前回は、木造住宅の構造として、壁量計算、必要壁量などを紹介しました。最終回となる今回は、木造建築の可能性を解説します。可能性という点で欠かせないのは、いかに大規模な建築物を作れるかということです。小さな木造建築で問題になるのは、防火地域に建物を作るときだけです。しかし、木造建築の規模が大きくなると、材料強度の安全性、構造(架構)の安全性、防火(不燃、燃えしろ設計)耐火の安全性、避難の安全性などが建築基準法で規定されています。今回は、これらの説明と、建築基準法をクリアした実際の木造建築の事例を紹介します。
第6回「木造建築の可能性」を解説していきます。
1. 大断面集成材を使った建築
材料強度の安全性、構造(架構)の安全性を確保するために開発されたのが、大断面集成材です。大断面集成材を利用すると、構造形態上、大きな空間を作ることができ、空間の形の制限から解放されます。もともとの材料が木材であることから、木の質感があり、鉄筋コンクリートや鉄骨造よりも軽量であり、大きな空間には、とても有効です。
集成材とは、小径の引き材を接着剤で積層させたものをいいます(図1)。集成材の歴史は古く、100年以上も前から使われています。フェノール樹脂接着材などの接着技術が進歩したことにより、大型の木造建築が可能となりました。
長野オリンピックのスピードスケート会場として利用されたエムウェーブも、集成材を使用した代表的な木造建築の一つです(図2)。信州カラマツ材の集成材を使用して半剛性つり屋根構造とすることで80mのスパンを実現し、信州の山並みを表現しています。
また、金沢駅東広場にある鼓門のようなスパイラルの大断面材も作ることができるため、さまざまな用途で自由な形の空間を表現できます(図3)。
2. CLT(Cross Laminated Timber)を使った建築
ここでは、CLT(Cross Laminated Timber)を使った建築を紹介します。CLTとは、小径の引き板を、繊維方向が直交するように接着剤で積層させた建築材料です(図4)。
CLTは、1995年頃からオーストリアを中心として発展し、現在はヨーロッパ各地、カナダ、アメリカ、オーストラリア、日本などにおいて急速に広がっています。大断面集成材が、大きな断面を持つ長い材料であるのに対して、CLTは、一般的な合板よりも厚みのある、大きな板の材料です。そのため、壁式構造の特性を生かした大規模な木造建築を作ることができ、さらに、木材特有の断熱性や、自然素材の柔らかさを表現することもできます。そのため近年では、戸建て住宅のみならず、中高層のオフィスビルや共同住宅、高齢者福祉施設、ホテルなど、利用範囲が拡大しています。
2016年4月、CLT関連の建築基準法告示が公布・施行され、続いて2019年6月末に改正建築基準法が施行されました。これらは、中規模木造建築の規制を緩和する内容であり、これから中規模木造建築が増えると予想されます。
CLTを使った事例として、2020年に竣工したメルディア高機能木材研究所があります(図5)。北九州市立大学福田展淳研究室と株式会社三栄建築設計との共同研究の拠点として建設され、2021 GOODDESIGN AWARD(グッドデザイン賞)も受賞しています。メルディア高機能木材研究所は、国産杉のCLTを利用しており、軸方向と直交方向に圧縮力と引張力を負担させる折板構造とし、軽量化を実現しコストを抑えているのが特徴です。また、CLTの板材を外壁と屋根に使うことで、高い断熱性能も確保しています。
高層の建築では、ノルウェーのブルムンダルにミョーストーネットという18階建ての複合ビルがあります(図6)。スカンジナビアの気候風土にも適合し、とても魅力的な木造建築です。
3. 不燃化した木材を使った建築
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 木材で造られている建物
- 第2回 木造住宅の設計(前編)
- 第3回 木造住宅の設計(後編)
- 第4回 木造住宅に関わる建築法規
- 第5回 木造住宅の構造
- 第6回 木造建築の可能性