前回は、カムアウト現象とトルクスレンチを紹介しました。今回は、スパナとめがねレンチについて解説します。スパナやめがねレンチを正しく使うことで、効率的にボルトやナットの締め付け作業を行うことができます。まずは、スパナについて学んでいきましょう。
第3回「スパナとめがねレンチ」を解説していきます。
第3回もくじ
1. スパナ
スパナはボルトやナットなどの取り付け、取り外しに使用する作業工具です。
・スパナの種類
スパナは頭部の形状によって丸形とやり形の 2 種類があります(図 1)。丸形は頭部が丸みを帯びており、やり形よりも厚く、大きなトルク(回転力)が必要な大径のボルトやナットの締緩作業に適しています。やり形は頭部が少し尖った形状で、丸形よりも薄く軽いので、作業環境が狭いときなど取り扱いやすいことが利点です。
スパナは元来、丸形しかなく、先端が丸みを帯びているため偏狭部では干渉し使いにくいことが課題でした。そこで先端がスリムなやり形が開発され、現在ではやり形が主流になっています。丸形とやり形の使い分けは、強度なら丸形、使いやすさはやり形と覚えておくとよいでしょう。また、スパナの片端だけに口があるものを片口、両端に口があるものを両口といいます。
・スパナの大きさ
ボルトやナットを挟む空間を口(くち)といい、スパナの大きさは口の2 面幅(互いに平行する 2 面間の距離)の寸法(mm)で表します。JIS では 2 面幅の寸法を呼びと定義しています(図 2)。また、慣用的には口径といわれることが多いです。例えば、呼び(口径)5.5 のスパナの口の2面幅は5.5mm、呼び10のスパナの口の2面幅は10mmです。両口で、2 面幅 12mm と 14mm のスパナは 12×14 と表記されます。
・スパナの使用時の注意点
スパナは呼びの寸法とボルトやナットの 2 面幅が一致するものを使用します。スパナの呼びがボルトやナットの幅より多少大きくても、ボルトやナットの角が引っかかるため回すことができますが、無理に回すと、ボルトやナットの頭をつぶすことになります。スパナは 2 点でボルトやナットと接します(図 3)。
ボルトやナットを締め付ける際は、手の力で締められるところまで手で締め付けます。これは、手は回転角度が大きく作業効率が高いためです。手で締め付けられなくなったら、スパナを使って締め付けていきます。スパナの口は柄の中心に対して 15°傾いています。そのため、偏狭な場所では表裏を交互に使うことで、送り角 60°でボルトやナットを回すことができます(図 4)。
2. めがねレンチ
めがねレンチはスパナと同様に、ボルトやナットの取り付け、取り外しに使用する作業工具です。めがねレンチは口が輪になっており、めがねに似ていることから、めがねレンチと名付けられました。
・めがねレンチの種類
めがねレンチは柄の形状によってフラット形とオフセット形があります(図 5)。フラット形は柄が直線で長いため、奥まった空間にあるボルトやナットの締緩作業に適しています。オフセット形は柄に角度が付いており、柄の角度をオフセット角といいます。オフセット角は一般に 15°、45°、60°の 3 種類です。オフセット形は平坦な場所のボルトやナットでも手を入れる空間が確保でき、凹んだ場所にあるボルトやナットの締緩作業に適しています。
めがねレンチの大きさはスパナと同様に、口の 2 面幅で表し、例えば、呼びが 12×13 と表記されている場合は、片方の口の 2 面幅が 12mm、もう片方 2 面幅が 13mm になります。
・めがねレンチの利点と欠点
めがねレンチの特徴は、口が輪になっているためボルトやナットから外れにくいことと、輪の中が 12 個の山形状になっているためボルトやナットを 6 点で拘束できることです(図 6)。従って、めがねレンチはスパナに比べて狭い場所でも作業がしやすく、均等に回転力を伝えることができます。ただし、めがねレンチは規定トルク以上に締め付け過ぎる傾向にあります。強く締め過ぎるとボルトを折損するので注意が必要です。
めがねレンチの口径がボルトやナットの 2 面幅よりも大きいものを使用すると、めがねレンチとボルトやナットの間に伱間ができるため、ボルトやナットの角部を痛めてしまいます。めがねレンチの口径は必ずボルトやナットの 2 面幅と同じものを使用します。
3. コンビネーションスパナ
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 作業工具の種類
- 第2回 ドライバの種類と正しい使い方
- 第3回 カムアウト現象とトルクスレンチ
- 第4回 スパナとめがねレンチ
- 第5回 モンキレンチとソケットレンチ
- 第6回 ペンチとニッパ