前回は、水質汚濁物質の発生源と排水ルートについて、解説しました。今回は水質の汚濁状態を定量的に把握するための水質汚濁指標と、汚濁のメカニズムについて、説明します。
第2回「水質汚濁指標と汚濁メカニズム」を解説していきます。
1. 水質汚濁程度を表す水質指標
水質指標とは、水質の汚濁状態を定量的に把握するための指標のことをいいます。代表的な汚濁指標名と定義、意味づけ、測定法、留意事項などを示します。これらの指標の組み合わせにより、ある水域についての適切な水質を表示します。この指標の中の重要なものについて、環境基準や排出基準が設定されているわけです。なお、有害な重金属(カドミウム、水銀など)や有害な有機化合物(PCBやベンゼンなど)は、水質指標ではなく有害な化学物質そのものということです。詳しくは、連載第3回目で扱います。
有機性汚濁指標
有機性汚濁を表す指標としては、BOD(Biochemical Oxygen Demand)、COD(Chemical Oxygen Demand)、SS(Suspended Solids)などがよく知られています。
富栄養化指標
富栄養化とは、水中の栄養成分の量が徐々に増えていくことを意味します。その結果、水中の微生物(特に植物プランクトンが重要)の生態に大きく影響します。ちなみに、栄養成分の全く無い水は透明できれいですが、生物は生息できません。生命をはぐくむ水には、ある範囲の栄養成分が無くてはならないのです。「うわぁ、きれいな水」と思っても、それが直ちに良い環境というわけではありません。
富栄養化の原因となる物質指標には、窒素とりんがあります。三大栄養素の1つのカリウムは水中に豊富にあり、制限因子とはなりません。(参考:植物プランクトンの体組成は、元素の割合では有機体炭素が全体の38% 、窒素は8.6%、りんは0.65%程度。)
富栄養化の程度を表す指標は、植物プランクトンの量としてのクロロフィルa、透明度、pH(Potential Hydrogen)などの指標があります。
その他の水質障害指標
上記以外の指標には、富栄養化による障害指標(植物プランクトンが産生する生体毒性物質や異臭味物質:ジェオスミンやミクロシスチンなど)、汚染微生物指標(通常の塩素消毒によっては死滅しない菌:O157やクリプトスポリジウム)、水質指標生物と水質階級(特定の水質に生息する水生生物の存在量:ウズムシ類、サワガニ、ヒル類など)があります。”
2. 富栄養化の影響
富栄養化とは、水中の栄養成分の量が徐々に増えていくことを意味します。極貧栄養から富栄養、過栄養に達するまでの非常に長い時間(数万年から数百万年)の自然現象です。 しかし、近年の人間活動によって、特に湖沼やエスチャリー(Estuary:後で解説)で、栄養成分の水域への負荷が加速的に増大しました。栄養成分が過剰となり、植物プランクトンに代表される生物の異常増殖が起こっています。
富栄養化が進んだ湖沼水域での現象
植物プランクトンが異常増殖して、緑色、褐色となり、水面に広がる水の華と呼ばれる現象が起きます。赤褐色の場合は淡水赤潮と呼ばれています。湖面の美観を損ねたり、臭気を発したりします。浄水施設では殺菌のため塩素を添加します。ある種の有機物が反応して、発がん性の疑いがあるハロメタンが生成する場合もあります。
過度の富栄養化がもたらす被害の例
(a)赤潮や水の華の発生による水産業の被害:植物プランクトンにより、えらの詰まりが生じ魚類が死滅します。水生植物群落の減少により、産卵場と避難場所が減少し、魚類の生産性が低下します。
(b)湖沼水の異臭、微生物の分泌する悪臭による水道水への被害
(c)湖沼や内湾の環境の悪化:動物プランクトンの種類と現存量が減少します。夜間に植物プランクトンの光合成がないため酸素欠乏になり、動物プランクトンは、激減します。
(d)その動物プランクトンが死滅して水底に沈むと、腐って(有機物が酸化的分解をして)、水底の酸素を消費します。水底が酸素欠乏になり、底生生物の種類と現存量が減少します。
3. 水質汚濁メカニズム
4. 閉鎖性海域で出現する貧酸素水塊
5. 生態系モデルの開発
全9回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 水質汚濁物質の発生源と排水ルート
- 第2回 水質汚濁指標と汚濁メカニズム
- 第3回 有害物質の種類と健康への影響
- 第4回 水質汚濁防止法とは?
- 第5回 排水処理プロセスの選び方
- 第6回 汚水処理技術の種類
- 第7回 生物処理法の種類
- 第8回 有害物質の処理技術
- 第9回 工場の排水処理の事例