前回は、廃棄物処理法について説明をしました。今回は産業廃棄物処理の注意点を解説します。産業廃棄物の種類によって、委託できる業者が違ってきます。
第3回「廃棄物処理の注意点」を解説していきます。
第3回もくじ
1. 廃棄物処理の委託と受託の注意点
廃棄物の委託者とは
産業廃棄物処理法では、産業廃棄物は原則として、廃棄物の所有者が自ら処理を行わなければならないとされています。現実的には、処理の基準を守り、適切に処理するのは困難です。そのため、所有者は処理を他社に委託します。しかし、委託手続きをする委託者は誰になるのでしょうか? 例えば、従業員が個人で使用していたスマホを廃棄する場合、処理委託を資源リサイクルに協力しようと会社がスマホを集めて行うと、会社は無許可で廃棄物を収集したとして違法性を問われます。この委託者問題を解決するには、所有者は誰かという視点で考えると良いでしょう。例を 4 つ挙げます。
1 つ目は、オフィスで従業員が外食のお弁当を買って食事をし、弁当の容器を廃棄する場合です。その弁当の容器は会社のものでしょうか、従業員のものでしょうか。このような場合、従業員が使用した弁当の容器であっても、事業に不可欠的に付随したものと考えられる時は、会社の廃棄物として処理することができます。
2 つ目は、自動販売機で購入した飲料の空きペットボトルや空き缶を、自動販売機のそばの回収ボックスに捨てる場合です。この場合、排出者として、飲んだ人、自動販売機を設置した飲料会社、自動販売機の設置を認めた会社の三者が考えられます。この場合は、回収ボックスを設置した会社に責任があると考えます。飲料会社が回収ボックスを設置した場合、飲料会社が空きペットボトルや空き缶の処理責任者(排出者)になります。
3 つ目は、A 社が会社設備の整備や植栽の伐採を外部の B 社に委託した場合です。整備や伐採の業務から出る廃油や枝は、A 社の廃棄物となります。廃油や枝の元の所有者は、整備会社 B ではなく、委託したA 社だからです。A 会社がそれらの廃棄物を許可業者に委託しなかったり、設備や伐採の業務を受託した B 社が、知事の許可を受けずに処分することは違法となります。
4 つ目は、旧設備のリプレースで旧設備を設備会社に引き取ってもらう場合です。その取り引き行為が下取りと認められる時は、設備会社が排出者になります。
廃棄物の受託者とは
廃棄物の処理を他社に委託するには、廃棄物が区分される品目の許可を持った業者(受託者)を選びます。この場合、一般廃棄物と産業廃棄物では排出者から見た委託先が違います。一般廃棄物は、市町村の収集に出す場合と、許可業者に委託する場合の 2 つの方法があります。産業廃棄物は、知事から許可を受けた業者に委託します。産業廃棄物を扱う許可は、例えば、産業廃棄物の金属くずの処分の許可というように、以下の 3 つの区分があります。(2. 産業廃棄物に関わる許可も参照)
・一般廃棄物、産業廃棄物、特別管理産業廃棄物の区分
・産業廃棄物、特別管理産業廃棄物の品目の区分
・処理の内容の区分(収集運搬、積み替え保管、処分の区分)
そのため、委託する廃棄物の品目と内容に適合する許可を持つ業者に、委託する必要があります。委託する廃棄物と適合する許可を持たない業者には委託できません。ある許可業者が金属くずの処分の許可を持っていても、金属くずの収集運搬(この場合、委託の内容が違います)や廃プラスチックの処分(この場合、委託する品目が違います)は、委託できません。廃棄物の区分を正しく認識しないと、適正な処理委託ができないということです。表 1 に、廃棄物処理を委託する場合の委託先を示します。
許可取得処理業者は、環境省のホームページで検索できます。また、通常の許可基準よりも厳しい基準に適合した優良な産廃処理業者を、都道府県や政令市が審査して認定する優良産廃処理業者認定制度もあります。また、注意点として、廃棄物の素材(第 2 回参照)によって必要な許可が違うので、処理委託をできる業者が異なります。机を例として 3 つのケースを紹介します。
・素材がプラスチックと金属の場合:委託先は、産業廃棄物(廃プラスチックと金属くず)の許可を持っている業者
・素材が木と金属の場合:木工所から排出される際は、産業廃棄物(木くずと金属くず)の許可を持っている業者。一般のオフィスから排出される際は、一般廃棄物と産業廃棄物(金属くず)の許可保有業者。木くずには業種指定があるため、指定業種から出る廃棄物のみが産業廃棄物になり、それ以外は一般廃棄物になるので処理するのに必要な許可が違います。また、木工所でも、生産を行わない事務部門が別に立地している場合、一般のオフィスと同じ扱いになります。排出される木くずは、一般廃棄物になるので産業廃棄物ではなく、一般廃棄物の許可が必要です。
・金属くずに微量の木部が付着している場合:木部が付着とみなされる
場合は、産業廃棄物(金属くず)の許可保有業者。付着とみなされない場合は、木と金属の机と同様となります。(付着とは、本体に比べて無視できるくらい微量に混在している場合を指します。)
産業廃棄物委託契約の締結
ここでは、産業廃棄物委託契約についての注意点を 4 つ見ていきます。
1 つ目は、事前に書面で契約することです。委託先が決まったら、実際の委託に先立って委託契約書を締結しなければなりません。事後の契約や民法で認められている口頭での契約は、産業廃棄物の委託契約では違法となります。
2 つ目は、排出者が直接受託業者と契約しなければならないことです。A 社が、産業廃棄物の収集運搬を B 社に、処分を C 社に委託する場合を考えてみます。排出者である A 社は、それぞれの業者 BC 社と直接委託契約を結ばなければなりません。例えば、A 社が B 社に収集運搬と処分を一括して委託し、B 社が C 社に処分を委託するのは、違法になります。排出者に最終処分までの責任があるので、直接委託をしなければなりません。
3 つ目は、法に記載すべき内容が決められているので、それらを網羅して記載しなければならないことです。産業廃棄物の処理委託契約書に記載すべきと決められているのは、排出する廃棄物の種類や量や取り扱いの注意事項などです。なお、決められた書式はありません。
4つ目は、契約書に必要な書面を添付することが法で決められていることです。必要な書面とは、例えば委託先の許可証などです。
一般廃棄物については、契約に関する規定はありません。しかし、許可業者に委託する場合は、産業廃棄物に準じた契約をするのが一般的でしょう。市町村に出す場合は、市町村のルールに従い、契約は不要です。
産業廃棄物管理票の交付
産業廃棄物処理を委託した事業者は、最終処分まで適正に行われるように管理する義務があります。そのため、委託契約後、産業廃棄物を実際に排出するときに、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を作成して、産業廃棄物と一緒に委託業者に渡し、処理状況を確認します。マニフェスト交付の 6 原則を示します。なお、マニフェストは法令で様式が決まっており、全国産業廃棄物連合会から入手することができます。
・種類ごとの原則:種類が異なれば、分けて交付する
・運搬先ごとの原則:運搬先が異なるときは、2 つに分けて交付する
・確認の原則:現物と記載に違いがないことを確認して交付する
・引き渡しごとの原則:廃棄物の引き渡しと同時に交付する
・車両ごとの原則:2 台の車両で運搬するには、それぞれに交付する
・同時移動の原則:マニフェストは廃棄物と一緒に移動する
図 1 に、産業廃棄物の動きと、マニフェストの動きを示します。交付されたマニフェストは、当該産業廃棄物と一緒に移動します。受託した業者が処理状況が処理状況を記録し、排出者に受託業務の終了報告をすることになります。
1.排出者は、産業廃棄物を運搬受託者に引き渡す場合、マニフェストに何をだれに委託するのかなどを書いて、受託者に交付しなければなりません。
2.運搬受託者は、産業廃棄物を処分受託者に引き渡す場合、マニフェストも一緒に渡さなければなりません。
3.運搬受託者は、収集運搬が終了したことをマニフェストに書き、写しを排出者に送らなければなりません。
4.処分受託者は、処分が終了したことをマニフェストに書き、その写しを排出者と運搬受託者に送らなければなりません。
5.処分受託者は、廃棄物が最終的に埋め立て、または再生(最終処分)が終了した場合は、最終処分が終了したことをマニフェストに書き、その写しを排出者に送らなければなりません。(処分受託者が中間処理により発生した 2 次廃棄物の最終処分を最終処分業者に委託した場合は、その業者から最終処分終了の報告が来たとき)
このように排出者には、委託先から終了報告(3、4、5)が送られてくることになります。排出者は、これらの返送されてくる報告を見ながら次に述べるように、委託した廃棄物が適正に処理されたかどうか、管理しなければなりません。
このように廃棄物の処理を委託するには、廃棄物の品目に応じて業者を適切に選び、契約し、実際に廃棄物を出す時に、品目ごとにマニフェストを交付しなければなりません。委託に際しての注意点を 4 つ挙げます。
1 つ目は、廃棄物を事前に適切に分別することが必要になってくることです。品目ごとにマニフェストを交付しなければならないからです。
2 つ目は、事業所移転で雑多な不要物が発生する場合など、1 枚のマニフェストで済ませられず、種類に応じて処理(業者を選び、契約し、マニフェストを交付)する必要があることです。
3 つ目は、産業廃棄物の委託契約とマニフェストに関する法規定には、対象となる廃棄物の量に関する規定がないことです。したがって、例えばレジ袋 1 枚、くぎ 1 本でも、産業廃棄物の廃プラスチック、金属くずなので、これらの処理を委託する場合には契約書を交わし、それぞれマニフェストを交付しなければなりません。
4 つ目は、将来のトラブルに備え、委託契約書やマニフェストには 5 年の保存義務があることです。
管理票を使った適正処理の確認
交付されたマニフェストは、図 1 のように産業廃棄物とともに移動します。排出者は、戻ってきたマニフェストの記載事項を確かめます。委託した処理会社において、法で決められた期日(通常 90 日、最終処分は160 日)以内に、適正に処理がされたかどうかを確認します。適正に処理できなくなった場合、受託者は、排出者にその旨を通知する義務があります。マニフェストが法定期日までに戻ってこなかったり、適正に処理されていない場合、排出者は、状況を調査、適切な処置をし、知事に報告する必要があります。排出者に、最終処分までを適正に行う責任があるためです。
2. 廃棄物処理に関わる許可
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 廃棄物の発生とリサイクルの現状
- 第2回 廃棄物処理法とは?
- 第3回 廃棄物処理の注意点
- 第4回 循環型社会形成のための市民・企業・行政の取り組み
- 第5回 プラスチックのリサイクル
- 第6回 EUの廃棄物処理とリサイクルの取り組み