前回は、ばねトラブルのランキングと、トラブルの原因で最も多い形状不具合への対策を解説しました。2番目に多いトラブルの原因は、材料選択のミスです。今回は、ばねの材料と特性を学びましょう。
第4回「ばねの材料と特性」を解説していきます。
1. コイルばねの材料
筆者は、クライアント企業のDR(Design Review、設計審査)に、ゲスト審査員として出席することがあります。そのうちの数社で、驚くことがありました。DRの会議中、機械要素の材料選択に関する説明や質問がなく、話し合いが行われないまま、審査が進んでいくのです。料理人が食材を厳選したり、大工が建材を選定するように、職人の世界で素材決めは重要な工程です。1つの機械要素は小さくても、その集合体が製品になります。板金や樹脂、切削部品の材料は、ある程度理解できていても、ばねの材料となると実務知識が不足した技術者が多いようです。まずはコイルばねの主要な材料について、学んでいきましょう。
1:コイルばねの主要な材料3種
表1は、コイルばねの代表的な材料3種と、その特性をまとめたものです。縦弾性係数や横弾性係数やポアソン比など、難しい特性値が掲載されています。これらはCAE(Computer Aided Engineering)技術者が、コンピュータシミュレーションでコイルばねの安全率や、繰り返し回数の計算値を求める際、必ず使う重要なパラメータです。
SUS304-WPB、SWP-A、SWP-Bが、コイルばね材の代表格です。特に重機や重工業以外では、SUS304-WPBが主流の材料となっています。表1の材料特性をしっかり把握して、材料選択ミスを防ぎましょう。材料3種の特徴をまとめます。
・SUS304-WPB
SUS(Steel Use Stainless)とは、ステンレス(クロムCr を含んだ鉄)鋼線です。SWP-Aに比べ、耐久性は劣りますが、耐食性に優れています。
・SWP-A
ピアノ線(SWP、炭素鋼線)のA種です。耐久性・耐疲労性が良好です。防錆(せい)のために、めっき加工を要します。熱伝導率の大きい方から各種金属線を並べると、銅線、アルミニウム線、ピアノ線となります。
・SWP-B
ピアノ線のB種です。A種同様、耐疲労性が良好です。防錆(せい)のために、めっき加工を要します。耐久性がSWP-Aよりも優れています。
2:コイルばね材料の表面処理
1970~80年代、コイルばねの材料といえば、ピアノ線と呼ばれるSWP-Aが主流でした。鋼線はさびるため、表面処理として、防錆(せい)油を塗布したり、亜鉛めっきクロメートやニッケルめっきを施していました。
現在、主流のコイルばねの材料は、SUS304-WPBです。ステンレスなのでさびにくいのですが、ニッケルめっきを施すことがあります。その理由は3つあります。高温酸化の防止、耐食性のさらなる向上、ばね成型時や金属間摩擦による摩耗傷を防止するためです。
表面処理の選択ミスは、材料選択のミス同様に、用途や目的を把握しなかったために起きています。また環境による変化が起きる表面処理は、確認実験が必須です(参考: 金属表面処理の基礎知識1 )。
2. 板ばねの材料
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 ばねの種類と特徴
- 第2回 板ばねの種類と加工方法
- 第3回 ばねトラブルのランキング
- 第4回 ばねの材料と特性
- 第5回 ばねの導通不良と対策
- 第6回 板ばねを用いた低コストな固定テクニック