前回は、情報技術の活用によって実現した働き方であるテレワークと、それに関連した副業・兼業の広がりを取り上げ、柔軟な働き方の実現について紹介しました。少子高齢化が進む中で労働力人口確保のために、近年では「一億総活躍社会」が目指されています。そこでイメージされているのは、年齢や性別、国籍などに関係なく、多様な人々が柔軟に働ける社会です。最終回となる今回は、働く人々の多様性(ダイバーシティ)を確保するための取り組みを解説します。
第6回「多様性をどのように確保するか?」を解説していきます。
第6回もくじ
1. 女性活躍に向けて
これまでの日本企業は、日本人男性を対象に終身雇用、年功序列を中心とする人事制度を行ってきたため、労働人口の確保という点が困難になってきています。多様性のある職場の実現に向けて、日本で大きく取り上げられるのは、女性の活躍です。世界経済フォーラム(WEF)による「ジェンダーギャップ指数2021」の結果を見ると、日本は調査対象156か国中の120位でした。経済領域を見ると労働参加率の男女格差は国際平均よりも高いものの、管理職や専門職・技術職などで格差が目立っています。
図1にあるように、いわゆるM字カーブは徐々に解消され、女性の就業率は70~80%近くになっています。未婚率が高まっていることもあるとはいえ、かつてのように結婚や出産、育児などで仕事を辞める女性が減っていることも影響しているでしょう。
しかし、男性と比べて非正規雇用が多い、管理職に占める割合が少ないなど、女性をめぐる労働環境は今後も改善の余地があります。例えば「男女共同参画白書」によると、2019年の時点で非正規雇用労働者の割合は、男性22.8%に対して女性は56.0%でした。また、上場企業の役員に占める女性の割合は5.2%にとどまっています。
日経WOMANと日経ウーマノミクス・プロジェクトが発表する「女性が活躍する会社BEST100」では、管理職登用、女性活躍推進、ワークライフバランス、ダイバーシティ推進の4つの指標で企業を測定・採点しています。2020年度版では、日本IBMやアクセンチュア、花王グループなどが上位になりました(表1)。
例えば、日本IBMは女性役員が44人で18%を占めており、管理職登用で高い評価でした。また、花王グループは女性正社員の55%が既婚者であり、子どものいる女性正社員比率も47%というダイバーシティの点で評価されています。また、厚生労働省では、女性活躍推進法に基づいて採用、継続就業、労働時間、管理職比率、多様なキャリアコースなど、5つの項目のなかで一定の要件を満たした企業に「えるぼし認定」を行っています。
企業は、今後の採用を考える場合、女性を無視することはできません。以上のようなランキングや認定によって女性の働きやすさやダイバーシティ推進が可視化されることにより、就職先や転職先の選び方を含めて、各企業の採用の競争力にも影響するようになるでしょう。女性活躍推進法は2019年に改定され、さらに2022年からの行動計画や情報公開の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます。このように、女性活躍推進は大企業だけが取り組むものではなくなってきています。
2. ダイバーシティ社会の実現
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 働き方改革の背景
- 第2回 働き方改革の向かう先
- 第3回 労働時間の是正
- 第4回 正規・非正規雇用の格差解消
- 第5回 柔軟な働き方の実現
- 第6回 多様性をどのように確保するか?