前回は、人の動き、自動車の動き、物の動きに着目した実態調査を紹介しました。今回は、前回紹介したパーソントリップ調査のデータを用い、都市の交通特性を見ていきましょう。パーソントリップ調査では、豊富な情報を得ることができます。例えば、移動目的、利用交通手段、出発地・到着地、出発時刻・到着時刻などです。都市圏の人口規模により交通特性は異なります。本稿では、全国、大都市圏、地方都市圏に分けて紹介します。使用した情報は、実際に筆者が関わったパーソントリップ調査から選びました。
第2回「都市の交通特性」を解説していきます。
第2回もくじ
1. 全国の交通特性
パーソントリップ調査の1つである全国都市通特性調査は、平日と休日について調査されています。基礎的な交通特性を紹介します。図1に、利用交通手段の構成比(分担率)を示します。三大都市圏(東京都市圏、京阪神都市圏、中京都市圏)は公共交通の分担率が高く、地方都市圏では自動車の分担率が高い傾向がはっきり出ています。
なお、このデータは5歳以上の人が調査対象になっているため、小学生が徒歩で通学する交通も含まれています。
図2に、代表交通手段分担率の経年推移を示します。経年的において自動車分担率は地方都市圏では上昇を続けているものの、三大都市圏では2005年から低下しています。三大都市圏の公共交通分担率は、自動車分担率が低下し始めた2005年以降上昇に転じました。
大都市圏においては、地球環境問題の深刻化に対する認識の高まり、鉄道や地下鉄の整備やサービス向上により、公共交通分担率が上昇したと考えられます。地方都市圏では、相変わらず自動車社会から抜け出せていません。
2. 大都市圏の交通特性
大都市圏の交通特性を、東京都市圏、京阪神都市圏、中京都市圏のパーソントリップ調査データ(以下PT調査)で見てみましょう。図3に、代表交通手段分担率の推移を示します。
東京都市圏では、鉄道分担率が上昇し、自動車分担率は1998年から2008年の10年間で低下しています。京阪神都市圏においても、2000年から2010年に鉄道分担率の上昇、自動車利用の低下の傾向があります。中京都市圏においては、鉄道分担率は上昇し、自動車分担率も上昇しています。全体的に、二輪車分担率、徒歩分担率は低下している傾向があります。東京都市圏、京阪神都市圏では、初めて自動車分担率が低下する時代を迎えました。
ここで、用語の解説をしておきましょう。トリップとは、通勤や買物など目的を持った移動を指し、移動目的に応じて、通勤トリップ、買物トリップといいます。また、単位としても使われ、移動回数について「1人1日当たり3トリップした」などと用います。
東京都市圏の交通特性(平日)を紹介します。PT調査では、地域別の特性や、地域間の移動を分析できます。図4は、地域別の自動車利用の発生集中交通量です。
発生交通量はある地域から出発したトリップ、集中交通量はその地域に到着したトリップです。発生・集中交通量は、発生交通量と集中交通量の合計です。茨城南部と埼玉北部を除く全域で、自動車利用の発生・集中交通量が減少しており、自動車離れの傾向があります。
図5は、地域間のトリップ数です。東京区部を発着地とするトリップが多く、東京区部を中心とした都市圏が構成されていることが分かります。その他にも、横浜市、さいたま市、千葉市などを中心とするトリップが見られ、最近は東京を中心とする環状方向の移動が増加しています。
このようなデータを用い、東京外かく環状道路(外環)や、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)のような環状道路が計画されてきました。
3. 地方都市圏の交通特性
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 交通実態調査
- 第2回 都市の交通特性
- 第3回 将来交通量の予測
- 第4回 交通マスタープラン
- 第5回 市民社会の交通計画
- 第6回 新しい技術の活用