
前回は、防腐処理、防火処理、塗装、サーモウッドなど、木材の弱点を補う処理方法を取り上げました。今回は、日本国内における木材流通の仕組みと、それを踏まえた木材の賢い調達方法、木材と環境問題の関わりについて解説します。今後、重要度が高まる合法木材の各種認証についても、学んでいきましょう。
第8回「木材の流通と環境問題」を解説していきます。
第8回もくじ
1. 木材流通の仕組み
国内外の森林から切り出された木材の流通は、多くのプレーヤーが介在する複雑な流れとなっています。国内の木材流通の基本的な流れを、図 1 に示します。

国産材の場合は、まず、森林所有者(国公有林を含む)の所有山林から森林組合や伐採業者が立木を伐り出し、丸太を生産します(所有者自身が行うケースもあります)。その後、丸太は原木市場に出荷されます。市場では形状や品質に応じて丸太を仕分け、一定のロットごとに競りや入札を行って、製材・集成材・合板工場に販売します(図 2)。価値の高い丸太の場合は、1 本単位で販売されることもあります。ただし最近では、集成材工場や合板工場、大型の製材工場は、市場を通さず、森林組合や伐採業者から大量の丸太を直接買い入れることが多くなっています。

製材工場が丸太から製造した製材品は、製品市場や問屋に出荷されます(図 3)。そこから材木店が製材品を仕入れ、大工・工務店といった住宅建築業者に販売します。ただし、これは大工・工務店が自ら製材品の加工を行う場合の流れです。

最近はプレカット工場が市場や問屋、材木店から製材品を仕入れ、加工を施した上で(図 4)、建築業者に販売するケースが圧倒的に多くなっています。あるいは製品市場や問屋、材木店を通さずに、プレカット工場が製材工場から直接、製材品を仕入れるケースもあります。集成材や合板の場合も、製材品と同様の流れになります。

外材の場合は、商社や問屋が海外産地から丸太や製材品(集成材の原料になるものも含む)、集成材、合板を仕入れ、日本に輸送し、各加工セクターや流通セクターに販売します。
2. 木材の賢い調達方法
木材の流通には多くのプレーヤーが介在し、複雑な流れを形成しています。図 1 は、その代表的な流れにすぎません。実際のビジネスでは、さらに複雑な取引が展開されています。例えば、原木市場や製品市場が同業の市場から品物を仕入れたり、伐採業者から大型製材工場や合板工場に丸太が直接流れる場合でも、商流は商社が担っていたりするケースもあります。
こうした複雑な流れをシンプルにすれば、流通コストが削減され、木材が安価に入手できるのではないか。あるいは、コストが浮いた分を、森林資源保全のために森林所有者に還元できるのではないか。そう考える人もいるでしょう。実際に大量の丸太を消費する大型の製材工場や合板工場では、量の確保が最優先されるため、前述のように伐採業者から丸太を直接仕入れるケースが多くなっています。この場合、原木市場を経由する場合にかかる市場手数料や輸送費などのコストを削減できます。
しかし、流通に介在するプレーヤーの数を減らすことは、いいことばかりとも限りません。流通業者は、仕分け、ストック、金融といったさまざまな機能を担っています。単純に業者を中抜きするだけでは、結局、それらの機能を何かしらの方法で代替しなければならなくなり、そのコストがかかります。例えば、工務店が林業地の製材工場から、家 1 棟分の製材品を直接仕入れるとします。製材工場では普段、市場や問屋に卸しているので、まとまった数量を梱包して送っています。それに対し家 1 棟分の材料をそろえるとなると、柱が何本、タルキが何本などと細かい数量の注文に対応しなければならず、配送も小口になって時間も手間もかかります。当然、その分のコストが材料代に上乗せされます。このように、流通業者の仕分け機能(図 5)を利用する方が、結局はリーズナブルな価格で材料を仕入れられる場合もあります。

3. 違法伐採を食い止める各種認証制度と法律
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 木材の種類と用途
- 第2回 木材の特徴
- 第3回 木材の強度・耐熱性・耐久性
- 第4回 製材の方法と規格
- 第5回 木材の乾燥
- 第6回 木質建材の種類と特徴
- 第7回 木材の弱点を補う処理方法
- 第8回 木材の流通と環境問題