前回は、腐食の仕組みと種類を解説しました。今回は、耐食性に優れているアルミニウム、ステンレス鋼、銅の腐食について説明します。これらの金属は、特定の環境で腐食が生じます。対策を講じるために、腐食が生じる環境を学んでおきましょう。
第2回「アルミニウム、ステンレス鋼、銅の腐食」を解説していきます。
第2回もくじ
1. アルミニウムの腐食
アルミニウムには、軽い、強い、さびにくいという特性があり、家庭用品、高層ビル建材、船舶、車両、航空機、電気機器など、さまざまな分野で使用されています(図1)。ただし、純度の高い純アルミニウム(純度99.00% 以上)は強度が低く、機械的強度を必要としない部材や部品に使われます。強度を増すには、合金元素を添加します。
アルミニウムの表面には、保護性が高く、自己修復能力を持つ酸化皮膜(不動態皮膜)が形成されます。これにより、アルミニウムは高い耐食性を示します。酸化皮膜は、酸化アルミニウムAl₂O₃および、酸化アルミニウムの水和物 Al₂O₃・xH₂O からなり、pH4 ~ 8.5 の領域で安定です。
アルミニウムの腐食形態は、均一腐食と局部腐食の2つに大別されます。
酸化皮膜が均一に溶解すると均一腐食が発生し、酸化皮膜が局部的に破壊されると孔食などの局部腐食が発生します。アルミニウムの均一腐食は、酸性溶液あるいはアルカリ性溶液中で生じます。酸性・アルカリ性溶液の双方で腐食する金属を両性金属といいます。腐食速度は、pHの低下(4 以下)、もしくは上昇(9 以上)で増大します(図2)。
私たちの生活環境はpH7 の中性付近に保たれています。この環境下でアルミニウムの酸化皮膜は安定で、腐食が発生することはありません。
しかし、塩化物イオンが存在すると、酸化皮膜は局部的に破壊され、孔食が発生します。また、アルミニウム同士や他の物質との接合部にすきまがあると、すきま腐食(第1 回参照)が生じやすくなります。例えば、屋外で使用されるアルミニウム製品のすきまに雨水がたまると、雨水に溶解した塩化物イオンにより、すきま腐食が発生します。アルミニウムの耐食性を高める方法として、保護性に優れた厚い表面皮膜を作るアルマイト処理(陽極酸化と封孔処理)や、塗装があります。
2. ステンレス鋼の腐食
ステンレス鋼は、家庭用品や各種装置、プラント材料などあらゆる場面で使用されている耐食性材料です(図3)。11 ~ 12% 以上の濃度のクロムを含有する鉄合金を指し、大気中環境では全く腐食が発生しません。代表的なステンレス鋼には、鉄・クロムからなるフェライト系あるいはマルテンサイト系と、鉄・クロム・ニッケルからなるオーステナイト系があります。
ステンレス鋼の耐食性は、保護性に優れた酸化皮膜により発揮されます。酸化皮膜は、自己修復性能力の高いクロム酸化物やクロム水酸化物により形成され、アルミニウムの酸化皮膜より広いpH 領域で安定です。
ステンレス鋼の腐食形態は、アルミニウム同様、均一腐食と局部腐食の2 つに大別され、均一腐食はpH が極めて低い酸性溶液環境で発生します。海水中など塩化物イオン(ハロゲンイオン)を多く含有する環境では、孔食やすきま腐食などの局部腐食を生じます。最近は海水中でも十分な耐食性を発揮する耐孔食性ステンレス鋼(合金中のクロム濃度を高くし、合金元素にモリブデンを加える)も使われています。
ステンレス鋼の注意点は、応力腐食割れ(SCC:Stress CorrosionCracking)を起こしやすい点です。塩化物イオンを含む水溶液環境にある場合、わずかな引張応力でも割れが発生します。18Cr-8N(i SUS304系)に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼で、発生頻度が高くなります。
図4 は、SUS304 系ステンレス鋼が応力腐食割れを起こしたときの、塩化物イオン濃度と温度を示したグラフです。赤線は鋭敏化(第1 回参照)したステンレス鋼、青線はしていないものです。温度もしくは塩化物イオン濃度が高い環境で、応力腐食割れが発生しています。また、鋭敏化により耐食性が低下した部材では、より低温・低塩化物イオン濃度で応力腐食割れが発生します。
応力腐食割れを防ぐには、高純度フェライト系ステンレス鋼やニッケル濃度が高い高級オーステナイト系ステンレス鋼を使用します。また、電気防食も有効です。
3. 銅および銅合金の腐食
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 腐食とは?
- 第2回 アルミニウム、ステンレス鋼、銅の腐食
- 第3回 環境の腐食性と耐食材料
- 第4回 鉄鋼材料の防食
- 第5回 防食設計とは?防食管理とは?
- 第6回 腐食の解析と腐食事例のデータベース