前回は、物理的、化学的汚水処理技術について解説しました。今回は、汚水処理技術の中の生物処理法を見ていきます。生物処理法は、1914年にイギリスで開発されたといわれます。100年に及ぶ歴史の中で、排水や汚水の処理に利用され、数々の改良法が発展してきました。現在利用されている生物処理法は、おそらく数十種類に及ぶでしょう。
第7回「生物処理法の種類」を解説していきます。
1. 生物処理法とは?
生物処理法とは、排水の中に含まれる汚濁物質を、自然界に存在する各種の微生物や細菌を利用して有機物を分解する自然の浄化機能を応用した処理方法です。代表的な生物処理法は、活性汚泥法です。活性汚泥は、原生生物・細菌を含む生物群のこと(スラッジ状で汚泥と呼ばれる)です。活性汚泥法で利用する微生物は細菌が主体で、真菌類(カビ)、藻類、原生動物などから構成される微生物生態系です。これらの微生物の活動や食物連鎖により、水を浄化します。つまり、生物処理法は化学薬品を扱うこととは違い、「生き物を飼う」ことです。好む環境を整えて餌を与えなければなりません。餌の多くは有機物であり、菌や微生物の栄養源になるもので、基質(Substrate)といいます。
有機性排水の処理の概要
図1に、大まかな生物処理の工程を示します。予備的処理または一次処理で、油や固形物を除去します。一次処理水を調整槽で水質・水量を均一化した後、生物処理によりBOD(生物化科学的酸素要求量:Biochemical Oxygen Demand)を除去します。さらにその後、高度処理(生物処理、物理化学的処理、両者併用されることもある)を行う場合もあります。
好気処理法と嫌気処理法
生物処理法は、有機物の分解・代謝の経路により分類すると、大きく2つのルートがあります。酸化分解による好気処理法と還元分解による嫌気処理法です。
・酸化分解による好気処理法:好気微生物の代謝反応では、有機炭素成分は二酸化炭素と水に 窒素成分は亜硝酸塩や硝酸塩に、硫黄成分は硫酸塩になります。
・還元分解による嫌気処理法:嫌気徴生物の代謝反応により、有機物はアミノ酸、有機酸、アルコールなどを経て、CO
2
、H
2
、H
2
S、 NH
3
、N
2
、CH
4
などの生成物になります。
一般に好気処理は、嫌気処理に比べてエネルギー生成効率が高く、そのため菌体生成量(余剰汚泥)も多いといえます。以後の解説では好気、嫌気、無酸素状態という用語を多用します。おのおのの意味は、次のようになります。特に嫌気状態と無酸素状態を明確に区別してください。
・好気状態(Oxic またはAerobic):生物が利用可能な遊離の酸素分子が存在する状態
・嫌気状態(Anaerobic):溶存酸素(DO)も、結合性、硝酸性の酸素(NO
X
‐
のO)も存在しない状態
・無酸素状態(Anoxic):溶存酸素がなく、亜硝酸NO
2
‐
や硝酸NO
3
‐
の形の酸素だけが存在する状態
2. 活性汚泥法
活性汚泥の原理、様々な種類の活性汚泥プロセス、運転条件、などについて解説します。
活性汚泥法の原理
有機物を含む汚水をばっ気(微生物群に必要な酸素を供給するためのエアバブリング操作)していると、微生物が増殖して浮遊性のフロック(活性汚泥)が形成されます。フロックは、多数の好気性徴生物や有機・無機性の浮遊物質などで構成されます。フロックは、排水中に含まれる溶解性有機物を吸着して酸化するとともに、凝集して沈降分離が容易となります。
活性汚泥法の処理プロセスの基本構成
伝統的プロセスを図2に示します。最初沈殿池、ばっ気槽(吸着・酸化)、最後沈殿池(汚泥を沈降分離する)、滅菌放流、汚泥返送、余剰汚泥の抜出から構成されています。
活性汚泥設備の操作条件に関わる因子と用語
表1に、操作因子、運転指標を示します。最適に保つことで効率よくCOD(化学的酸素要求量:Chemical Oxygen Demand)が除去できるようになります。ここでは用語の意味も付け加えています。
活性汚泥法の発展技術
活性汚泥法は、さまざまに発展してきました。分注法(ステップエアレーション法)、完全混合法、接触安定化法、オキシデーションデイッチ法、回分式活性汚泥法、酸素活性汚泥法、ポンプ循環式深層ばっ気法、膜分離活性汚泥法などの型式があります。その中の2つについて解説します。
・回分式活性汚泥法:単一の槽に反応槽と沈降層の機能を持たせ、排水の流入、反応、沈降、処理水の排出を1サイクルとして、繰り返し処理を行う方法です。連続式に比べ固液分離の安定性が高く、1サイクル中に嫌気・好気の条件を自由に設定できるなど、負荷条件の変化に幅広く対応できるため、中小規模工場排水向けに多く採用されています。
・膜分離活性汚泥法:沈殿槽の代わり(最終沈殿池は不要)に、膜により固液分離をする膜分離活性汚泥法が広く実用化されている。膜はMF膜やUF膜が多く用いられます。膜分離を採用すると、固液分離やバルキングなどによる汚泥流失に悩まされることがなくなります。また、汚泥濃度を8,000~12,000mg/Lが容易に制御できるようになりました。これは通常の活性汚泥法よりも、相当高いMLSS濃度で運転できるということです。また、膜自体もバルキング耐性は高いのが特長です。膜に生物を宿すわけではないので、生物膜法とは違うことに注意してください。ここは単に分離機能だけです。
活性汚泥の運転管理の重要事項
表2 に、活性汚泥の運転管理の重要事項を示します。
3. 生物膜法
4. 嫌気処理法
5. 生物的硝化脱窒素法
6. りんの除去
7. 窒素およびりんの同時除去
8. ラグーン処理法
9. 汚泥の脱水、焼却
全9回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 水質汚濁物質の発生源と排水ルート
- 第2回 水質汚濁指標と汚濁メカニズム
- 第3回 有害物質の種類と健康への影響
- 第4回 水質汚濁防止法とは?
- 第5回 排水処理プロセスの選び方
- 第6回 汚水処理技術の種類
- 第7回 生物処理法の種類
- 第8回 有害物質の処理技術
- 第9回 工場の排水処理の事例