前回は、タングステンを電極に用いるTIG(Tungsten Inert Gas)溶接とステンレス鋼を紹介しました。今回は、アルミニウム合金にTIG 溶接を行う際のポイントや注意点を解説します。
第6回「アルミニウム合金のTIG溶接」を解説していきます。
1. アルミニウム合金の特徴
アルミニウム合金には、次のような長所があります。
・比強度(引張強度/ 密度)が高い : 軽くて強い製品を作ることができる。
・耐食性に優れる:特に海水に強いので、船舶などに使われる。
・極低温でも粘さがなくならない:低温で保存する容器に適している。
・成形が容易:押出プレスによって、複雑な断面形状でも作ることができる。
一方で、アルミニウム合金を溶接する場合には、7 つの問題が考えられます。
1:酸化皮膜の溶融温度が母材の溶融温度よりも高い
アルミニウム合金が腐食に強いのは、母材表面に酸化皮膜があるためです。しかし、皮膜の溶融温度は高く、約2,000℃です。母材の溶融温度は約600℃なので、通常のTIG 溶接では酸化物がビードの中に入り込み(巻き込み)、溶接が困難です(図1)。
2:加熱時に酸化しやすい
加熱時に酸化を起こすと、溶接の品質が低下してしまいます。ガスシールドアーク溶接を行うことで、酸化を防ぐことができます。
3:空気を巻き込みやすい
溶接作業中に空気が入り込むと、酸化物の黒粉が発生します(図2)。
4:溶け落ちしやすい
アルミニウム合金は融点が低く熱伝導率が高いので、局部加熱が困難です。また、溶け始めると溶融速度が速くなり、溶け落ちしやすくなります(図3)。
5:変形しやすい
熱膨張係数が大きいため、溶接すると大きく変形する場合があります。
6:溶接割れが生じやすい
熱を加えすぎると、溶接割れが生じやすくなります(図4)。
7:ブローホールが生じやすい
溶接母材などが汚れていると、溶接中にブローホール(溶接部に発生する気孔の一種)が生じやすくなります。
2. アルミニウム合金の種類
アルミニウム合金は、展伸材と鋳物材に大きく分類できます。展伸材とは、圧延、押出、引抜、鍛造などの塑性加工によって作られた板、管、棒、線などの製品を指します。ここでは、展伸材の分類に基づいて、アルミニウム合金の種類を説明します。
・合金記号
アルミニウム合金の分類には、合金記号を用います。合金記号は、アルファベットのA と、合金の系統(添加されている元素)、改良合金、合金の種類を表す数字を4桁付与して表します(図5)。例えば、合金記号A5083はAl-Mg 系のアルミニウム合金を表します。材質の形状、施した調整(質別)を示したい場合は、合金記号の末尾にアルファベットを付けて表します。例えば、A5083の板材で、焼なましを施した軟らかい材料は、A5083P-Oと書きます。
・合金の系統を示す数字
合金の系統を示す数字は、主要添加元素の種類を表しています。表1 に、それぞれの数字が示す主要添加元素をまとめました。
なお、アルミニウム合金の展伸材は、強度を高めるために、加工硬化を利用したものと熱処理を利用したものに分類できます(表2)。
・形状記号
形状記号は、合金の形状をアルファベットで表します。代表的なものに、P(板)、FD(型打鍛造品)、FH(自由鍛造品)、S(押出型材)、TE(押出管)、TD(引抜管)、TW(電設管)、H(箔)、TB(管導体)、PB(圧延導体)、SB(押出導体)、BE(押出棒)、BY(TIG 用溶接棒)、WY(MIG 用電極ワイヤ)などがあります。
・質別記号
質別記号は、合金に施した調整をアルファベットで表します。代表的なものは、F(製造のまま)、O(焼なまし)、H(加工硬化処理)、T(熱処理)などです。
3. アルミニウム合金のTIG 溶接
4. アルミニウム合金のTIG 溶接機
5. アルミニウム母材の酸化皮膜と油脂の除去
全9回で下記の内容を解説しています。