前回は、トヨタ生産方式の自働化と、多工程持ちシステムおよび標準作業を解説しました。今回は最終回です。標準作業とトヨタ生産方式の異業種展開について解説します。
第4回「標準作業と異業種展開」を解説していきます。
第4回もくじ
1. 標準作業によるコンスタントなモノ作り
標準作業は、古い機械を使いながら多品種少量生産を能率よく行うことを目的に、大野耐一氏により考案されました。平準化や段取り替え短縮とも密接な関係があり、全てをサイクルタイム(稼働時間÷ 生産必要数)で生産します。まとめて作る方が効率的と考えてしまいそうですが、不要な在庫が発生し、結局は売れない商品になりかねません。
標準作業は、作業時間がサイクルタイムに収まるように、1 人の作業者が複数台の機械を受け持つことです。標準作業3 点セット(工程別能力表、標準作業組み合わせ表、標準作業表)には、サイクルタイム、作業順序、標準手持ちが表示されます。作業者は異常と正常が一目で分かり、作業を効率的に行うことができます。
平準化も、コンスタントにモノを作ることをいいます。標準作業が解決できない問題に、後工程がコンスタントに引き取らないことが挙げられます。後工程の引き取りにばらつきがあると、前工程は、過負荷や手余りになります。この傾向は、上流工程ほど大きくなります。このような変動要因を最小限にするために、最終ラインの組み立てを平準化する(コンスタントに作る)必要があるのです。
平準化される部品や部材には、優先順位があります。一般的に、専用の高価な設備で生産される部品・部材は平準化の優先順位が高く、次に高価な設備で切り替え生産されるもの、より安価な設備で生産されるものと続きます。優先順位の低い部品・部材には、購入品の組立作業のみで完了するもの、購入のみで済むものがあります。重要な部品・部材ほど、サイクルタイムが安定するように最終工程の生産順序が決定されています。部品点数が非常に多い自動車などでは、経験的な生産比逆数方式や、解析的な目的追及法が使われます。
例えば、1 日480 分で、部品A を240 個、部品B を160 個、部品Cを80 個の生産を計画します。一般的には、まずA を240 個作り、次にB を160 個、最後にC を80 個作る、ロット生産を行います。しかし、実際にはA が242 個必要で、B は158 個で足りるという状況になると、部品の過不足が生じてしまいます。そこで、部品A、B、C を、「ABABCA:ABABCA」という順番で繰り返し作ります。数の変更があれば、生産の順番を入れ替えます。このように、生産量の変動に対応しながら全体をコンスタントに作ることで、設備、機械、人を有効に活用できるのです。
困った問題もあります。それは、プレスや熱処理など、ロットでしか扱えない部品や工程があることです。異なる部品を作るには、段取り替えが発生します。段取り替えは、連続で生産する大量生産方式では大した問題ではありません。しかし多品種少量生産では、段取り替えに何時間もかけるわけにはいきません。トヨタ自動車では、昭和20 年代に2 ~3 時間かかっていたプレス機の段取り替えを、昭和40 年代後半にはたったの3分にまで短縮しました。そのためには、機械を止めて行う作業(内段取り)を減らし、次に使用する型や工具の準備など、機械を止めなくてもできる作業(外段取り)を先行して行うことが必要です。
設備の場所・位置を入れ替えることも有効です(図2)。段取り替えは、通常の作業改善と同様に行うことができます。しかし、発生間隔が少ないため、おろそかにされてきたようです。多品種少量生産方式において、段取り替えは重要です。「ジャストインタイムを実現するため段取り替え短縮」(熊澤光正、大学教育出版)では、段取り替えの重要性を詳しく考察しています。
2. トヨタ生産方式の異業種展開
全4回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 トヨタ生産方式、その原点は?
- 第2回 7つのムダとジャスト・イン・タイム
- 第3回 自働化と多工程持ちシステム
- 第4回 標準作業と異業種展開