前回は、トランスミッションの機能と種類について解説しました。オートマチックトランスミッションはオートマと略されます。ここでは AT と表記します。今回は、オートマチックトランスミッションをテーマに、AT とは何が自動なのかを紹介します。そうすることで、トランスミッションの役割が改めてよく見えてきます。そして MT、AT だけでは分類できない今のトランスミッションの分類を、より深く理解することができるのではないでしょうか。
第5回「オートマ~さまざまなトランスミッション 」を解説していきます。
第5回もくじ
1. 自動化の対象
オートマチックトランスミッション(自動変速機)とは、人間に代わって変速を自動で行う変速機です。大まかにいうと、ドライバーの意思をくみ取り、時事刻々と変わる車の走行状態に応じて最適なギアを選ぶということです。まず、今も変わらない基本原則を知っておきましょう。最もシンプルな変速制御は、アクセル開度と速度で決められる二次元マップにおいて、選ばれるギアが示されているものです。このマップを、シフトスケジュールと呼びます(図 1)。
アクセル開度はドライバーのパワー要求を代表し、その速度域において、要求に応えられるエンジンパワーとなるギアを選びます。これまでに説明したように、エンジンパワーはほぼ回転数に比例するので、アクセル開度が高ければ高いエンジン回転数となるようにマッピングされています。そして、その最大値はもちろんエンジンの許容回転数です。このように、リアルタイムで最適なギアを判断し、変速が必要な場合にギアを変える操作を自動で行うのが自動変速機です。かつて AT といえばほとんど 1 種類(トルクコンバータ+遊星歯車)だったので、判断と操作が一緒にされていたものを分離して考えると、今日の多様なトランスミッションの理解につながるのではないでしょうか。
2. 判断と操作
判断に必要な要素は、車両速度、加速・減速要求、そしてエンジンの出力特性と許容回転数です。加速要求の大きさとエンジン出力特性からエンジン回転数が導き出され、その時の車両速度から候補となるギアが選ばれ、エンジンの許容回転数内であれば変速可能と判断され選択されます。マニュアルトランスミッションでは、面白いことに、人間はあまり考えずともこの判断をある程度、的確に行っています。そして、マニュアルトランスミッションでは、エンジンブレーキを使った減速要求でも、同様な判断過程を経てギアが選択される場合があります。しかし、オートマチックトランスミッションでは、この減速判断が非常に難しく、なかなか思い通りにいきません。このため、モード選択によるエンブレ制御などは、開発の腕の見せどころとなっています。
操作については、判断されたギアに変速するため、エンジンからのトルクを一瞬切断してギアを変えます。それから、トルクをつなぎ戻すという作業を行っています。よって、何らかのアクチュエータでその動作を行い、その際の変速ショックをいかになくすかが、開発の中心といってもいいでしょう。熟練者が扱うマニュアルトランスミッションでの変速所作が、未だに見習うべきものであるというのも面白いことです。この変速ショックを低減するためには、エンジン制御も欠かせません。点火時期でトルクを弱めたり、今ではスロットルを制御しトルクと回転数を合わせ込んだりして、変速ショックを抑えています。このように判断と操作、そして機構を組み合わせると、いよいよ現在のトランスミッションが俯瞰(ふかん)できるようになります。
3. さまざまなトランスミッション
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 トルクとパワー
- 第2回 動力源とパワートレイン
- 第3回 パワートレインとトランスミッション
- 第4回 トランスミッションの機能と種類
- 第5回 オートマ~さまざまなトランスミッション
- 第6回 トランスミッションの未来