超音波の発生と検出|超音波の基礎知識2

超音波の基礎知識
著者:東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所 教授 中村 健太郎

前回は、超音波の概論と、応用例を紹介しました。今回は、超音波の発生と検出を取り上げます。超音波を発生、受信するためのデバイスには、圧電現象による振動子があります。振動子は、電気信号を超音波に変換したり、超音波を電気信号に変換するトランスデューサ(変換器)の一種です。オーディオのスピーカーやマイクロホンに相当します。

第2回「超音波の発生と検出」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 圧電振動子の基礎

超音波の発生や検出には、圧電効果が利用されます。この現象は、水晶などの結晶に外から力を加えると電圧が発生するというもので、1880年にフランスの物理学者ジャック・キュリー(Paul-Jacques Curie)とピエール・キュリー(Pierre Curie)の兄弟により発見されました。図1は圧電効果の模式図です。圧電性を有する材料の両側に導電性材料を塗布し、これを電極とした上で外側から力を加えると、A-B間に電圧が発生します。

圧電素子
図1:圧電素子

電圧の極性は、加える力が押す力か、引く力かによって反転します。従って、このような圧電素子に超音波が加わると、それに応じた電圧信号が得られます。超音波の受信には、この圧電効果が利用されます。これとは逆に、A-B間に電圧を加えると、電圧の極性に応じて圧電素子が伸び縮みをします。これを逆圧電効果と呼び、超音波の発生に利用されます。なお、ピエール・キュリーは後に、妻マリー・キュリー(Marie Curie)と共同でラジウムとポロニウムを発見し、1903年にノーベル物理学賞を受賞しています。

圧電効果を示す物質には、水晶やニオブ酸リチウムなど、いくつかの結晶に加えて、チタン酸バリウムやチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:鉛Pb、ジルコニウム Zr、チタン Tiの複合酸化物)のようなセラミックス材料があります。特に、PZTは高い圧電性を示すため、計測応用にもパワー応用にも広く使われています。また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、それに類似した高分子材料にも圧電効果を示すものがあり、センシング用素子などに使われます。

圧電材料には分極という極性があり、PZT材料や圧電高分子材料では、製造工程の最後に高い電圧を印加して分極を与えます。分極の方向は、信号電圧を加える方向との関係によって、素子に生じる変形の方向に影響します。図1では、分極方向と電圧の方向が平行です。この場合、素子が伸び縮みをする変形をするため、縦波の発生に使われます。

2. 計測用トランスデューサ

基本的な超音波計測の方式に、パルスエコー法があります。これは短時間のパルス波を送信して、目標物からの反射波を受信する方式です。送信と受信を1つのトランスデューサで兼用する場合と、別々に行う場合があります。いずれにしても、超音波を送信してから反射波が受信されるまでの時間と、媒質中の伝搬速度によって、目標物までの距離が分かります(図2)。

パルスエコー法
図2:パルスエコー法

これは山びこと同様の現象です。超音波は目標物までの距離を往復するので、受信までの時間と伝搬速度の積の半分が目標物までの距離になります。音の伝搬速度は電波や光に比べると非常に小さいため、目標物までの往復に要した時間測定が容易に行えます。

このような原理から、送信パルスの時間幅は、できるだけ短い方が場所を正確に測定できます。そのため、計測用トランスデューサには、感度もさることながら、残響のない単発パルスを送受信できることが求められます。図3は、計測用トランスデューサの基本構造です。

計測用トランスデューサの構造
図3:計測用トランスデューサの構造

圧電素子と媒質は、密度や弾性率などの音響的な性質が異なるため、それらの境界で超音波の一部が反射します。この反射は、送信の際圧電素子の中で多重反射となり、残響を発生します。また受信の際は、入射波のエネルギーの多くが圧電素子の前面で跳ね返されてしまいます。これらをできるだけ防ぐために、圧電素子に整合層を設けます。これは眼鏡レンズの反射防止コーティングと同様に、反射を防ぎます。

整合層の厚さは超音波波長の4分の1、材質は音響的性質が圧電素子と媒質の中間のものを選びます。圧電素子の媒質と反対側の面でも、超音波の反射は生じます。この対策として、バッキングと呼ばれる吸収体を配置します。バッキングの材質には、超音波エネルギーを吸収したり散乱させるものを選びます。

実際、整合層やバッキングの役割は重要で、これらをどのように配置するかにより、計測用トランスデューサの性能は大きく左右されます。圧電素子の厚さは、トランスデューサの感度の中心周波数を決定します。工業用非破壊検査や、医療用診断では数MHzの周波数が多く使われ、圧電素子の厚さは数百μm以下です。

3. パワー用トランスデューサ

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 超音波とは
  • 第2回 超音波の発生と検出
  • 第3回 超音波計測・センシング
  • 第4回 圧電超音波センシングデバイス
  • 第5回 パワー超音波の性質と応用
  • 第6回 超音波アクチュエータ

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