飲食店を経営するうえで、避けて通れないのが「損益分岐点」の管理です。
日々の営業で売上が上がっていても、実は利益が出ていないというケースは少なくありません。
損益分岐点を明確に把握し、それを超える売上を安定して確保することが、黒字経営の第一歩です。
しかし実際には、この数値を正しく理解し、現場の運営に活かしている店舗はそれほど多くありません。
本稿では、飲食店における損益分岐点の定義と計算方法、
現場で起こりやすい課題、改善策の考え方について、わかりやすく整理していきます。
損益分岐点とは
損益分岐点とは、売上がすべての費用をちょうどカバーする金額、
つまり「利益ゼロ・損失ゼロ」の境界線のことを指します。
この金額を下回ると赤字、上回れば黒字になります。飲食店の損益分岐点を把握するには、以下の式が基本です。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
例えば、固定費が50万円、変動費率が60%の場合、損益分岐点売上高はおよそ125万円になります。
これを超えて初めて利益が発生します。
損益分岐点が把握されていない飲食店のリスク
損益分岐点を正確に把握していないと、日々の営業判断に以下のような影響を及ぼします。
売上があるのに利益が出ない
赤字なのに"繁盛している気がする"と錯覚しやすい
値引き戦略の失敗
値引きによって売上が増えても、利益を圧迫する可能性がある
新メニュー導入の判断ミス
原価率や変動費率を考慮せずに販売し、結果として損失につながる
営業時間や営業日数の見直しができない
どの時間帯が利益に寄与しているかの判断が不明確
経費削減の優先順位が見えない
削るべき費用と維持すべき費用の判断が感覚に頼りがち
このような状態では、いくら現場が頑張っても経営改善にはつながりません。
損益分岐点の算出と活用方法
損益分岐点を実際の経営に活かすためには、まず「現状把握」が不可欠です。以下のステップで整理しましょう。
①固定費の洗い出し
月ごとの家賃、人件費(最低人数の分)、リース料、管理費、基本光熱費など
②変動費の確認
月の売上と比較し、仕入れ原価やパートタイム給などの変動費の割合を算出
③変動費率の計算
変動費 ÷ 売上高で変動費率を算出
④損益分岐点売上高の算出
上記の式に基づき算出
次に、売上高と照らし合わせて、「どの曜日・時間帯が損益を超えているか」をチェックします。
これにより、「営業しているのに利益が出ていない時間帯」や「利益を生んでいる商品や客層」が見えてきます。
損益分岐点を活かした現場改善の具体策
算出した損益分岐点をもとに、次のような改善策が考えられます。
・メニューの見直し:原価率が高いのに売れていない商品は削減し、利益率の高い看板商品を中心に構成
・価格戦略の再設計:客単価を少しでも引き上げるドリンクセットやトッピング提案などを導入
・営業時間の最適化:利益が出ていない時間帯の営業を見直し、労働時間と光熱費を削減
・人員配置の調整:ピークタイム以外は最低限のスタッフで運営し、人件費の変動費率を下げる
・ランチ・ディナーの構成比分析:どちらが利益を生んでいるかを分析し、時間別の重点施策を立てる
・月次での目標明確化:損益分岐点を超えるための月次・週次・日次売上目標をスタッフと共有する
これにより、経営の意思決定が"感覚"から"数値根拠"へと変化し、無駄のない店舗運営が実現します。
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