すみ肉溶接の実技|溶接の基礎知識9

溶接の基礎知識
著者:兵庫職業能力開発促進センター 寺田 昌之

前回は、溶接の安全対策を取り上げました。今回は最終回です。使用頻度の高いすみ肉溶接を例に、被覆アーク溶接、マグ溶接、TIG 溶接を実際に進める際の手順やポイントを紹介します。

第9回「すみ肉溶接の実技」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 被覆アーク溶接によるすみ肉溶接

被覆アーク溶接による、すみ肉溶接について解説します。今回行う溶接寸法は、脚長7mm、ビード幅10mmです。(図1)。

すみ肉溶接の寸法
図1:すみ肉溶接の寸法

・被覆アーク溶接のポイント
被覆アーク溶接で大切なことは、溶接寸法に合わせた適切な溶接棒と溶接電流を選択することです。図1のすみ肉溶接寸法の場合、直径4.0mmの溶接棒を使用して、その溶接棒の最大使用溶接電流に設定します。溶接棒角度は進行方向に対して60~ 70°が適切です。溶接棒を母材に接触させ、アーク長をできるだけ短くし、脚長7mm、溶融池幅10mmとなるように溶接を行います(図2)。

溶融池
図2:溶融池

・被覆アーク溶接の注意点
溶接電流を上下させると、スラグ巻き込みなどの欠陥が生じる恐れがあります。適切な電流値を選定するには、訓練が必要です(図3)。

溶接電流の違いによるビード形状の変化
図3:溶接電流の違いによるビード形状の変化

2. マグ溶接によるすみ肉溶接

マグ溶接による、すみ肉溶接の手順を解説します。被覆アーク溶接と同じすみ肉寸法(脚長7mm、ビード幅10mm)を例に、説明します。

・マグ溶接の準備
今回の溶接は、溶接機本体のクレータのスイッチを無に切り替えて行います。クレータスイッチを無にすると、トーチスイッチを入れたときだけワイヤが送給され、アークが発生します。また、トーチスイッチを切るとアークが切れます。ワイヤは、一般的に直径1.2mm のソリッドワイヤを使用することが多いです。

・マグ溶接の作業手順
マグ溶接では、安定してアークを発生させることのできるアーク電圧値があります。この電圧値は溶接電流値によって異なるため、事前に算出する必要があります。

手順1:溶接機本体の電圧調整モード(一元モード・個別モード)を切り替えます。一元モードでは、溶接電流値に合わせた適切なアーク電圧値を溶接機が自動で設定してくれます。個別モードでは、アーク電圧設定は溶接作業者が行います。スイッチがない場合は、一元モードに設定されています。今回は、個別モードの進め方を解説します。
手順2:リモコンボックスの溶接電流とアーク電圧のつまみを、どちらも中心に合わせます。
手順3:ワイヤ突出し長さを約15mmに設定します。
手順4: アークを出しながら、溶接電流値を変えずにアーク電圧値を徐々に下げていきます。溶接電流に対してアーク電圧が下がりすぎると、溶接ワイヤが母材からはじかれるので、下限値として記録しておきます。はじかれる感触は、練習で実際に体験してください。
手順5:アークを出しながら、溶接電流値はそのままで、アーク電圧値を徐々に上げていきます。アーク電圧値を上げすぎると、溶接ワイヤの先端に大きな粒状の溶融金属が発生するので、この状態をよく観察してください。このときのアーク電圧値を上限値として記録しておきます。
手順6:手順4、5 で記録したアーク電圧の間で、アークが安定して発生する範囲を求めます。この作業で、ある溶接電流値において、アークが安定発生するアーク電圧値の範囲が分かります。
手順7:溶接電流値を変え、手順4~ 6を繰り返し、それぞれの溶接電流値に適したアーク電圧の範囲を求めます。

脚長7mm、ビード幅10mmのすみ肉溶接を行うには、平板の上で10mmのビード幅を作る溶接電流とアーク電圧を求めておく必要があります。溶接電流とアーク電圧が決まったら、すみ肉溶接を行います。
図4は、後進溶接と前進溶接における、ワイヤの狙い位置です。溶融池が、ルート(母材と溶着金属が交わる部分)から均等に広がるのを見ながら、溶接を行いましょう。

後進溶接(左)と前進溶接(右)におけるワイヤの狙い位置
図4:後進溶接(左)と前進溶接(右)におけるワイヤの狙い位置

・マグ溶接のポイント
図5は、すみ肉溶接のビード形状を示しています。ビード表面の形状が凸状(図5の左)になった場合は、アーク電圧を高くするか、溶接電流を低くすることで、ビード形状を平ら(図5の中)か凹状(図5の右)にします。

すみ肉溶接のビード形状(左:凸状、中:平ら、右:凹状)
図5:すみ肉溶接のビード形状(左:凸状、中:平ら、右:凹状)

3. TIG 溶接によるすみ肉溶接

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全9回で下記の内容を解説しています。

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