
前回は、木質材料(合板、LVL、集成材、CLT)を取り上げました。今回は、防腐処理、不燃処理、塗装、カビ対策など、木材の弱点を補う処理方法について解説します。現在は技術の進歩により、耐久性や耐火性を高めた木材の採用が、着々と広がっています。
第7回「木材の弱点を補う処理方法」を解説していきます。
1. 防腐木材
生物材料である木材には、シロアリなどによる虫害、微生物に分解される腐敗などの劣化があります。対策としては、第3回で解説したように、ヒノキやヒバといった耐久性の高い樹種を選ぶことが大切です。さらに、杭(くい)のように地面に直接埋め込まれる使い方、地面から近いところや常時湿気にさらされる場所での使用など、より高い耐久性が求められる場合には、専用の防腐薬剤を用い、耐久性を高める方法があります。このように薬剤処理された木材を防腐木材、あるいは防腐・防蟻(ぼうぎ)木材と呼びます。
1:防腐薬剤を木材に含ませる 3 つの方法
木材に防腐・防蟻薬剤を含ませる処理には、大きく 3 つの方法があります。木材の表面に薬剤を塗布する方法、薬剤を満たした水槽に木材を浸す方法、木材と薬剤をタンクに密閉して圧力をかけ、木材の内部に薬剤を浸透させる方法(図 1)です。

加圧処理によって耐久性を高めた木材については、JAS 規格や JIS 規格、あるいは日本住宅・木材技術センターの AQ 認証制度(JAS や JIS に位置付けられていない、新技術の木材製品を認証する制度)によって、使用する薬剤(表 1)や性能が定められています。

加圧処理する木材には、薬剤をさらに浸透しやすくするため、表面に引っかき傷のような細かい切り込みを施す場合があります。これをインサイジング処理と呼びます(図 2)。

2:防腐薬剤で処理された木材の用途
防腐・防蟻処理された木材は、かつては電柱や、鉄道の枕木に多く使われていました。現在は、いずれもコンクリートなどの代替品に代わられ、生産量が激減しています。ただし枕木については、本来の用途とは異なるガーデニング資材としての需要が増加しており、ガーデニング用に特化した製品が多く流通しています。
建築用材としては、土台とウッドデッキが主な用途となっています。土台は多くの場合、ベイツガが使われ、ベイツガ防腐土台はこの商品の代名詞となっています。このほか、屋外で使用される木製遊具や東屋(あずまや)、街路樹などを支える支柱、各種の杭材などに防腐・防蟻木材が使用されています。
2. サーモウッド
サーモウッドとは、薬剤を使わずに防腐効果を付与し、木材の耐久性を高める目的で、フィンランドで開発された木材製品です。製造方法は、200℃に達するような超高温で木材を熱処理します。高温の熱処理によって木材成分のセルロースとヘミセルロースが分解され、腐朽菌の餌になる栄養素が極端に減少したり、水酸基が分解されて水分を含みにくい性質になることにより耐久性が高まります。
サーモウッドは高温の熱処理によって茶褐色となり、独特の風合いが出ます(図 3)。国内では既製品を輸入するほか、製造ライセンスを取得した国内メーカーの製品も流通しています。防火処理を施すことによって、防耐火制限をクリアすることもできます。そのため、最近は公共施設などの外壁に地元産木材のサーモウッドが使用されるケースが増えています。

3. 防火処理
4. 塗装
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 木材の種類と用途
- 第2回 木材の特徴
- 第3回 木材の強度・耐熱性・耐久性
- 第4回 製材の方法と規格
- 第5回 木材の乾燥
- 第6回 木質建材の種類と特徴
- 第7回 木材の弱点を補う処理方法
- 第8回 木材の流通と環境問題