前回はねじ材料の選択と評価について取り上げました。最終回の今回は、ねじの接地対策と締付トルク・軸力について学びましょう。
第6回「ねじの接地対策と締付トルク・軸力」を解説していきます。
第6回もくじ
1. ねじの接地対策
近年、ねじに関する電気・電子や静電気、そして、接地のトラブルが増加しています。接地不良によって起こった生産トラブルを例に、接地不良を防ぐための対策を紹介します。
1:接地とは
接地とは、電線や導電性の板金などを用いて、機器のフレームと大地を電気的に接続することです。接地は、アースやグランドとも呼ばれます。図1 は、テレビゲーム機の内部構造の写真です。テレビゲーム機もコンピュータなので、金属製の板バネを用いて接地されていることが分かります。
接地の目的は3 つあります。電気機器からの電磁波漏えいの防止、他の電気機器からの電磁波による誤動作の防止、作業者の感電防止です。メーカーの基本姿勢として、大型のコンピュータや周辺機器は接地を確実に取ることが求められます。
装置から発生する電磁波の目安として、一般財団法人VCCI 協会(コンピュータなどの情報機器から発生する電磁妨害波の自主規制を行う団体)が定めた規格があります。機器自体が放射する電磁波を一定以下のレベルに抑えることで、規格を取得できます。商業地域で使用する装置にはクラスA、家庭環境・住宅環境で使用する装置にはクラスB が適用されます。
2:接地不良の事例
ある食品会社の自動化生産ラインで生じた接地不良の事例を紹介します。その食品会社は土産用のお菓子類の製造・販売会社で、生産ラインにはマイクロプロセッサ・DRAM・HDD など、静電気で破損しやすい機器が多く用いられています。ある時、材料押出用のステッピングモータが暴走するトラブルが発生しました。調査の結果、図2 に示す低電圧電源装置が原因と判明しました。電源装置に内蔵されている低電圧電源回路の接地が不十分だったため、ステッピングモータの制御回路の動作が不安定となって暴走していたのです。
さらに調査を進めると、低電圧電源装置のシールドボックスのフレームグランド(FG:装置のフレームを電子回路の電位基準点に設定し、フレームと電気的に接続すること)が不十分で、電源装置の回路の電位が不安定な状態であることが判明しました。私たちが生活で使用する電子機器は、今後も増えるでしょう。その電源や電子回路のシールドボックスは、十分な導通性を確認することが求められます。
今回の事例では、低電圧電源装置をきちんと接地できていれば、ステッピングモータの暴走を防げました。主な接地対策の考え方は、導通固定箇所のピッチ寸法の最適化と、板バネを極力使用しないことです。
・導通固定箇所のピッチ寸法の最適化
図3 に、周辺部品を含めた低電圧電源装置の概略図を示します。接地を考える際は、取付ねじおよび板ばねの間隔(ピッチ)が問題となります。取付ねじと板ばねが、シールドボックスをフレームグランドするための導通固定箇所となるからです。今回のような装置では、L2 のピッチを忘れやすいので注意してください。必要なピッチは、低電圧電源回路に実装されているクロック周波数の波長から計算します。計算不可能な場合、筆者は目安として90mm 以下を指導しています。あくまで参考値であり、各装置で必要な導通固定箇所のピッチは異なります。
・接地が不安定・不確実な板バネを使用しない
図4 に示す板ばねは、低コスト化・組立作業性・保全作業性の容易化に役立ちます。しかし、ねじに比べて、ばねとシールドボックス表面との電気的接触が不安定・不確実になるというデメリットがあります。グランド・接地を確実に取りたい場合は、板ばねの使用を避けた方が無難です。
2. ねじの締付トルクと軸力
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 機械要素の学び方
- 第2回 ねじの種類と素材
- 第3回 ねじの加工方法
- 第4回 ねじトラブルの原因と対策
- 第5回 ねじ材料の選択と評価
- 第6回 ねじの接地対策と締付トルク・軸力