前回は、パワートレイン(推進装置)は燃料の種類と駆動方法によって分類でき、その中でも、駆動方法にはトランスミッションが密接に関わるということを解説しました。今回は、いよいよトランスミッションについて解説を始めるに当たり、駆動によるパワートレインの分類に基づいて説明します。
第3回「パワートレインとトランスミッション」を解説していきます。
1. コンベンショナルパワートレインにおけるトランスミッション
現在も圧倒的多数を誇るパワートレインは「コンベンショナルパワートレイン」、つまり、エンジンを動力源とする一般的な自動車です。トランスミッションが欠かせないパワートレインでは、トランスミッションに 2つの重要な機能が求められます。第 1 回で説明したように、エンジンは停止(非回転)時やアイドリング以下の回転数では、その力を出せません。しかし、自動車は走っているだけではなく停止、発進を頻繁に行うために、この課題を解決するための機能が第 1 に求められます。それがクラッチ、あるいはトルクコンバータです。クラッチは、摩擦板の締結や解放によって駆動の伝達の有無を制御し、トルクコンバータは流体締結の特性によって回転差を許容します(図 1)。
もう 1 つの重要な機能が、変速によるトルク増大機能です。自動車は、発進時には大きな(ドライブシャフトでの)トルクを必要とするものの、このトルクをエンジントルクに求めると排気量は巨大になり、無駄に大きなエンジンを載せることになってしまいます。そのため、発進時や低速走行時には、ギアによってトルクを増大させるのです。しかし、トルクを倍増させるためのギアのみでは最高速度が低くなり実用的とはいえないので、発進から最高速までを網羅するため、数段の変速ギアが必要となります。
この 2 つの機能は、手動で行うか自動で行うかで、大きく分けられます。それが、主にクラッチ+有段ギアの組み合わせとなる「マニュアルトランスミッション=MT」と、トルクコンバータ+遊星ギアの組み合わせとなる「オートマチックトランスミッション =AT」です(図 2)。ちなみに最近では、この 2 通りでは説明できないトランスミッションも現れてきており、それについては、また後の回で紹介します。
2. ハイブリッドパワートレインにおけるトランスミッション
本稿では、前回解説した、エンジンと電気モータのハイブリッドで駆動するパワートレインを、「ハイブリッドパワートレイン」とします。ハイブリッドパワートレインにおけるトランスミッションの機能も、コンベンショナルパワートレインに要求される 2 つの機能が基本となります。エンジンのフライホイールの位置に電気モータが装着されるシンプルなものです。いわゆる 1 モータハイブリッドとして、その機能に差はありません。
しかし、それ以外のハイブリッドパワートレインにおけるトランスミッションには、それぞれのシステムに応じた機能の種類が存在し、そのいずれにおいても、エンジン、電気モータ、タイヤ(アウトプットシャフト)の 3 つの回転数を調整する機能が必要とされます。さまざまな状況下で最適となるように、出力時にはエンジンと電気モータが発生するトルク比を調整し、回生時には電気モータが発電機となり、効率よく発電できるように調整されます。ハイブリッドの代名詞ともいえるトヨタ プリウスのハイブリッドシステム THS では、そのメカニズムに遊星ギアを用いています。
3. EV とトランスミッション
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 トルクとパワー
- 第2回 動力源とパワートレイン
- 第3回 パワートレインとトランスミッション
- 第4回 トランスミッションの機能と種類
- 第5回 オートマ~さまざまなトランスミッション
- 第6回 トランスミッションの未来