Wi-Fiの規格|短距離無線通信(Wi-Fi)の基礎知識5

短距離無線通信(Wi-Fi)の基礎知識
著者:若井テクノロジオフィス代表 第一工業大学 元教授 若井 一顕

前回は、LANの仕組みとWi-Fiについて紹介しました。今回はWi-Fiの規格を取り上げます。また、IEEEなど、技術の標準化を行う組織も紹介します。

第5回「Wi-Fiの規格」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 規格と特徴

・IEEE802.11について
EEE(アイ・トリプル・イー:Institute of Electrical and ElectronicsEngineers)とは、アメリカに本部を置く電気・情報工学分野の学術研究団体です。IEEEには、さまざまな技術の標準化を行うSA(Standard Association)という組織があります。

IEEE 802はLMSC(LAN/MAN Standards Committee)とも呼ばれ、LAN/MAN(Local Area Network/Metropolitan Area Network)の標準化を行う組織です。802は、LMSCが設立された日付にちなんで付けられました。

また、IEEE 802.11は無線LANの標準化を行う作業部会(Wireless Lan Working Group)です。IEEE 802.11の中には、TG(Task Group)、SG(Study Group)、TIG(Topic Interest Group)、SC(Standing committee)が設けられています。図1にIEEE 802.11の位置付けを示します。

IEEE 802.11の位置付け
図1:IEEE 802.11の位置付け

実際に標準を作るのがTGです。表1に、現在活動しているTGを示します。

現在活動中のTG
表1:現在活動中のTG

通信には必ず通信の相手方がいます。さまざまなメーカーの機器が通信を行うには、標準化されていないとお互いの通信が成立しません。現在のインターネットをはじめとする通信は標準化によって成り立っています。

・Wi-Fi Alliance
Wi-Fiと、IEEE 802.11との違いは何でしょう。Wi-Fiは、無線LAN関連の業界団体Wi-Fi Alliance(WFA)の登録商標です。WFAはIEEE 802.11に基づく機器の相互接続の認証を行い、認証した機器のみWi-Fiと名乗ることを許可しています。IEEE 802.11とWi-Fiの関係は図2のように表せます。

IEEE 802.11とWi-Fiの関係
図2:IEEE 802.11とWi-Fiの関係

・Wi-Fiの通信速度と周波数帯
Wi-Fiは規格によって、最大通信速度と周波数帯が異なります(表2)。

最大通信速度と周波数帯
表2:最大通信速度と周波数帯

IEEE 802.11a~axまでの6つの規格の特徴を説明します。

・IEEE 802.11a
IEEE 802.11aは、2000年ごろから製品が出始めた5Gヘルツ帯の規格です。速度は、11bより速く製品価格が高めだったためか、それほど普及しませんでした。また、日本では屋外での利用ができません。

・IEEE 802.11b
IEEE 802.11bは、11aと同時期に策定された2.4Gヘルツ帯の規格です。当時はスマートフォンが存在しなかったので、PCやゲーム機など多くの製品で採用され、Wi-Fi普及のきっかけとなりました。

・IEEE 802.11g
IEEE 802.11gは、11bとの上位互換性を持った2.4Gヘルツ帯の規格です。11bよりは高速なため、Wi-Fiルータなど、速度を要求される製品を中心に利用されました。

・IEEE 802.11n
IEEE 802.11nは2.4Gヘルツ帯と、5Gヘルツ帯の両方に対応した規格です。理論上では、11bや11gなどに比べ、大幅に速度が向上しています。同じ11nでも製品により上限速度が異なることがある規格です。

・IEEE 802.11ac
IEEE 802.11acは、11nをさらに高速化した5Gヘルツ帯の現在主流の規格です。11nと同様、製品により上限速度が異なり、スマートフォンでは867Mbps止まりの製品が多いです。

・IEEE 802.11ax
IEEE 802.11axは11acをさらに高速化した次世代規格で、2.4Gヘルツ帯と、5Gヘルツ帯の両方に対応します。既に登場した製品では、現状の11acを大きく上回る速度を実現しています。

この表の他、IEEE 802.11adという規格があり、その周波数は60Gヘルツ帯を示します。周波数帯には、2.4Gヘルツ帯、5Gヘルツ帯、60Gヘルツ帯の3種類に分かれ、以下のような特徴があります。

60GHz帯:
・速度が速い
・電波の直進性が高いため、狭い範囲で高速通信したい場合に最適

5GHz帯:
・障害物に弱い
・電子レンジやBluetoothなどの電波干渉を受けない

2.4GHz帯:
・障害物に強い
・電子レンジやBluetoothなどの電波干渉を受けやすい
・屋内・屋外共に利用可能

Wi-Fiルータの中にもさまざまな規格があり、3つの周波数帯があるため、オフィスで使うPCなどと購入するWi-Fiルータの規格が対応しているか確認が必要です。現在ではIEEE 802.11ac(11ac)が主流となっているので、11ac(5GHz帯)規格に対応した業務用Wi-Fiルータなら、通信速度などの性能は十分でしょう。

2. 自宅やオフィス以外でWi-Fiを使う

・Wi-Fiでつながる施設
Wi-Fiは自宅やオフィス以外でも使えます。駅、空港、バス、航空機、カフェやコンビニなどには、各キャリアのユーザー向けのサービスや、誰でも使えるフリーのWi-Fiがあります(図3)。

Wi-Fiでつながる世界
図3:Wi-Fiでつながる世界

・テザリング(Tethering)
テザリングとは、牛馬をつなぐ鎖とか足かせの意味です。機能的には、モバイルデータ通信ができるスマートフォンを通して、直接インターネットに接続できないパソコンやタブレット端末などをインターネットに接続することです(図4)。

テザリング
図4:テザリング

筆者が初めてテザリングを使ったのは、使用していたモバイルWi-Fiルータ(WiMAX)のデータ使用量が契約使用限度量を超えてしまい、伝送速度が激減したときでした。焦りました。当日中に出版社へ原稿を送る必要があったのです。そこで思い出したのが、スマートフォンのテザリング機能です。スマートフォンの会社に電話をかけ、使い方を教わり、なんとか原稿を伝送することができました。これがテザリングとの出会いでした。

・テザリングの種類
テザリングには、Wi-Fiテザリング、Bluetoothテザリング、USBテザリングの3種類があります。表3に、各テザリングのメリット、デメリットをまとめました。

テザリングのメリットとデメリット
表3:テザリングのメリットとデメリット

以下に、各テザリングの特徴を紹介します。

・Wi-Fiテザリング
Wi-Fiテザリングは、スマートフォンの通信回線を無線LAN(Wi-Fi)で飛ばし、その無線LANをノートパソコンやゲーム機器がキャッチしてインターネットに接続する方法です。Wi-Fi対応の機器であれば、複数のパソコンやタブレット、ゲーム機、カメラ、プリンターなどに接続できるだけでなく、通信速度が速いのが特長です。Wi-Fiは、障害物がなく、条件がよい開けた場所では50~100mも届くほど電波の範囲が広いため、不正アクセス接続を防ぐためのセキュリティ対策が大切です。

・Bluetoothテザリング
Bluetoothは、Wi-Fiと同様に無線でインターネットに接続する方法です。Wi-Fiテザリングと異なる点として、Bluetoothテザリングは1対1の通信を目的として開発された無線接続方法であることが挙げられます。接続時にペアリングを必要とするため、Wi-Fiよりもセキュリティが高いといわれています。ただし、Bluetoothの有効範囲は約10mと狭く、通信速度も遅いため、通信容量が多いデータのやり取りには不向きです。

・USBテザリング
USBテザリングは、スマートフォンとインターネットにつなぎたい機器をUSBケーブル(有線)で接続する方法です。有線のため、通信速度が速く、安定していることや、セキュリティの高さが特長です。デメリットは、有線での接続なので多少不便なこと、USBケーブルが必須であることです。

3. 公衆無線LAN(Free Wi-Fi)とは

4. SSID(Service Set Identifier)とは

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 通信ネットワーク
  • 第2回 無線通信の仕組み
  • 第3回 LANの仕組み
  • 第4回 インターネットの仕組み
  • 第5回 Wi-Fiの規格
  • 第6回 Wi-Fiの接続と拡張

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