前回は、トルクとパワーを説明しました。トランスミッションは、パワートレイン(推進装置)の中核をなす部品であり、動力源が発生する力をタイヤに伝える機能を持っています。もちろん、ただ伝達するだけでなく、動力源の特性に応じて補う機能が求められるのが面白いところです。今回は、いったんトランスミッションを少し離れ、昨今、多種多様化してきている自動車用動力源について解説します。
第2回「動力源とパワートレイン」を解説していきます。
1. 動力源とは
「自動車を動かす力の源は、エンジンである。」20 世紀においてだけでなく、この言葉は今でも、それほど違和感なく一般的に使われています。一方で、ハイブリッド、電気、燃料電池、代替燃料など、さまざまな動力源を示す言葉も、自動車に関わる用語として市民権を得ています。そもそも、業界内ではかつてから、エンジンやトランスミッションなどを総称して、パワートレイン(推進装置)という表現が使われています(英語圏では propulsion system という用語が多く使われます)。これらは、どちらも自動車を構成する要素における「動力源 + 伝達経路」の 2 つを指し、トランスミッションは伝達経路の一部とされています。ただ、トランスミッションは、単なる伝達経路の一部とするには失礼なくらい、多機能で重要な部品でもあります。このため、パワートレインを 2 つではなく、「動力源 + 速度・パワー変換装置 + その他の伝達経路」という3つに分けた方が良いのかもしれません。こうすることで、トランスミッションが動力源と非常に密接な関係を持ち、相互に強い影響を及ぼしていることが理解できます。
さて、このようにトランスミッションと切り離せない関係である動力源は、実に多種多様なラインアップを持ちます。にもかかわらず、実際は系統的な分類による名称が与えられていません。動力源の分類は、ある 2つの視点から捉えることで理解しやすくなるため、その分類法に従って次から解説していきます。
2. 燃料による分類
古くからあるガソリン車やディーゼル車、LPG 車、天然ガス車などは、燃料によって分類される呼び方であり、以前から定着しています。現在、一般に市販されている自動車用燃料は、ガソリン、軽油、LPG、天然ガス、水素、電気、アルコールで、実用前の研究レベルまで広げると、DME、アンモニア、GTL、FT 軽油などもあります。
さて、これらを燃料として動力を得る動力変換装置には、どのようなものがあるでしょうか。ガソリン、軽油、LPG、天然ガス、水素、アルコールは、内燃機関(ICE)の燃料となります。これをエンジンで燃焼させることで熱エネルギーを生み、同時に動力へと変換します。電気は、電気モータによって動力に変換されます。水素については、燃料電池として発電を行い、その電力と電気モータで動力に変換することが可能です。厳密にいうと、これらの組み合わせ以外にも、燃料の持つ化学エネルギーを動力に変換する仕組みは数多く存在しますが、ここでは主なものだけにとどめておきます。
こうした燃料の特性は、大きく 2 つに分けられます。1 つは化石燃料由来のもの、もう 1 つはそれ以外のものです。ガソリン、軽油、LPG、天然ガスなどは前者であり、水素、電気、アルコールは後者に当たります。このように、燃料の特性を、その由来である一次エネルギーベースで考えることがとても重要です。図 1 に示す、WtW(Well to Wheel)という考え方で捉えると、この WtW が二酸化炭素排出特性に大きく影響を及ぼすことが分かります。昨今、水素や電気が特に注目を浴びているのは、一次エネルギーの特性によって、同じエネルギーを発生する際の二酸化炭素排出特性に大きな違いが表れ、一次エネルギーを自然エネルギー由来とすることで、限りなく二酸化炭素排出の低減が可能となるからです。
このように、燃料名を冠した自動車の呼び方は理解できるものの、例えば水素自動車などは、エンジンでも燃料電池 + モータでもあり得るため、システムを正確に同定できません。また、昨今、市場で大きなシェアを持つハイブリッド車という表現もされていません。そこで、次に駆動による動力源の分類について解説します。
3. 駆動による分類
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 トルクとパワー
- 第2回 動力源とパワートレイン
- 第3回 パワートレインとトランスミッション
- 第4回 トランスミッションの機能と種類
- 第5回 オートマ~さまざまなトランスミッション
- 第6回 トランスミッションの未来