真空の測定方法|真空の基礎知識4

真空の基礎知識

著者:大阪市立大学大学院 工学研究科 准教授 福田 常男

前回は、高真空・超高真空領域の特徴と真空ポンプについて説明しました。今回は真空容器の中の圧力計測の解説をします。容器を真空ポンプで排気しても、どの程度のガスが残っているのか分かりません。そこで、真空容器内の圧力計測が必要になります。真空の圧力を測る計器を真空計といいます。真空計には、機械現象に基づいて圧力を測定する真空計や、熱伝導などの輸送現象を利用する真空計、電離現象を利用する真空計などがあります。

第4回「真空の測定方法」を解説していきます。

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1. ガスの機械現象に基づく真空計

真空計とは、希薄気体の圧力を測る装置をいい、真空ゲージと呼ばれることもあります。一般的な圧力計は、大気圧を基準として、大気圧からの圧力差を表示します。これは、ゲージ圧と呼ばれ、大気圧以上を正圧、以下は負圧と呼びます(図1)。一方、真空工学で扱う圧力計は、ガスが全くない状態をゼロとして圧力を表示します。これは、絶対圧と呼ばれます。真空計は、大気圧以下の絶対圧を表示します。

絶対圧とゲージ圧
図1:絶対圧とゲージ圧

第1回で説明したように、圧力とは、面積あたりの力のことで、力を測定すれば真空容器内の圧力が分かります。しかし、低い圧力では力の変化が小さくなり、力の測定から圧力を求めるには限界があります。そこで、力の測定以外に、ガスの熱伝導や粘性を測定し圧力に換算する真空計や、ガスを電離、つまりイオン化してイオンを電流として測定し、圧力に換算する真空計が必要になります。表1は、主な真空計と使用圧力範囲です。真空計には、ガスの機械現象に基づく真空計、ガスの輸送現象を利用した真空計、ガスの電離を利用した真空計の3つに分類されます。

主な真空計と使用圧力範囲
表1:主な真空計と使用圧力範囲

ガスの機械現象に基づく真空計、つまり圧力を力として直接測定する真空計には、ブルドン管真空計、液柱差真空計、隔膜真空計があります。この3つについて紹介します。

ブルドン管真空計は最も簡単な真空計の一つです(図2)。ブルドン管とは、一端が閉じられた中空のへん平金属管で、ブルドン管の中の圧力が高くなると管が膨らみます。その変位をリンクとレバーを介してギアで針の回転として表示します。この真空計は、大気圧以上の圧力の測定にも用いられます。ガスボンベの調圧弁などに付属しているものもあります。ブルドン管真空計は、大気圧以上と大気圧以下の両方の目盛りがあるものも多く、連成計と呼ばれます。目盛りはゲージ圧で表示されていることが多く、大気圧はゼロ、ガスが全くない状態は-0.1MPaと表示されています。

ブルドン管真空計の外観と内部構造
図2:ブルドン管真空計の外観と内部構造

液柱差真空計は、U字形をしているので、U字管真空計、またはU字管マノメータとも呼ばれています(図3)。低真空・中真空も計測することができ、ブルドン管真空計よりも少し精度の高い真空計です。管内には水や油などの液体を入れます。左右の管に圧力差があると、液面の高さの差となって表れます。高さの差をh(cm) とすると、液体の密度をρ・(g・cm -3 )、重力加速度をg(cm・s -2 )として、Δp=p 2 -p 1 =0.1ρghとなり、圧力差が測れます。p 1 を非常に低い圧力にしておけば、左右の液面の高さの差から絶対圧が読み取れます。また、p 1 を大気圧にしておくと、液面の高さの差はゲージ圧となります。このような真空計は、作動液に油を用いて10Pa程度まで測定できるものもあります。

U字管マノメータの測定原理
図3:U字管マノメータの測定原理

隔膜真空計とは、ダイヤフラムと呼ばれる薄い板の圧力による変形(たわみ)を利用する真空計です。ダイヤフラムの変形の検出には、静電容量の変化で捉えるものや、ひずみで電気抵抗が変化するストレインゲージを用いるもの、ひずみによって機械的な振動周波数が変化することを利用するものなどがあります。近年、半導体の微細加工技術を用いて、ストレインゲージやアンプを内蔵したIC、さらにダイヤフラムそのものをシリコンで作製し、アンプなどを一体で組み込んだ真空計や圧力センサが各メーカーから市販されています。このような真空計は小型な上に、安価で、直線性も良く、DC電源さえあれば簡単に大気圧から100Pa程度までの圧力が測定できます。また、機械特性の温度安定性に優れたサファイアをダイヤフラムとして使用した隔膜真空計には、0.002Pa程度の圧力まで測定できるものもあります。

2. ガスの輸送現象を利用した真空計

ガスの輸送現象を利用した真空計には、ピラニ真空計、熱電対真空計、水晶摩擦真空計があります。この3つについて紹介します。

ピラニ真空計は、ガスの熱伝導が圧力に依存することを利用した真空計です。図4はピラニ真空計の測定原理です。センサ内に白金、タングステン、ニッケルなどの細い金属ワイヤが張られていて、電流導入端子を介して外部から電流を流します。このとき発生するジュール熱でワイヤが発熱します。金属の電気抵抗は絶対温度に比例するため、ワイヤの電気抵抗が一定になるように電流を調整することで、ワイヤの温度は常に一定になります。ワイヤの発熱は、センサ内のガスを通じて容器に達して放熱されます。分子流領域ではガスの熱伝導は圧力に比例し、圧力が低いほどガスによる熱伝導が小さくなります。そのため、圧力が低いほどワイヤの温度を一定に保つための電力が少なくなり、流れる電流が小さく済みます。そこで、ワイヤに流れる電流値から圧力を読み取ることができます。

ピラニ真空計の測定原理
図4:ピラニ真空計の測定原理

ガスの種類によって輸送特性は異なるため、熱伝導を利用した真空計では、ガスの種類によって表示値が異なることになります。真空計は窒素ガスで校正することになっていて、これを窒素相当圧といいます(JIS Z 8126-3 真空技術-用語-第3部:真空計及び関連用語)。

ピラニ真空計で、ガスの種類によって表示値と実際の圧力がどのくらい異なっているか見てみましょう。図5は、ピラニ真空計の読みの値と真の値のグラフです。読みの値とは、真空計に表示される値です。横軸は表示される圧力、縦軸は真の圧力になっています。窒素よりモル質量が大きいアルゴンや一酸化炭素では、真空計の読みに比べて実際の圧力が高く、モル質量の小さいヘリウムや水素では、実際の圧力が低くなっていることが分かります。ピラニ真空計で表示される圧力は、どんなガスを測っているのかによって、真の圧力とは異なった値を示すということに注意が必要です。また、ピラニ真空計では温度差を一定に保つことが重要で、センサを熱源のそばで使用すると誤差が生じます。

ピラニ真空計の読み値と真の値(引用:真空技術基礎講習会運営委員会編、わかりやすい真空技術(第3 版)、日刊工業新聞社、2010年、P.39)
図5:ピラニ真空計の読み値と真の値(引用:真空技術基礎講習会運営委員会編、わかりやすい真空技術(第3 版)、日刊工業新聞社、2010年、P.39)

ピラニ真空計は、粘性流領域ではガスの熱伝導の圧力変化が小さくなるので、感度が悪くなります。高真空や超高真空になると、ガスによる熱伝導に比べて、金属ワイヤの支持体などからの熱流入や、放射による熱流入が無視できなくなり、圧力測定ができなくなります。

このようなピラニ真空計の原理を利用して、プラスチック薄膜上に抵抗素子を作り、センサを小型化したマイクロハクマク真空計が開発されています。図6はこの真空計のセンサの大きさを示しています。センサ本体は4mm角程度の大きさで、このようなセンサの小型化によって、10 4 Paから10 -3 Pa台までの広い範囲の圧力測定が可能になりました。

マイクロハクマク真空計のセンサ(引用:株式会社岡野製作所カタログ)
図6:マイクロハクマク真空計のセンサ(引用:株式会社岡野製作所カタログ)

熱電対真空計とは、ピラニ真空計と同様に通電加熱したワイヤからの熱伝導を測定し、圧力を求める真空計です。ワイヤには抵抗の温度変化の少ないニクロムや白金などを用い、その中点に熱電対を点溶接し、一定電流で過熱したワイヤの温度変化を測定して圧力を求めます。

水晶摩擦真空計とは、ガスの熱伝導を用いる代わりに周囲のガスの粘性による水晶振動子の振動周波数変化を利用した真空計です。

3. ガスの電離を利用した真空計

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 真空とは?
  • 第2回 低・中真空の作り方
  • 第3回 高真空・超高真空の作り方
  • 第4回 真空の測定方法
  • 第5回 真空用材料と部品
  • 第6回 真空機器の取り扱い・保守

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