圧電超音波センシングデバイス|超音波の基礎知識4

超音波の基礎知識
著者:東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授 中村 健太郎

前回は、さまざまな超音波計測を紹介しました。今回は、圧電振動子を用いた、さまざまな超音波センシングデバイスを解説します。圧電超音波センシングデバイスには、小さな質量を付加すると共振周波数が下がる、ということを利用した振動子型センサ、弾性表面波の伝搬面を利用した表面波センサ、回転運動を検出する振動ジャイロなどがあります。

第4回「圧電超音波センシングデバイス」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 振動子型センサ

水晶などの圧電材料を用いた振動子は、振動子の寸法(長さや厚さなど)によって異なる特定の周波数において、よく振動します。この現象を共振といいます。共振は、振動子の寸法が振動の半波長や、その奇数倍のときに発生します。このように、共振が発生するときの周波数を、共振周波数といいます。共振周波数の付近では、電気的なインピーダンスが鋭い極値を示します。この原理は、周波数基準を作る回路素子などに応用されています。

周波数安定度の高い水晶振動子は、1932年、日本の電気通信工学者、古賀逸策によって開発されました。この技術は、水晶時計(クォーツ時計)をはじめとして、コンピュータのクロック信号を作る回路など、現代技術の基盤となっています。水晶振動子は、圧電材料の上下面に薄い電極を付けた構造をしています(図1)。

振動子によるセンサ
図1:振動子によるセンサ

振動子は付着物に対して敏感で、微量の付着物があるだけで共振周波数が変化します。このことに着目し、水晶振動子は、微小な質量変化を測定するセンサとしても利用されています。ここからは、振動子のセンサとしての仕組みを解説します。

水晶振動子の電気的な性質は、図2に示す電気回路で表すことができます(図2の左上)。これを、電気等価回路といいます。振動子は、非導体である圧電体を平行電極ではさみ込んだキャパシタ(電気をためる電気素子:コンデンサともいう)の構造をしており、その電気容量をC d で表わしています。

センサ素子の電気等価回路と周波数応答
図2:センサ素子の電気等価回路と周波数応答

一方、周波数f 0 において振動子が共振し、よく振動している時、回路には振動に応じた電流が流れます。これを、電気等価回路において、インダンクタンスL m 、キャパシタC m 、抵抗R m の直列共振で表わしています。言い換えると、振動子をばね振り子と見立てたときの等価的な質量、ばね、機械抵抗(ダンパ)に対応するものを、電気素子で表しています。よって、アドミッタンス(インピーダンスの逆数)が極大値を持つ周波数f 0 は、以下の式で表されます。

ここで、振動子に小さな付着物があると、わずかに質量が増加します。その場合、等価的な質量に相当する電気素子L m の値もわずかに増え(ΔL m )、周波数がΔfだけ低下します(図2 の右)。

これら2つの式により、共振周波数の変化率から、質量変化率を推測することが可能です。

この現象は、真空蒸着装置の膜厚計に使われています。蒸着層の中に水晶振動子を置き、振動子に蒸着された膜の厚さを、質量付加効果による共振周波数変化として検出します。また、水晶振動子の電極上に、特定のガスを吸着する特殊な膜を設けることで、ガスセンサとしても応用できます。

その他にも、棒状の振動子の一部を液体に浸し、液深計として用いたり、浸す液体の粘性が共振周波数や共振の鋭さに影響することから、粘度センサとして用いるなど、応用の範囲は多岐にわたります。

2. 表面波センサ

表面波センサは、物体の表面のみが振動する弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を検出するセンサです。弾性表面波は、発見者のイギリスの物理学者、ジョン・ウィリアム・ストラット(レイリー卿:Lord Rayleigh)の名前をとって、レイリー波とも呼ばれます。弾性表面波の伝搬速度は、縦波の約半分です。物体の表面から1波長ほどの深さに振動エネルギーが集中しているため、その伝搬は、表面の状態に敏感です。

一部の券売機などのタッチセンサには、弾性表面波が使われています。くさび型トランスデューサを用いて、ディスプレイのガラス板の表面に弾性表面波を伝え、指の接触による弾性表面波の減衰や反射を検出します(図3)。ガラス面に特別な加工を必要としないのが利点です。

弾性表面波によ るタッチセンサ
図3:弾性表面波によ るタッチセンサ

ニオブ酸リチウムなどの圧電結晶の基板上に、くし形の電極を設けることで、弾性表面波の送受信が行えます(図4)。この電極は、交差指電極(IDT:InterDigital Transducer)とも呼ばれます。IDTが交差する幅の変化のさせ方により、入力側から出力側へ信号が伝達する周波数特性が変化することから、通信機のフィルタ素子(SAWフィルタ)として広く普及しています。スマートフォンをはじめ、現代の通信機器には必須の電子部品です。

圧電基板とIDTを用いたSAWセンサ
図4:圧電基板とIDTを用いたSAWセンサ

このフィルタ素子の、弾性表面波が伝搬する面は、物体の付着に敏感なので、センサとして応用できます。つまり、付着物質により弾性表面波が減衰することや伝搬時間の変化を、センサとして利用します。素子の伝搬面は圧電材料なので、付着物質の電気的な特性を、弾性表面波の伝搬速度のわずかな変化として捉えることができます。

3. 振動ジャイロ

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 超音波とは
  • 第2回 超音波の発生と検出
  • 第3回 超音波計測・センシング
  • 第4回 圧電超音波センシングデバイス
  • 第5回 パワー超音波の性質と応用
  • 第6回 超音波アクチュエータ

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