断熱設計の手法|断熱の基礎知識6

断熱の基礎知識
著者:有限会社ADS計画研究所 代表取締役 堀 清孝

前回は断熱の基準値と断熱の設計方法を説明しました。今回は、それぞれの具体的な計算方法を取り上げます。また、建築物省エネ法でクリアする必要のある、一次エネルギー消費量についても解説します。

第6回「断熱設計の手法」を解説していきます。

基礎知識DL

1. 外皮平均熱貫流率の求め方

UA 値(外皮平均熱貫流率)とは、家全体からどれだけ熱が出入りしやすいかを表した値です。UA 値の計算は 5 ステップに分けられます。必要な作業は、外皮面積の計算、材料の厚みと熱貫流率の調査だけで、他は決められている係数の中から該当するものを選択します。詳細を見ていきましょう。

1:外皮の面積を計算する
外皮面積とは、断熱材で覆われた部分である屋根や外壁、建具などの表面積のことです。屋根や天井、外壁、窓やドアなどの長さを計測すれば計算できるため、複雑な知識は必要ありません。

2:各部位の面積・長さと熱貫流率を調べる
各部位の面積・長さは計測します。熱貫流率は、部位ごと(屋根・天井、外壁、ドア・窓、床、基礎など)に計算する必要があり、熱貫流率計算ソフトを用いると簡単に求められます。基礎部は線熱貫流率という値を計算します。

3:温度差係数を選ぶ
温度差係数とは、各部位で生じる温度差を考慮し、熱貫流率を補正する際に用いる値です。温度差係数は各部位に決められているので、それを選択するだけです。

4:熱橋係数を選ぶ
熱橋係数とは、熱貫流率において熱橋が与える影響の度合いを示した値です。これも、部位ごとの熱橋係数が定められているので、選択するだけです。

5:外皮平均熱貫流率を計算する
今までの手順を行うことで、UA 値(外皮平均熱貫流率)の計算に必要な値がそろっています。図 1 に、外壁の熱貫流率の計算例、図 2 に外皮平均熱貫流率の計算例を示します。入力が必要な数値は赤字で示しています。断熱部・熱橋部の面積比率は一般的な数値を入れています。また、外気の表面熱抵抗は各部位に決められた数値があります。

外壁の熱貫流率計算の例
図1:外壁の熱貫流率計算の例
外皮平均熱貫流率の計算例
図2:外皮平均熱貫流率の計算例

さまざまな断熱材で UA 値をシミュレーションしてみると、断熱材の種類や厚みの変化が UA 値に与える影響の様子がつかめます。UA 値が基準に達していなくても、断熱材の構成を変えることで何度でもシミュレーションできるため、設計自由性の高いツールです。

2. 冷房期の平均日射取得率の求め方

ηA 値(冷房期の平均日射熱取得率)とは、家全体でどれだけ太陽光から熱を取り込みやすいかを表した値です。ηA値の計算方法も5ステップにまとめることができます。特徴は、計算よりも調べる作業が多い点です。

1:外皮の面積を計算する
UA 値と同じ値を用いることができます。

2:各部位の日射熱取得率を求める
部位のうち、屋根・天井・外壁・ドアは、UA 値の際に求めた熱貫流率に、0.034 を乗じることで近似値が求まります。窓の日射熱取得率は、ガラスの仕様や付属部材によって区分が決められており、その区分で日射熱取得率が細かく分類されています。その値か、あるいはサッシメーカーが公表している値を調べて使用します。

3:窓の日射取得量補正係数を調べる
日射取得量補正係数とは、日射熱取得率を計算する際、庇(ひさし)などの日よけ、ガラスの反射、地面からの反射などの影響を考慮するために用いる係数のことです。ガラスの仕様や付属部材によって区分が決められており、区分ごとに取得日射量補正係数が細かく決められています。この値を調べて入力します。

4:方位係数を選ぶ
方位係数とは、部材が向いている方角の影響を、地域区分ごとに係数化した値です。部材が東西南北のどちらを向いているかによって、受ける日射量が異なるため、その影響を補正する際に用います。この値も 8方位で細かく決められているため、適切な値を調べて入力します。

5:冷房期の平均日射取得率を計算する
今までの手順を行うことで、ηA 値(冷房期の平均日射取得率)の計算に必要な値がそろっています。図 3 に、ηA 値の計算例、図 4 に窓からの日射熱取得率の計算例を示します。窓からの日射熱取得率は、家の窓一つ一つの大きさ・日射取得率・日射取得量補正係数・方位係数を求めて日射熱取得量を計算し、合計値を算出して入力します。

冷房期の平均日射取得量の計算例
図3:冷房期の平均日射取得量の計算例
窓の日射熱取得量の計算例
図4:窓の日射熱取得量の計算例

図 3 を見ると、窓からの日射取得量の割合が非常に大きいことが分かります。平均日射熱取得量を下げるには、窓の高断熱化が欠かせません。普通サッシを複合サッシにする、ペアガラスを Low-E ガラス(遠赤外線の反射率を高めたガラス)にするといった対策で、平均日射熱取得量を下げることができます。また、建物内に障子を設ける、建物外にブラインドを設けるなどの日射付属物による対策も有効です。国の示す標準値では、複層ガラスの日射取得率は、付属部材なしで 0.63、和障子有りで 0.30 なので、およそ半分に抑えることができます。

3. 仕様基準ルートの進め方

4. 一次エネルギー消費量の計算

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全7回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 なぜ、断熱が必要なのか
  • 第2回 断熱とは?遮熱とは?
  • 第3回 住宅における断熱
  • 第4回 断熱材の種類と断熱の工法
  • 第5回 断熱の基準値と断熱設計の基本
  • 第6回 断熱設計の手法
  • 第7回 断熱の盲点

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