無線通信の仕組み|短距離無線通信(Wi-Fi)の基礎知識2

短距離無線通信(Wi-Fi)の基礎知識
著者:若井テクノロジオフィス代表 第一工業大学 元教授 若井 一顕

前回は、ネットワークの全体像を紹介しました。今回は、無線通信の仕組みと変遷、身近な通信方式を解説します。また、高速大容量通信が全盛の時代における高速通信についても取り上げます。

第2回「無線通信の仕組み」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 地上波アナログ放送からの変遷

2011年7月、地上波テレビ放送がアナログ放送からデジタル放送に本格移行されました。これにより、視聴者はデジタル放送による良質な画像や音声を享受することができるようになりました。一方で、ソーシャルメディアも著しく発展しています。情報発信の仕方だけでなく、受け手の視聴形態も変化しています。テレビやSNSは、もはや受信するだけではない時代に入りました。視聴者なら誰でも自ら発信でき、時間や場所に縛られることはありません。ソーシャルTVは、100%双方向といううたい文句を掲げています。

・スマートフォンの普及によるマルチメディア
地上波アナログ放送からの変遷に一役買っているのがスマートフォンの普及です。地上波アナログの跡地であるV-High帯は、地上アナログ放送の終了に伴い、未使用帯域となっていました。そこで総務省は、「携帯端末向けマルチメディア放送の実現に向けた制度整備に関する基本的方針」を2009年8月に公表し、無線局の免許や委託放送業務の認定などについての方針を示しました。そして、2012年4月には、地上アナログ終了後のVHF-High(周波数207.5~222MHz)を使った、スマートフォン向けの放送、モバキャスが開始されました。この周波数は電波の伝搬条件がよく、プラチナバンドとも呼ばれます。モバキャスは、ISDB-Tmm(Integrated Service Digital Broadcasting Terrestrial for mobile multimedia)方式を採用したことでも知られています。

マルチメディア発展には、無線LANと携帯電話の伝送速度の進化が大きく影響しています。図1は、無線LANと携帯電話における1Gbpsに至るまでの推移と伝送レートを表します。bps(bit per second)とは、1秒間に何bit(ビット)のデータを転送できるかを示したもので、1Gbpsの場合、1秒間に1ギガビットのデータを送ることができるということになります。無線LANにおいては、1997年に、無線LANの最初の規格IEEE 802.11が策定されて以降の推移です。IEEE 802.11bの最大伝送速度は11Mbpsであるのに対し、IEEE 802.11acの最大伝達速度は1Gbpsになっています。

一方、携帯電話においては、2000年頃の第3世代(3G)携帯電話W-CDMAは最大伝送速度が384kbpsであるのに対し、2014年第4世代(4G)携帯電話は1Gbpsです。第5世代(5G)については、次回以降説明します。

1Gbpsに至るまでの推移と伝送レート
図1:1Gbpsに至るまでの推移と伝送レート

・スマートフォンが保有する電波
高機能携帯電話として知られるスマートフォンが普及したきっかけは、2007年1月のiPhoneの発表といわれています。移動帯通信機器のトラフィックは、年々増加している状況にあり、多くの人が携帯電話からスマートフォンに変更しています。

では、電波を使うデバイスであるあの小さな装置の中に、どのくらいの周波数が使われているのでしょう。携帯電話として使われている周波数は、700MHz~2GHz、3.5~3.9GHzです。また、GPS機能は1.5GHz、無線LAN(WI-FI)は2.4GHz、5GHz、ワンセグ放送を受信しているのであれば470~710MHz、おサイフケータイでは13.56MHz、ブルートゥース(Bluetooth)には2.4GHzの周波数が使われています。まさに、スマホは電波の百貨店です。図2に、スマートフォンで使われている電波の種類を示します。

スマートフォンで使われている電波の種類
図2:スマートフォンで使われている電波の種類

2. 身近に使われている短距離無線通信

短距離無線通信のうち身近なブルートゥース、無線LAN、Wi-Fi、WiMAX についてそれぞれの特色を説明します。

・ブルートゥース(Bluetooth)
ブルートゥースとは、数百mの距離でデータ信号を送る超近距離の無線通信です。最近の携帯電話やスマホには無線LANとともにブルートゥース(Bluetooth)が搭載されています。表1にブルートゥースの伝送諸元を示します。

ブルートゥースの伝送諸元
表1:ブルートゥースの伝送諸元

ブルートゥースは、2.4~2.5GHzの広い周波数帯を1MHzごとに分けて79個のチャンネルを作り、使用するチャンネルを625μsecごとに切り替えて信号を送る周波数ホッピングという方式を用いています。上り信号と下り信号は同じ周波数を用いて、時間的に交互に切り替えて送るTDD(Time Division Duplex)方式です。ブルートゥースの伝送速度は通常1~3Mbpsなので、情報量は少なく、使用できるのは音声伝送やハンズフリーに限られます。なお、Bluetooth 3.0+EDRという方式の伝送速度は、最大24Mbpsとされています。主に、イヤホンやスピーカー、キーボードやマウスに応用されています(図3)。

ブルートゥースの応用例
図3:ブルートゥースの応用例

ところで、ブルートゥースという名称の由来を知っていますか? 10世紀ころ、デンマークにハラルドという王がいました。ノルウェーも治下にあり、その方法は武力ではなく、対話と協調によるものと伝えられています。この王は肌の浅黒い権力者(Blatand)と呼ばれ、これを現在の英語に置き換えるとBluetoothに当たるとか、王の歯が青かったのでBluetoothと呼ばれたなど諸説あるものの、こうした王の功績にちなみ、乱立していたコンピュータ業界とテレコム業界をつなぐ新しい技術はブルートゥースと命名されました。

・無線LAN
無線LANとは、LANケーブルを必要としない通信技術をいいます。LAN(Local Area Network)は、パソコンを用いて高速でデータ伝送するネットワークです。一般的にはイーサネット(Ethernet:LAN に採用されている通信規格)を張ってケーブルで使います。

近年ではケーブルの煩わしさを離れ、無線LANを使用するケースが増えてきています。人が大勢集まる場所では、公衆無線LANサービスも使われています。無線LANの使用周波数は2.4GHz帯(14チャンネル)、5GHz帯がメインで、約100mの範囲での無線通信が可能です。表2に代表的な無線LANの規格を示しました。近年のWi-Fi 5、Wi-Fi 6については、IEEE 802.11ac、axを含めてWi-Fiの規格の項で詳述します。

代表的な無線LANの規格
表2:代表的な無線LANの規格

無線LANを使用するには、パソコンなどに無線LANカードを入れてアクセスポイントと結んで通信を行います。通信を行うにはCSMA-CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance:搬送波感知多重アクセス/衝突回避方式)という手順を踏みます。手順は以下のとおりです。

1:電波を受信し、通信を使っている他の端末があるかを確認する
2:使っていなければ、アクセスポイントに制御信号RTSを送る
3:アクセスポイントは他の端末から信号のないことを確認して、送信許可の制御信号CTSを返送する
4:端末はCTS信号を受け取ってからデータを送信する
5:アクセスポイントは端末からデータを受信すると、受信確認信号ACKを返送する

・Wi-Fi
Wi-Fi(Wireless Fidelity:ワイファイ)は、無線LANを相互に接続できる規格の名称です。表3に代表的なWi-Fiのシステム諸元を示します。

Wi-Fiのシステム諸元
表3:Wi-Fiのシステム諸元

・WiMAX
WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)は、携帯電話の3GやLTEなどと同じ、無線通信技術規格の一種です。厳密には携帯電話の電波を3GPP(Third Generation Partnership Project)が標準化しているのに対し、WiMAX は無線LANの標準化を行っているIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)が規格化を行っているという違いがあります。

WiMAX(ワイマックス)は、2GHz~11GHz帯の電波を使ってデータ通信に特化したサービスです。最大伝送速度は下りが40Mbps、上りが15.4Mbpsで、帯域幅を倍の20MHzにすることで最大75Mbpsの高速伝送が実現できます。データの変調には64QAM、無線アクセスにはOFDMA、送受信アンテナを2本ずつにしたMIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)を採用しています。PHSでは伝送ブロックの数を上りと下りで同数としているのに対し、WiMAXでは上りと下りのブロック数の比を変えて非対象にしています。

3. 高速通信の要

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 通信ネットワーク
  • 第2回 無線通信の仕組み
  • 第3回 LANの仕組み
  • 第4回 インターネットの仕組み
  • 第5回 Wi-Fiの規格
  • 第6回 Wi-Fiの接続と拡張

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