今回は、EU の廃棄物処理とリサイクルを見ていきましょう。EU の取り組みはドイツ、オランダを中心に日本より進んでいるともいわれます。EU の廃棄物に対する理念を解説し、特に取り組みが進んでいるドイツの事例を紹介します。EU の指導的立場にある欧州委員会のリサイクル理論は進んでいる面もあります。しかし、廃棄物のリサイクルついては、EU 各国の施策には遅れている面が多いことも理解してください。
第6回「EUの廃棄物処理とリサイクルの取り組み」を解説していきます。
1. EU と日本の外形的な違い
まず初めに、EU と日本の廃棄物制度やリサイクルの考え方の違いを見ておきましょう。ここでは、国情差や例外、別法には触れず、EU と日本の基本的な理念や法令の違いを解説します。EUと日本の大きな違いは、「ごみの分別と選別」であり、それが廃棄物リサイクルのポイントになります。
廃棄物の定義の違い
日本の廃棄物の処理および清掃に関する法律の冒頭に、廃棄物の定義が書かれています。その解釈は、占有者が自ら利用し、または他人に有償で売却することができないために不要になった物です。これに該当するか否かは、物の性状や排出の状況、通常の取り扱い形態、取り引き価値および占有者の意思などを総合的に加味して判断します。この廃棄物の定義を巡る、判定しにくい問題の例は次のようなものがあります。
・有価の原材料や製品と称した不適正処理の問題(不法投棄問題など)
・不要物に当たらないと判断したものが、生活環境保全上適正な管理が必要な場合(原材料や中古品の長期野ざらし放置、ごみ屋敷問題など)
EU では、廃棄物は EU の廃棄物カタログと照合して決まります。欧州の廃棄物は、有価・無価に関係なく、廃棄物カタログに掲げるあらゆる物質(物体)であって、所持者が廃棄し、廃棄を意図し、または所持者が廃棄しなければならないものと定義されています。廃棄しなければならないものとは、「廃棄し」という事実的要素、「廃棄を意図し」という主観的要素ではカバーしきれないものです。すなわち、廃棄しているわけでもなく、また、占有者も廃棄の意思がないようなものについて、環境保全上適正に取り扱うべきものをカバーするための規定となっています。原材料の野ざらし問題やごみ屋敷問題などはここに当てはまるでしょう。
廃棄物の分類の違い
EU で規定されている廃棄物の分類は、日本の分類と大きく違います。この違いが廃棄物処理制度の構築に影響しています。
日本の廃棄物の分類は、第 2 回で説明しました。一般廃棄物と産業廃棄物に分類されます。爆発性、毒性、感染性などの性状を持つものは、特別管理廃棄物に分類されます。同じ廃棄物質でも、一般と産業とは違う分類となり、扱いも異なります。
EU の廃棄物の分類は、欧州廃棄物カタログ(EWC:The EuropeanWaste Catalog)のいずれかのカテゴリに入るとされ、細かく分類されています。図 1 に、廃棄物の基本的分類を示します。EWC による分類では、有害か無害かにより監視の度合いが異なり、廃棄物が受ける規制も決まります。
一般廃棄物(無害廃棄物ともいえる)は、生産または消費の残余物で、リサイクル可能なものも含み、EWC では 849 種類に分類されています。有害廃棄物は、成分に応じて有害廃棄物リスト(HML:The HazardousWaste List)で 404 種類に分類されています。日本の分類との違いは、EU では、家庭ごみも産業ごみも、まず「有害」か「無害」かにより分け、次に「処分する」か「利用する可能性がある」かで分けられるということです。
次に、上記のような廃棄物の分類に対し、規制はどう働くのか見てみましょう。無害な廃棄物でリサイクルできるものは監視強度が最も低く、自由に EU 全域を移動できます。しかしながら、無害でも処分が必要な廃棄物や有害廃棄物の場合には監視が厳しくなり、移動が不自由になり、処理に手間やコストがかかります。つまり、社会全体の廃棄物が、監視の高い方(有害・処分)から監視の低い方(無害・再利用)へ向かうように制度が設定されているように見えます。
ドイツの廃棄物の分類を見てみましょう。基本は EU の分類に従います。しかし、運営上の利便性から図 2 のようになっています。廃棄物の出所による分類(日本とやや類似性がある)があり、次に有害、無害の分類に入ります。最終的に、リサイクルと処分の種類によって分類されます。処分は、リサイクルが不可能またはリサイクルより焼却や埋め立てをする方が環境適合的であり、リサイクルでは過大な経済的負担が発生する廃棄物の場合に適用します。
家庭ごみの排出時の分別の違い
家庭ごみの排出時の分別方法は、EU 各国で違います。ドイツでも分別排出のやり方が統一されているわけではありません。ここでは、ドイツの家庭でよく見るゴミ箱 2 つの典型例を引用します。容器包装ごみと非容器包装ごみに 2 分別排出されています。
非容器包装ごみは、グレーのゴミ箱に入れられます。処分(焼却、埋め立て)される廃棄物で、自治体が収集・処理を行い、リサイクルの義務はありません。容器包装ごみは、イエローのゴミ箱に入れられます。DSD(Duales System Deutschland:ドイツの包装廃棄物回収・再生システム管理運営会社)が収集してリサイクルしています。包装容器ごみは、EPR(Extended Producer Responsibility)と呼ばれる生産者責任に基づいてリサイクルが義務付けられています。つまり、容器包装ごみに対しては、常にリサイクル意識が働いています。しかし、2020 年から、改正廃棄物枠組み指令により、2 つのゴミ箱はリサイクル義務の選択が変更されます。つまりドイツでは、「容器包装ごみ」と「非容器包装ごみ」という区分から、「リサイクルできるごみ」と「リサイクルできないごみ(生ごみを中心としたごみ)」の区分になっていくと予定されています。
日本の家庭排出ごみと比較してみましょう。日本では発生源分別方式を採用している場合が多く、ヨーロッパでは、ミックス状態での収集と機械選別方式を採用しています。機械選別方式を採用している理由は、最も優れた経済効率と高いリサイクル率を実現できると EU では判断されているからです。別の言い方をすれば、実際のリサイクル過程を知らない一般市民が中途半端な判断で分別するより、知識を持った業者が大量廃棄物をまとめて収集し、同じ視点と技術で分別することが合理的だと EU 委員会は考えているということです。 ここは、日本と大きな意識の差があるといえるでしょう。
ごみの収集、分別、選択の違い
EU の廃棄物処理の基本方針は、汚染者負担の原則および分担責任の原則に従い、全ての経済主体と消費者が、廃棄物の排出抑制や収集分別、リサイクル、処分を分担することです。ここまでは、日本と同じです。EU では、この中で分別が重要な過程だという認識があります。分別および選択(ソーティング)がきっちりできれば、リサイクルは容易です。ソーティングセンターが循環型社会の心臓部で、重要な機能を持つ施設ということになります。
EU の廃棄物の収集と分別の役割を見ると、各国の政治・行政制度の違いにより、ばらばらです。ここでは、家庭ごみ(生ごみを除く、包装容器品が多い)について、EU とドイツの役割分担を以下にまとめます。
産業廃棄物処理の事業者責任の違い
基本は排出者責任および拡大生産者責任です。あまり大きな違いはありません。ドイツでは、処分の自己責任原則に基づき、廃棄物の排出者や所有者は廃棄物を自らリサイクル、処分することを義務付けています。リサイクルや処分を民間処理会社などの第三者へ委託することはできます。しかし、責任は廃棄物の排出者や所有者に残ります。また、製品の製造者や販売者に対しては、リサイクルしやすい製品の開発、製品に含まれる有害物質の表示、特定の廃棄物について処理やリサイクルの責任を負う拡大生産者責任を規定しています。
廃棄物への 2 つの規制の違い
1 つ目は、埋め立ての規制です。EU の目標は次のようになっています。1995 年を基準年として、有機廃棄物に関しては、廃棄物の埋め立てを2006 年までは 25%減、2009 年までに 50% 減、2016 年までに 65%減にするという目標を出しています。ヨーロッパでは埋め立て処分ができなくなる方向です。例えばドイツでは、前処理(焼却やバイオ処理など)をしていない有機廃棄物は、一切、埋め立て処分ができない状況です。そして、この有機廃棄物にはプラスチックも含まれます。日本には、埋め立ての直接的規制はありません。
2 つ目は、自治体が取り扱う家庭系廃棄物に対し、リサイクルの強制的な目標値が規制として導入されたことです(表 3 参照)。家庭ごみの処理に関して、強制的なリサイクルの目標値が設けられたのは、世界で初めてではないでしょうか。日本では一般廃棄物のリサイクルに関する国の望ましい目標値はあるものの、強制的な目標値はありません。
リサイクル制度の違いや傾向
日本のリサイクル制度は、カテゴリに特化した体系になっています。例えば、自動車リサイクル法は自動車だけを対象としたリサイクル制度として運用する、家電ならば家電のみを対象とします。そのリサイクルプロセス内では、特定の廃棄物品目に限定され排他的に管理していきます。
EU にも自動車では ELV 指令、家電では WEEE 指令など日本の各リサイクル制度に対応する制度があります。しかし、総合的な廃棄物制度の体系を構成する要素として機能しており、ヨーロッパの制度はそれほど品目間の垣根を明確に設けていません。廃棄物制度が調和するように、包括的な廃棄物・リサイクル制度として運用されることを優先しているようです。
このような状況では、リサイクル可能か不可能かで区分することにより起こりうる現象が想定されます。例えば、「容器包装ごみ」などは他のごみと混在し、その区分が不明確になっていくでしょう。EPR という考えに基づいたリサイクルシステムの区切りが不明確になってきます。これまで容器包装、自動車、家電などの分野ごとに設定されていたリサイクルシステムが統合されより包括的・総合的なリサイクルシステムへと移る可能性も出てきています。
つまり、EU はより包括的・総合的なリサイクルの方向に流れていく傾向があるといえるのでしょう。この方向は、特定の廃棄物品目(車や家電など)を区分けして処理しているより効率がよくなる可能性が高いことになるかもしれません。また、ヨーロッパのリサイクルが進んでいるという部分があるとすれば、リサイクルを促進するような背景や体制をより強く作り上げていることではないでしょうか。欧州では、埋め立て指令がリサイクルを促進する雰囲気をより強く作り出しています。そのため、ドイツなどはリサイクルが進んでいると、多くの人が言うようです。
2. EU の廃棄物政策
EU の廃棄物に関わる法令・制度と政策を見ていきましょう。EU が制定する法 は、規 則(Regulation)、指 令(Directive)、決 定(Decision)、勧告 (Recommendation)の 4 種類に大別されます。環境立法のほとんどが指令になります。指令はそのまま加盟国に適用されず、加盟国が一定期間内にその内容を国内法化することが義務付けられており、その方法は各国に任されます。規則と決定は、全ての加盟国または特定の対象者に直接適用され、拘束力があります。勧告は拘束力を持ちません。
現在、廃棄物に関わる有効な指令は次のとおりです。埋め立て指令(1999 年)、廃自動車指令(2000 年)、廃棄物焼却指令(2000 年)、電気電子機器に含まれる特定有害物質使用制限指令(2002 年)、廃電気電子機器指令(2002 年)、エネルギー税指令(2003 年)、包装廃棄物指令(2004 年)、廃電池指令(2006 年)、廃棄物指令(2008 年)、再生可能エネルギー指令(2009 年)。このうち、廃棄物処理の施策に大きな影響を与えている 3 つの指令を解説します。
埋め立て指令
埋め立て指令では、1995 年の有機廃棄物の発生量に対して、埋め立て処理される有機廃棄物を 2006 年までは 25%減、2009 年までに 50% 減、2016 年までに 65%減にするという厳しい目標が設定されています。つまり、廃棄物処分の出口を強く絞っていこうということです。理由として、有機廃棄物は、地方自治体が処理する廃棄物の 3 分の 1 を占め、環境に影響を及ぼす可能性があるからです。埋め立て処分場で発生したメタンは温室効果ガスとしては CO2 の 23 倍の強さを持ち、地球温暖化に大きな影響を及ぼします。一方で、有機廃棄物は再生可能エネルギー源やリサイクル資源としての可能性を秘めているという事情があります。
埋め立て処分ができる条件は原則として、中間処理された廃棄物だけです。液状廃棄物や爆発性・腐食性・酸化性・引火性のある廃棄物、感染性医療廃棄物、廃タイヤの直接埋め立ては禁止されており、中間処理が必要です。中間処理後の残さは有害性試験の判定により、非有害廃棄物埋め立て地、あるいは有害廃棄物埋め立て地で処分されます。ただし、技術的に性分が難しい安定廃棄物は埋め立て可能です。また、中間処理をしても廃棄物の量や人体・環境への有害性が軽減されない廃棄物は埋め立てできません。
廃棄物指令
廃棄物指令では、廃棄物管理において適用されるべき優先順位、目標の設定、用語の定義、バイオ廃棄物の分別収集・処理の基本方針などを打ち出しています。廃棄物指令の主な内容は、次のとおりです。
改正廃棄物枠組み指令とは、自治体が取り扱う廃棄物(家庭ごみ:日本では一般廃棄物)について強制的なリサイクルの目標値が導入されたものです。
再生可能エネルギー指令
再生可能エネルギー指令とは、以前からあった再生可能電力指令(2001 年)とバイオ燃料指令(2003 年)に替わる指令で、輸送用 エネルギーのうちバイオ燃料の占める比率を 2020 年に 10% まで引き上げることになりました。また、2020 年までの目標として、EU 全体のエネルギー消費の 20%を再生可能エネルギーとする目標が設定されました。
用語の定義
・バイオマス:産業および家庭からの廃棄物のうちの生物分解可能な
部分だけでなく、農業(野菜、家畜を含む)、森林、漁業・養殖を含む、関連産業からの生物由来の製品・廃棄物・残さのうち、生物分解可能な部分
・再生可能エネルギー:再生可能資源からのエネルギーとは、再生可能な非化石燃料からのエネルギー(風力、太陽、大気熱、地熱、水熱、海洋エネルギー、水力、バイオマス、埋め立て地ガス、下水汚泥処理プラントガス、バイオガスからのエネルギー)
バイオ廃棄物(主として生ごみ)の処理の関わる指令
都市ごみ MSW(Municipal Solid Waste)の重量で 70%、エネルギー量の 50% を占めている生物分解性の廃棄物(バイオ廃棄物)について、廃棄物指令と埋め立て指令の内容を、ここではまとめます。バイオ廃棄物の定義は、庭や公園からの生物分解可能な廃棄物、家庭やレストラン・食品・台所・食品配達業者・小売店舗からの廃棄物、食品加工工場からの同等の廃棄物を指すとされています。ただし、森林、農業、畜産、下水汚泥や布、紙、製材などの生物分解性廃棄物は含まれません。
バイオ廃棄物は分別収集、または MBT(機械的・生物的処理)によって選別され、メタン発酵やコンポスト化などの生物的処理が行われる可能性があります。また、そのように有効利用できず、埋め立てに回さざるを得ない部分もあります。これらの処理について EU の指令は 2 つあります。1 つ目は、廃棄物指令です。バイオ廃棄物の定義およびバイオ廃棄物を含む、家庭廃棄物の新しいリサイクル目標、コンポストの利用規定を定めています。コンポストの利用規定には、コンポストの使用と品質に関する基準やバイオ廃棄物処理とバイオガス製造、コンポスト使用の一部を規定するルール、 有機農業規則でコンポスト使用の条件を提示、土壌改良剤と育苗用培地に対するエコラベル、土壌保護に対する戦略やせた土壌への有機物供給にはコンポストの使用などがあります。
2 つ目は、埋め立て指令です。バイオ廃棄物の埋め立てからの転換を要求するものです。1995 年のバイオ廃棄物発生量に対して、埋め立て処理されるバイオ廃棄物量を 2006 年までに 75%、2009 年までに50%、2016 年までに 35% とするというものです。
3. EU における廃棄物処理・リサイクルの現況
4. 欧州の資源効率性をめぐるロードマップ
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 廃棄物の発生とリサイクルの現状
- 第2回 廃棄物処理法とは?
- 第3回 廃棄物処理の注意点
- 第4回 循環型社会形成のための市民・企業・行政の取り組み
- 第5回 プラスチックのリサイクル
- 第6回 EUの廃棄物処理とリサイクルの取り組み