前回は、正規・非正規雇用の格差解消の実現を目的とする、同一労働同一賃金の導入について解説しました。働き方改革で推進するものには、柔軟な働き方というのがあります。近年のPCやモバイルメディア、またソーシャルメディアやクラウドなど情報技術の発展は、私たちがさまざまな場所で働くことを可能にしました。今回は、こうした情報技術によって実現した働き方であるテレワークと、それに関連した複業・兼業の広がりを取り上げます。
第5回「柔軟な働き方の実現」を解説していきます。
第5回もくじ
1. テレワークは浸透するか?
テレワークは、働き方改革を実施する上で、有効な手段だと考えられています。それ以外にも労働力人口の確保や地域活性化、また環境負荷軽減などが見込まれています。また労働者側のメリットとしては、育児や介護なども含めたワークライフバランスの実現や通勤時間の削減、さらに住環境の選択肢が広がるなどの効果が期待されています。企業には、生産性の向上、人材確保、BCP(事業継続計画)対策の実現などのメリットがあります。
総務省や厚生労働省、東京都などは、テレワークの普及を目的に、2020年7月24日、開催予定であった東京オリンピック開会式の日を「テレワーク・デイズ」として設定し、2017年からテレワークの一斉実施を呼びかけてきました。しかし、実際は2020年のコロナ禍によって、テレワークは半ば強制的に広がっていきました。
パーソル総合研究所の調査によると、2020年3月の時点ではテレワーク実施者が13.2%だったのに対し、最初の緊急事態宣言が出された4月には27.9%にまで増えました。その後、緊急事態宣言が解除された5月末から6月では25.7%、第3波と呼ばれた11月半ばで24.7%となっています。ただし、これらの数字は正社員に関するものです。例えば、2020年11月のテレワーク実施率調査では、正社員24.7%に対して、非正規雇用では15.8%でした。
また、この数値は企業規模でも差があります。図1のように、従業員数10,000人以上の企業ではテレワーク実施率が45%なのに対し、規模が小さくなるにつれて徐々に減少し、100人未満の企業では13.1%になっています。
このように、テレワークが「大規模企業の正社員のみ可能」という半ば特権的なものにならないようにすることが、柔軟な働き方を実現していく上で重要になってきます。
一方、テレワークが広がる中で、心理面を含めた健康への影響、生産性やマネジメント、評価への影響などが取り沙汰されるようになってきました。コロナ禍でのテレワークは、WFH(Work From Home)と呼ばれるように、移動や外出が制限される中での働き方です。現実的なテレワーク普及のためには、そのことを踏まえた上で、長期的な効果・成果を見定め、制度やワークフローを整備していくことが求められるでしょう。
2. 副業・兼業の広がり
以前は、副業・兼業を禁止している企業が多かったものの、働き方改革の流れの中で、原則として認める方向が強まっています。一例として、サイボウズ株式会社ではさまざまな働き方を認める制度の一つとして、既に2012年から副業を解禁しています。
厚生労働省は、2018年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を設定しました。そこでは、労働者のメリットとして、所得増加はもちろん、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができ、自分がやりたいことに挑戦して自己実現を追求することができるといった点を挙げています。また、企業においては、社内では得られない知識やスキルを獲得でき、労働者の自律性や自主性を促すことができること、また事業機会の拡大などのメリットが挙げられています。
テレワークが広がる中、通勤・移動時間の削減で自由に使える時間が増え、副業・兼業に意欲を持つ人がこれまで以上に増えつつあります。例えばヤフー株式会社(Yahoo! JAPAN)では、2020年7月にギグパートナーという名称で副業・兼業人材を募集したところ、10歳から80歳まで4,500人以上の応募があったといいます(図2)。
ただし、このように副業・兼業を認めたり募集したりする企業が増えていく中で、労働時間を自己管理する必要があることや、秘密保持の徹底、また移動中の労災をどのように認定するのかなど、クリアしておくべきポイントも数多くあります。先ほどの副業・兼業の促進に関するガイドラインでは、安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務、誠実義務などが、企業の留意するものとして挙げられています。その他にも、労働時間管理、健康管理などが企業の留意事項として含まれています。
3. オフィスの縮小・移転
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 働き方改革の背景
- 第2回 働き方改革の向かう先
- 第3回 労働時間の是正
- 第4回 正規・非正規雇用の格差解消
- 第5回 柔軟な働き方の実現
- 第6回 多様性をどのように確保するか?