ばねの導通不良と対策|ばねの基礎知識5

ばねの基礎知識

著者:國井技術士設計事務所 所長 國井 良昌

ばねの専門書や技術セミナーでは、ばねの種類、原理や計算式など、機械的な内容を多く扱うようです。その一方で、電気的な実務知識に関する情報提供が少ないと感じます。マイクロプロセッサやハードディスクなどの電子デバイスが、多くの生産ラインに組み込まれている現在、電波ノイズや静電気破壊の発生は、製品や装置に大きなダメージを与える可能性があります。今や全てのラインに、電子機器の生産ライン同等の電波ノイズや静電気対策が必要な時代なのです。今回は具体的なトラブル事例を取り上げ、ばねと導通に関する実務知識を解説します。

第5回「ばねの導通不良と対策」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 機械設計における導通とは

筆者はクライアント企業の設計審査に、度々ゲスト審査員として呼ばれます。多くの企業で、なかなか収束しないトラブルの一つに、生産組立中の電子機器や、生産ラインでの電気的不具合があります。解決の糸口となるのが、ばねによる電気的な接続・接触です(これは、ねじも同様です。 参考:ねじの接地対策と締付トルク・軸力、ねじの基礎知識6 )。

ばねの電気的な接続・接触には、主に2 つの用途があります。

・接地:グランドやアースの接地に、ばねが使われます。GNDとアルファベット3文字で表現されることもあります。接地には、主にステンレス系の材料でできた板ばねが用いられます。
・端子:主に電池の電極と接する端子として、ばねが使用されます。電池のプラス側が板ばね、マイナス側には圧縮コイルばねが用いられる場合がほとんどです。

それでは、実際のトラブルを例に、板ばねによる接地の導通性を考えていきましょう。

1:ステッパーが暴走した事例の検証
ある企業で、デジタル複合機の紙送り用ステッピングモータ(ステッパー)が暴走するトラブルが発生しました。調査の結果、低電圧電源装置を格納したシールドボックス(図1)に原因があると判明しました。ボックスに内蔵されている低電圧電源装置の基準電圧0 ボルト(接地、グランド、GND)がふらついていたのです。その結果、モータの制御回路が不安定となり、暴走していました。

低電圧電源装置を格納したシールドボックスの接地(引用: 國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.205)
図1:低電圧電源装置を格納したシールドボックスの接地(引用: 國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.205)

さらに調査を進めると、低電圧電源装置のシールドボックスのFG(Frame Ground、筐体接地・フレーム接地)が不安定な状態でした。電源や電子回路のシールドボックスは、十分な導通性を確認することが必要です。技術者なら、十分な導通性を数値で正確に捉える必要があります。図1のような低電圧電源装置を格納したシールドボックスにおいて、電気設計の観点から留意すべきことは、3点です。それは、導通固定箇所のピッチ(間隔)、材料の表面抵抗率、接触抵抗値です。

・導通固定箇所のピッチ(間隔)
まずは電気設計の基本中の基本です。図1内のL1、L2、L3は、それぞれ部品の取り付け間隔(ピッチ)を示しています。電気的には導通箇所のピッチを意味します。このピッチは、低電圧電源回路に実装されているクロック周波数の波長から計算して設定します。クロック周波数(動作周波数)とは、回路が処理の歩調を合わせるために用いられている信号およびその周波数のことです。計算不可能な場合、筆者は90mm以下のピッチを推奨しています。同時に、トラブルの原因究明や再発防止には、実機によるピッチの効果確認を行うことが必須です。

・材料の表面抵抗率
図1のシールドボックスと機器フレームの材料は、共にSECC(亜鉛めっき鋼板)であり、この表面抵抗率を把握しておくことが肝要です。同様に、図1中の板ばね材料SUS301-CPSの表面抵抗率も把握しておく必要があります。なお、表面低効率とは、材料の幅や厚さなど、サイズによらない材料固有の絶対値です。技術者や企業ごとの測定が理想ではあるものの、手間もかかるので、筆者は材料メーカーへの書面回答の依頼を推奨しています。

・接触抵抗値
図1のシールドボックス右側の断面図が、図2 です。図2 の円弧状の矢印で示すように、板ばねを介したシールドボックスと機器フレーム間の接触抵抗値を測定し、十分な導通性を保てているか必ず確認しましょう。

シールドボックスの断面図(引用:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.205)
図2:シールドボックスの断面図(引用:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.205)

2:機械系技術者に求められる電気知識
薬やベルト、メガネなど、電子部品が組み込まれていない製品でも、その生産ラインには自動組立装置や自動検査装置などに、多くの電子部品が組み込まれています。これらの電子部品を静電気や外部の電波から保護するため、機械系技術者には、電子部品が格納されているシールドボックスを、確実に接地することが求められます。

つまり、縦弾性係数や横弾性係数などに加えて、材料の特性を示す指標である体積抵抗率、表面抵抗率、接触抵抗などの電気的知識や判断が必須なのです。なお、抵抗値R(Ω)は、材料の形状、サイズ、測定位置などで変わるため、材料に固有の値がそれに変わる単位として使用されるようになっています。

・体積抵抗率
体積抵抗率とは、測定する試料の単位体積当たりの電気抵抗を示します。単位は、Ω・cmで表します。

・表面抵抗率
表面抵抗率とは、試料の単位表面積当たりの電気抵抗を表します。単位はΩ、もしくは単なる抵抗Rと区別するため、Ω/□、Ω/sq.(オーム・パー・スクエア)という単位を使います。

・導電率
導電率とは、体積抵抗率の逆数で、電気伝導率、電導率と呼ばれることもあります。単位はS/cm(ジーメンス・パー・センチメートル)です。

2. 導通の測定方法

前述の体積抵抗率や表面抵抗率の測定は、低抵抗率測定装置を用いて行います。実は電気系技術者にとっても、厄介な測定です。測定方法には、従来からの二端子法、より高精度な測定が可能な四端子法、そしてプローブを有する四探針法などがあります。中でも筆者は、四探針法の測定器を推奨しています。その理由は、四探針法プローブ(四探針電極)を試料に押し当てるだけで測定が可能なため、これまでの四端子法のように試料上での電極形成の必要がなくなり、飛躍的に作業効率が上がるためです(図3)。

四探針法の低抵抗率測定装置を用いた測定方法(引用:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.208)
図3:四探針法の低抵抗率測定装置を用いた測定方法(引用:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、日刊工業新聞社、2017年、P.208)

さて、接地の最終段階として、図1、図2に示した板ばねSUS301-CSPのばね性を利用した金属接触で、導通・接地を取っている部分の接触抵抗を確認します。電気的知識の乏しい機械系技術者の場合、接触抵抗の確認時、単純に導通のみを確認しがちです。デジタルマルチメータの導通チェックで、ピーという音のみの確認で終了としてしまうのです。これでは、どんなに大きな抵抗値があっても、見落としてしまいます。技術者として稚拙な判断です。

接触抵抗は、図4左側の「ばね押力-接触面積」と、右側の「接触面積-接触抵抗」の特性を把握しておきましょう。計測は大変ですが、シールドボックスの板金SECCと、板ばねSUS301-CSPの材料組み合わせはよく使われるので、1回計測すれば、使い回すことができます。

接触抵抗の確認 (引用:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、 日刊工業新聞社、2017年、P.209)
図4:接触抵抗の確認 (引用:國井良昌、ねじとばねから学ぶ!設計者のための機械要素、 日刊工業新聞社、2017年、P.209)

3. 導通不良の原因と解決方法

続きは資料をダウンロードしてご覧ください!

全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 ばねの種類と特徴
  • 第2回 板ばねの種類と加工方法
  • 第3回 ばねトラブルのランキング
  • 第4回 ばねの材料と特性
  • 第5回 ばねの導通不良と対策
  • 第6回 板ばねを用いた低コストな固定テクニック

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