
前回は木材の特徴として、加工特性やエコマテリアルの側面に注目しました。今回は、木材の強度や断熱性、耐久性に関する特徴を解説します。いずれも材料として非常に重要な特性なので、より良い木材の利用につながる知識を身に付けましょう。
第3回「木材の強度・耐熱性・耐久性」を解説していきます。
第3回もくじ
1. 木材の強度
木材には、軽くて強いという特徴があります。見た目や触れた感じから、木材はコンクリートや鉄に比べて強度が劣ると思われるかもしれません。実際、材料は重くなるほど強度が高くなる傾向があるので、同じ大きさならコンクリートや鉄は木材よりも高い強度を有します。ところが同じ重さで比べると、木材の強度はコンクリートや鉄に勝ります。材料の強度(引張強度、圧縮強度、曲げ強度)を材料の密度や比重で割った値のことを、比強度といいます。比強度が大きいほど、軽いわりに強度の高い材料といえます。図 1 は、木材、コンクリート、鉄について、引張・圧縮・曲げの比強度を比べたものです。これを見ると一目瞭然で、いずれの強度においても、木材はコンクリートや鉄を大きく上回ります。

軽くて強いという木材の特徴は、材料として見た時に、とても優れた特性です。木材を建築物に使えば、重さを抑え、荷重の負担を小さくできます。図 2 は、鉄筋コンクリートの柱の上に、木造の屋根を載せて造った図書館の内観です。この屋根を仮に鉄骨で造ったとしたら、相当な重さになり、それを支える柱や基礎にもかなりの強度が必要となります。その点、木造なら重さを軽減できるので支持部材にかかる負担が減り、その分コストも抑えられます。

また第 1 回では、木材が輸送資材としても多用されていることを紹介しました。これもまさに、軽くて強い木材の特性が生かされた使い方です。物を運ぶ時には、重さが増すほど運搬エネルギーやコストが高くなるので、運搬物を支える資材は、できるだけ軽くしたいものです。しかし軽くても、素材がもろかったり強度が弱ければ、運搬物を支える役目を果たせません。その点、軽くて強い木材は、まさに打ってつけです。敷材や梱包に使えば、重さはそれほど増さずに、運搬物をしっかりと支えることができます。しかも表面が柔らかいので、運搬物を傷つける心配も少なくて済みます。物流という重要な経済活動において、木材は大きな役割を担っているのです。
2. 木材の断熱性と耐火性
木材は断熱性が高く、熱が伝わりにくい(熱伝導率が低い)性質があります。よく、木材は温かみがあるといわれます。それは見た目のイメージだけでなく、触った時にこちらの体温がそれほど奪われないので、実際に温かく感じます。柄の部分に木を使ったフライパンは、木材の断熱性能を生かした好例です。本体が熱くなっても、柄の木材が熱を遮断するので、素手でつかむことができます。
木材の断熱性が高いのは、木材に細胞壁で囲まれた無数の空伱があり、そこにたくさんの空気が含まれているためです(参考:第 2 回)。空気の粒子はまばらで、対流せずに留まっている状態では、熱を非常に伝えにくい性質があります。魚の輸送などによく使われる発泡スチロールは、構造体の中にたくさんの空気を含んでおり、まさに空気による断熱効果を生かしたものです。窓を二重サッシにし、空気層を作って戸外の温度を遮断するのも同じ原理です。なお、サッシ本体を木製にすれば、断熱性能はさらに高まります。気候が冷涼な中欧や北欧で木製サッシが盛んに使われているのには、こうした理由があります。
木材の断熱性の高さは、耐火性にもつながっています。もちろん木材は可燃物なので燃えますが、前述のように、熱が伝わるのが遅いという特徴があります。しかもある程度燃えると炭化し酸素を遮断するので、建造物の構造体の木材が、燃え落ちて崩れるまでには、相当な時間を要します。このような木材の性質を利用し、表面が燃えても構造耐力が確保されるように断面積の大きな木材を使い、建築物の防耐火構造を確保する方法があります。このような設計手法を、燃えしろ設計と呼びます。
・樹種による断熱性能の違い
木材の断熱性能は、空気を多く含む木ほど高くなります。その指標になるのが、比重(体積が同じ場合の質量)です。木の細胞の比重は、どの樹種も 1.5 なので、比重が小さい樹種ほど空伱の量が多く、たくさんの空気が含まれていることになります。つまり、軽い木ほど断熱性が高くなります。表 1 は、主な樹種の比重を示したものです。国産の樹種で最も軽いのはキリ(桐)で、昔から金庫の内装やタンスによく使われてきました。他の樹種に比べ、熱が伝わりにくい性質があるので、火災に遭っても燃え残り、中身が守られる確率が高いからです。

3. 木材の耐久性
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 木材の種類と用途
- 第2回 木材の特徴
- 第3回 木材の強度・耐熱性・耐久性
- 第4回 製材の方法と規格
- 第5回 木材の乾燥
- 第6回 木質建材の種類と特徴
- 第7回 木材の弱点を補う処理方法
- 第8回 木材の流通と環境問題