の囲い込み
- 第3回 優良顧客を識別する
- 第4回 顧客の価値
- 第5回 1to1マーケティングにおける4Pの側面
- 第6回 ビッグデータとAI