前回は、熱伝導と熱伝達を紹介しました。今回は最終回です。前回に引き続き、伝熱現象の基本として、熱ふく射と、工業的に重要な熱移動現象である凝縮(凝結ともいう)、蒸気を作る際の沸騰について説明します。また、高温流体から低温流体へ熱を伝える装置(熱交換器)についても解説します。
第6回「伝熱現象の基本2」を解説していきます。
第6回もくじ
1. 熱ふく射による熱移動
熱ふく射は熱伝導や熱伝達と異なり、熱を伝える媒体を必要としません。例えば、太陽エネルギーは途中に何もなくても地球に届きます。全ての物体は、その絶対温度に応じて電磁波を放射しており、他の物体に吸収されたときに熱エネルギーとなって温度上昇として検出されます。その伝熱量は、絶対温度の4乗に比例します。絶対温度とは、物理的に考えられる最低の温度であるセ氏零下273.15℃を零度とし、そこからセ氏の目盛り間隔で測った温度です。単位はケルビンKで表します。
図1に、熱ふく射の波長範囲を示します。熱ふく射の電磁波は熱エネルギーを伝達するため、赤外域に広く分布しています。また、可視光域と同じではないため、物体に対する熱の吸収や反射は、見た目とは異なることに注意が必要です。
・黒体ふく射
熱ふく射による伝熱は、電磁波の波長分布にも影響されます。また、ふく射する物体の表面性状によっても変わります。そこで、それらの基準として、黒体という仮想の物体を考えます。黒体とは、ある物体から放射されうる最大のふく射熱を放出する物体であり、また逆に、受けたふく射熱を100%吸収する物体です。
黒体のふく射熱Qbは、ステファン・ボルツマンの法則により次のように求められます。
Qb=(伝熱面積A)×(ステファン・ボルツマン定数(5.67×10 -8 ))×(絶対温度の4乗T 4 )
ここで、絶対温度T(K)は、(K)=(℃)+273.15です。ふく射熱は絶対零度(0K)で0となることから、現実的には、全ての物体はふく射熱を放出していることになります。
・ふく射伝熱
一般物体のふく射熱は、黒体の値に、物体のふく射率Eを乗じて求めます。ふく射率とは、黒体に対する一般物体のふく射熱量です。図2に示すように、黒体のふく射率をE=1としたとき、一般物体では1より小さい値になります。従って、一般物体のふく射熱量は次のように求められます。
Q=(ふく射率E)×(黒体のふく射熱Qb)
なお、お互いにふく射熱を放出している2つの物体の場合、正味のふく射伝熱量は、受けた熱量から自分の放出した熱量を差し引いたものになります。
表1に、固体の全ふく射率を示します。全ふく射率とは、単波長のふく射率を全波長にわたって積分した値です。同一の物体表面で同じ温度に対しては、ふく射率と吸収率は等しくなるという法則があります。吸収率とは、黒体に対する一般物体の吸収熱量です。
熱ふく射の波長範囲は可視光域とは異なるので、ふく射率は見た目の感じとは異なります。例えば、黒色のペイントは白色より熱を吸収しやすいと思われがちです。しかし、表1 の全ふく射率は全吸収率となり、ほぼ同じ値となっています。また、アルミニウムのように、表面の状態によっても異なります。
・熱ふく射の伝熱促進
熱ふく射を促進させて伝熱量を大きくしたい場合は、ふく射率Eの大きい表面材料を用います。また、ふく射率の大きい塗料を塗ることも有効です。逆に、ふく射熱を吸収しにくいようにするには、表1より、表面を研磨するとよいことが分かります。宇宙探査機などの表面に銀色の材料を使用するのは、太陽からのふく射熱の吸収を低減するためです。
2. 相変化を伴う熱移動
液体は蒸発して気体になり、凝固して固体になります。液体、気体、固体はそれぞれ液相、気相、固相ともいい、このような変化を相変化といいます。沸騰現象は、火力発電所のボイラで生じ、凝縮現象は復水器で生じます。これらは、工業的にも重要な伝熱現象です。ここでは、沸騰と凝縮の現象について説明します。
・沸騰の伝熱
図3に、加熱された金属線からの沸騰の様子を示します。加熱量が比較的小さいときは、図3(a)に示すように、気泡は金属線表面から1つずつ独立して発生します。これを核沸騰といい、気泡は表面の小さな傷などが核となって発生します。加熱量を大きくしていくと、図3(b)に示すように、気泡は合体し、金属線は気泡で覆われます。これを膜沸騰といい、金属線は蒸気中に置かれた状態になるため赤熱します。
図4は、この沸騰現象をグラフで示したものです。縦軸は金属線から水への伝熱量Q、横軸は金属線と水の温度差(TW-TS)です。
加熱量が小さいときは、点a→cで核沸騰となります。点cはバーンアウト点といい、金属は赤熱して溶け、切断してしまいます。そのためバーンアウトする加熱量は、工業的にも重要な値となります。白金線など熱に強い金属を用いてさらに加熱すると、点dに移行し膜沸騰になります。逆に、点eから加熱量を減少すると、点d→f→bへと移行します。このように加熱量を増減するとグラフの経路は異なり、ヒステリシス現象となります。このような沸騰の特性を表した図4のグラフを、沸騰曲線といいます。
・凝縮の伝熱
図5に、蒸気中に冷却管を水平に設置したときの凝縮の様子を示します。凝縮現象は、図5(a)に示す滴状凝縮と、図5(b)に示す膜状凝縮とに分けられます。
図5(a)では、蒸気は冷却面上で冷却され、液滴となって凝縮します。この滴状凝縮は、凝縮量が比較的少ない場合や、冷却面が撥水性のときに生じます。図5(b)では、凝縮液は連続した膜状となって流れます。この膜状凝縮は、清浄な冷却面や表面張力の小さい液体で生じます。
滴状凝縮では、凝縮した液滴は流下して常に新しい伝熱面を露出させるため、熱伝達率は膜状凝縮の数十倍になります。一般的に、最初は滴状凝縮が生じていても、長期間凝縮させると冷却面は洗われ、清浄になり、いずれは膜状凝縮になります。そのため、工業的には膜状凝縮の熱伝達率を用います。
3. 熱交換器の伝熱
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 熱エネルギーを動力に変換する方法
- 第2回 内燃機関のサイクル
- 第3回 蒸気タービンのサイクル
- 第4回 冷凍機・ヒートポンプのサイクル
- 第5回 伝熱現象の基本1
- 第6回 伝熱現象の基本2