前回は、働き方改革の社会的な背景を説明しました。日本は、少子化や、人生100年時代ともいわれる高齢化が進む中で、労働力が減少していく社会となります。高齢者や女性に加え、より一層多様なバックグラウンドを持つ人たちが一緒に働く時代になっていきます。また、テクノロジーの発展と普及によって、働き方も従来とは変わってくることを指摘しました。今回は、こうした背景を踏まえた上で、働き方改革がどこに向かうのかを解説します。
第2回「働き方改革の向かう先」を解説していきます。
第2回もくじ
1. 働き方改革の2 つのポイント
働き方改革は、働く人たちが個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするというものです。2018年に働き方改革関連法が成立し、2019年より順次施行されています。そして、厚生労働省は2019年、ガイドライン「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」を示しました(図1)。そこに、働き方改革において、大きく2つのポイントを挙げています。1つ目は、労働時間法制の見直しです。残業を含む長時間労働を減らし、ワーク・ライフ・バランスを取ることを目指すというものです。2つ目は、雇用形態にかかわらず公正な待遇の確保です。正規雇用と非正規雇用との間にあるさまざまな待遇格差をなくし、雇用形態に関わることなく働き続けることができる社会の実現を目指すというものです。
2. 生産性の向上を目指して
働き方改革は、少子高齢化が進む中で労働時間や雇用形態による格差を改善していくことでもあります。そして、企業において利益・業績を落とさずにそれを実現するためには、生産性を向上させることが重要になります。
日本の生産性の低さは、これまでも指摘されてきました。生産性は、就業者1人(あるいは労働時間)当たりの付加価値(GDP)で算出されます。OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)加盟諸国における労働生産性の国際比較(2019年)によると、日本の就業者1人当たりの労働生産性は26位でOECD平均を下回り、他の国々と比べて高くないことが分かります。これは1970年以降、最も低い順位となっています。
図2が示す1時間当たりの労働生産性も見てみましょう。こちらも平均を下回る21位となっています。これらのデータは、効率的に働くことができていない結果であり、生み出す商品やサービスの付加価値が高くない結果ともいえます。
生産性を高めるためには、同じ製品やサービスであれば、より少人数・短時間で効率よく仕事をこなしていく必要があります。あるいは、なるべく高い付加価値をつけるようなビジネスを展開していく必要があるでしょう。もちろん、効率的な働き方や付加価値の高め方は、製造業とサービス業で全く異なります。しかし、どのような業種であれ、効率よく働くことで労働時間を抑えることが、多様な働き方を実現させていく上で重要であり、付加価値を高めるイノベーションにもつながっていくと期待されています。このように、働き方改革と生産性の向上とをセットで考えることは、1つのポイントになります。
3. 仕事への取り組み
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 働き方改革の背景
- 第2回 働き方改革の向かう先
- 第3回 労働時間の是正
- 第4回 正規・非正規雇用の格差解消
- 第5回 柔軟な働き方の実現
- 第6回 多様性をどのように確保するか?