前回までは、住まい方をイメージしながら建物を設計するというソフトウエアのことについて説明してきました。一方で、人が実際に住むためには、人や家具などの重さ、風、地震、地域によっては積雪などにも耐えられるよう、構造的に安全な建物(ハードウエア)にすることが必要です。このハードウエアとソフトウエアをバランス良く設計することが、良い設計であるといえます。今回は、木造住宅の構造について説明します。
第5回「木造住宅の構造」を解説していきます。
1. 木造軸組の計画と壁量計算
一般的な木造軸組構法において、作用する荷重には、鉛直荷重と水平荷重があります。鉛直荷重は、屋根の瓦や外壁、床などの建物自体の荷重の他に、屋根の積雪や各階の床に載っている人や家具・設備などの荷重を示します(図1)。
一方、水平荷重とは、地震や風圧力により横から受ける荷重を示します(図2)。
木造軸組構法において、壁は、建物の横揺れに対して変形を防ぐ役割を果たしています。その壁は、柱と横架材(土台、梁(はり)、胴差、軒桁)で囲われており、壁の中の筋かい(柱と柱の間に取り付ける補強材)や、壁に貼った面材(構造用合板など)が横からの荷重に対して抵抗しています(図3)。
平面プランができた後に検討しなければならないのは、柱と横架材の配置です。壁の位置が決まれば、個々の壁の強さは、筋かいや面材により、ある程度調整ができます。
軸組の計画では、荷重が屋根から基礎に向かって伝わるため、小屋組みから2階床組み、1階床組み、基礎へと進めていきます。その際、垂直材と横架材の架構を表現するために、小屋伏図(小屋組を上から見た図面)、2階床伏図(図4)、1階床伏図(土台伏せも兼ねる)、基礎伏図を描きます。
現在、建築基準法第6条四号に該当する、「階数2階以下、延べ床面積500m2以下、最高高さ13m以下、かつ、軒高9m以下の小規模な木造建築物」については、建築基準法に規定される仕様を満足することにより、構造計算を省略することができます。しかし、昨今は、屋根にソーラーパネルを設置することが多くなり、また断熱性能も高くなり、建物が重くなっていることなどから、この規定は、近々改正される予定です。ただし、ここでは、現行の建築基準法施行令第46条の規定「通称:壁量計算(建物にかかる地震力、風圧力に対して必要な壁量を満たしているかを確かめる計算)」の考え方や、その計算手順について説明します。
一般的な木造住宅については、地震力や風圧力に対する構造安全性を、壁量計算により確認します。壁量計算とは、建物内に、水平抵抗要素としての耐力壁を、必要数配置してあることを確認するための計算手法です。地震力、および風圧力に対する構造安全性の確認を壁量計算により行う場合、次の手順で行います。
・地震力、および風圧力に対する必要壁量を算定する。
・存在壁量(設計壁量)を算定する。
・必要壁量に対する存在壁量を比較検討する。
・四分割法による壁配置を検討する。
2. 地震力と風圧力に対する必要な壁
ここでは、上記で述べた4つのうち、地震力、および風圧力に対する必要壁量の算定、存在壁量(設計壁量)の算定、必要壁量に対する存在壁量の比較検討の3つについて解説します。
・地震力、および風圧力に対する必要壁量の算定
地震力と風圧力に対する必要壁量をそれぞれ算定します。
(1)地震力に対する必要壁量
地震力に対する必要壁量は、1階、および2階の各床面積に、建築基準法施行令第46条の表2の値を乗じて求めます(表1)。床面積に乗じる値は、建物の屋根仕上げの種類、および建物の階数により決定されます。地震力に対する必要壁量は、以下の手順により求めます。
1:1階、および2階の床面積を求める。
2:屋根の仕上げにより、重い屋根か軽い屋根かを判断する。
3:各階の床面積に、それぞれの数値を乗じて、地震力に対する必要壁量を求める。
これらの値が、地震力に対する1階、および2階のX方向、並びにY方向の必要壁量となります。地震力に対する各階の必要壁量は、X方向、およびY方向で同じ値となります。
(2)風圧力に対する必要壁量
風圧力に対する必要壁量は、各階のX方向、およびY方向について、風圧力が作用する建物の見付け面の面積(鉛直投影面積)に、建築基準法施行令46条の表3の数値(この例では、50cm/m2)を乗じて求めます(表2)。
風圧力が作用する建物の見付け面の面積とは、対象階の床から1.35m上がった位置を基準として、これより上の部分の見付け面の面積のことを指します(図5)。一般的に、建物の平面形状が長方形の場合、長辺方向の必要壁量に比べて、短辺方向の必要壁量の方が、大きな値を示します。
・存在壁量(設計壁量)の算定
存在壁量とは、その建物が持っている耐力壁の量のことを指します。耐力壁とは、平力に対して有効に抵抗しうる壁(仕様を満足する壁)のことです。この耐力壁の仕様は、関連告示(建設省表示第1100号)により、壁倍率が定められています。法令などに示される仕様を満足する耐力壁については、その性能により、0.5 ~ 5.0の範囲で倍率が与えられています。この倍率を壁倍率と呼びます。数値が大きいほど、強い性能を有している壁となります。
壁倍率の値は、足し合わせが可能です。ただし、足し合わせ時の値の最大値は、5.0と定められています。また、壁の実長に壁倍率の値を乗じた数値を有効壁長といい、建物の各階、方向ごとに計算します。
耐力壁を建物内に配置する場合、以下の4つを参考に配置するといいでしょう。
1:建物外周4辺のとおりに、必要壁量の1/4以上の耐力壁をできるだけ配置する。
2:建物中央部1/2の領域(建物外側の1/4の領域を除いた部分)に、必要壁量の1/2以上の耐力壁を配置する。
3:建物内に配置する耐力壁の量は、各階、各方向について、必要壁量の約1.5倍を目安とする。
4:内壁や隅角部の耐力壁については、耐力壁の施工の納まりを考慮する。また、耐力壁の種類を、意味なく多くしないようにする。
存在壁量の算定を行うには、まず、図6に示すような、耐力壁配置図を各階について作成します。耐力壁の配置ができたら、存在壁量の算定を行います。建物の各階の平面図に、平面を4等分する線をX方向、およびY方向に、それぞれ記入します。各階、最外壁から1/4の範囲と、中央部1/2の範囲に分けて、存在壁量を計算します。各階のX方向、およびY方向の各範囲について、耐力壁の種類ごとに、「壁長×枚数×壁倍率(有効壁長)」を記入します。各階のX方向、およびY方向について、それぞれ有効壁長を合計した値が、各階、各方向の存在壁量となります。
・必要壁量に対する存在壁量の比(壁率比)の検討
存在壁量の比の検討とは、地震力と風圧力に対する必要壁量に対して、存在壁量が上回っていることを確認することです。その際、各階、各方向について1.5倍を超えることを目安として確認を行います。存在壁量が必要壁量を下回っている場合は、耐力壁の量を増やす必要があります(表3)。
3. 耐力壁のバランス(四分割法による壁配置の検討)
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 木材で造られている建物
- 第2回 木造住宅の設計(前編)
- 第3回 木造住宅の設計(後編)
- 第4回 木造住宅に関わる建築法規
- 第5回 木造住宅の構造
- 第6回 木造建築の可能性