木材の特徴|木材の基礎知識2

木材の基礎知識
著者:林材ジャーナリスト 赤堀 楠雄

前回は、木材の種類や用途、日本国内の需給動向を紹介しました。木材は生物材料・自然素材であり、さまざまな優れた特性があります。今回は、その中でも加工特性と、エコマテリアルとしての素材特性を解説します。

第2回「木材の特徴」を解説していきます。

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1. 木材の特徴

木材は、とても加工しやすい材料です。金属やコンクリート、プラスチックを加工するためには、特別な機械や大掛かりな設備が必要になります。それに対して木材の場合、のこぎりやナイフ、のみといった刃物さえあれば、切る、削る、彫るなどの加工が簡単に施せます。まだのこぎりが発明されていなかった時代でも、木材は割裂性が高いので、繊維に沿って縦にくさびを打ち込めば、簡単に割ることができ、板材や角材を作ることができました。現在でも、そうした木材の割裂性の高さを利用した加工技術は受け継がれています。木に裂け目を入れて手で裂き、薄い板を作るヘギ板作りもその一つです(図 1)。ヘギ板とは、木材を1mm 以下~数 mm の薄さに裂いたもので、天井材や壁材などの建材、家具・調度品などに利用されています。

ヘギ板の作業工程
図1:ヘギ板の作業工程

また、木材は入手性にも優れています。もちろん立木を切り倒し、丸太にする作業は危険を伴い、簡単なものではありません。しかし原油や鉄鉱石を採掘し、プラスチックや鋼材に加工する工程に比べれば、はるかに容易です。森林地帯であれば、樹木は地上に豊富に生えているので、地下資源のように地面を深く掘り起こす必要もありません。前回、われわれの暮らしの中で、いかに木材が多用されているかを紹介しました。それは木材が身近な資源であり、加工もしやすいという特性を備えているからに他なりません。

2. 木材のめり込み特性を生かした接合方法

生物材料である木材は、無数の細胞によって構成され、細胞壁で囲まれた無数の空伱が存在しています。いわばハチの巣のように、中空のパイプがびっしりと寄せ集まったようなイメージです。この細胞組織の構成が、木材にさまざまな特性をもたらしています。その一つに、めり込み特性があります。木と木を接合する際に、私たちはくぎを使ったり、接合部を加工し、木と木を組ませて接いだりします。これらは、木材のめり込み特性を利用したものです。

まず、くぎを使う場合を考えてみましょう。もし木材にめり込み特性がなければ、くぎを打ち込んだ際に、くぎの体積分の広がりをどこかに逃がす必要が生じます。体積を逃せなかった場合には、その分だけ木材が膨れるか、あるいは広がりに耐えられずに割れてしまうはずです。もちろん、細くて小さな木材に太いくぎを打てば、木材は割れてしまいます。しかし、木材の体積や形状に適したサイズのくぎを打つのであれば、木材は割れることなく、くぎをがっちりと保持します。これは、木材の内部の空伱がくぎの圧力でひしゃげると同時に、復元しようとする力が働き、くぎをくわえ込むようになるためです。

次に、木と木を組む場合です。異なる方向(一般的には直角)の木材を接合する、伝統的な技法であるホゾ組みを例に考えてみましょう。ホゾ組みとは、差し込む側の木材の先端を凸状(ホゾ)に加工し(図 2)、差し込まれる側の木材にホゾが入る穴(ホゾ穴)を掘り、ホゾをホゾ穴に差し込んで木を接合する方法です。この場合、通常はホゾをホゾ穴に対してやや大きめに作って、ホゾ穴に差し込みます。そうすると、ホゾとホゾ穴の双方がひしゃげ、さらに木の復元力の作用によってがっちりと接合できます。

図 2 のホゾの形状は、短ホゾと呼ばれるものです。このほかに、はめ込む先の木を貫通させる場合に使用する長ホゾや、交差した材料を貫き通す場合に使用する、ホゾの太さが 2 段階になっている重ねホゾなどもあります。

ホゾを施した木材
図2:ホゾを施した木材

ホゾ組みでは多くの場合、ホゾを金づち(玄翁、げんのう)などでたたいてわずかにへこませる、木殺しが施されます。木殺ししたホゾをホゾ穴にはめ込み、あるいは木づちなどでたたき込むと、がっちりはまって抜けなくなります。逆に、ホゾをホゾ穴に対して少し小さめに作っておき、ホゾ穴に差し込んだ際にできる伱間に、伱間より大きめのくさびを打ち込んで接合するやり方もあります。これも同様に、木のめり込み特性を利用した工法です。

元の大きさなら入りそうもないところにはめ込むことができ、いったんはまると抜けなくなるというのは、他の材料にはない、木材の大きな特徴です。木材で建築物を建てたり、家具を製造する場合には、ホゾ組みの他にも、この特徴を利用したさまざまな接ぎの技法が使われます。中には接ぎ部分の加工に熟練の技術が必要となる、非常に複雑な接ぎ方もあります。大工や家具職人は、接合部に求められる強度や性能を考慮して、たくさんの接ぎ方の中から、最適なものを選んで施します。

図 3 は、伝統的な木造建築の現場で、複雑な加工を施したいくつもの木材を小型の掛矢(かけや、木づちのこと)でたたき、接合している場面です。木材を傷つけないために、当て木の上からたたいています。

木材の接合工程
図3:木材の接合工程

3. 木材は環境負荷の小さなエコマテリアル

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全8回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 木材の種類と用途
  • 第2回 木材の特徴
  • 第3回 木材の強度・耐熱性・耐久性
  • 第4回 製材の方法と規格
  • 第5回 木材の乾燥
  • 第6回 木質建材の種類と特徴
  • 第7回 木材の弱点を補う処理方法
  • 第8回 木材の流通と環境問題

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