前回は、ニューノーマル(新たな常態)として取り入れられた、新しい働き方に潜むさまざまなリスクについて解説しました。新型コロナウイルス感染症の流行が続く中、的確な感染防止対策の実践が今後も求められています。その際に必須となるのが、個々の職場の特性を踏まえた取り組みです。しかし、日常業務に加えて、ありとあらゆる感染防止対策を講じなければならないのかと戸惑っている企業も多いのではないでしょうか。今回は、オフィスや製造現場で必要な対策と、小売業や飲食業でのお客さまへの対応で押さえておくべきポイントについて説明します。
第5回「職場における具体的対策」を解説していきます。
1. オフィスでの対策~飛沫感染と接触感染を断つ対策の徹底
オフィスで、感染症を防止するために行うべき対策には、従業員一人ひとりによる対策と、企業として行うべき対策とがあります。
1:従業員一人ひとりの感染防止対策
新型コロナウイルス感染症の、主な感染経路とされる飛沫感染と接触感染を断つために、従業員の一人ひとりが感染防止対策を励行することが重要です(図1)。次に示す4 つの対策は、特別に難しいことではありません。しかし、それに加えて、これらの対策を徹底して実践できるよう、社内教育を実施することが求められます。また、家庭内感染の可能性もあるため、従業員本人だけでなく、家族も同様の感染防止対策を実践していくよう、従業員を啓発することも大切です。
・石けんによる手洗いと、消毒用アルコール製剤による消毒を励行する
・マスクを着用し、咳(せき)エチケットを心がける
・可能な範囲で、人との距離(ソーシャルディスタンス)を保つ
・発熱や咳、全身倦怠(けんたい)感などの症状があれば出社しない
など
2:企業として行うべきこと
企業は、労働契約法において、従業員が安全で健康に働けるよう配慮することが求められています。
労働契約法 第5 条(労働者の安全への配慮):
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
具体的には、次の7 つのことが挙げられます(図2)。
・職場に消毒用アルコール製剤を配備する
・机上に衝立(ついたて)などを設置する
・ドアノブやエレベータのスイッチなど、多くの従業員が触れる場所を消毒する
・大人数での会議を避ける
・出張による従業員の移動を減らすため、ウェブ会議を活用する
・定期的に換気を行う
・在宅勤務の導入
など
また、従業員に感染疑い、あるいは感染事例が発生した場合の対応についてはしっかりと準備しておき、実際にそうした事態が起こった時にあわてないようにします。
2. 製造現場での対策~3密(密集・密接・密閉)を避ける体制
製造現場の場合でも、一人ひとりの従業員が行うべき感染防止対策に変わりはありません。なおかつ、オフィスにおける対策に加え、業務の各場面で「3 密」を避ける体制を整える必要があります。例えば、朝礼や点呼では、多くの従業員が集まることが想定されるので、そこが密集場所とならないようにします。あわせて、着替えや食事休憩ではマスクを外すことになり、間近で会話や発声をする密接場面となりかねないので、注意が必要です。
また、多くの製造現場では、朝礼の際に職長などが検温や体調管理を実施しています(図3)。これらの検温・体調管理などの手順は、形式的に行うのではなく、的確に実施することが極めて重要となります。製造現場で感染者が発生すると、濃厚接触者を含め多くの従業員が欠けることになり、その後の製造計画に大きな影響が出てしまいます。このため、感染防止対策の徹底と検温・体調管理は最優先となります。
3. お客さまへの対応~感染防止対策で安全と安心を提供
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 感染症を正しく知る
- 第2回 流行の長期化
- 第3回 職場の感染症対策の基本
- 第4回 ニューノーマル(新たな常態)に落とし穴はないか
- 第5回 職場における具体的対策
- 第6回 準備と備蓄は裏切らない