蒸気タービンのサイクル|熱工学の基礎知識3

熱工学の基礎知識

著者:信州大学 名誉教授 平田 哲夫

前回は、ピストン式内燃機関とガスタービンのサイクルについて説明しました。今回は、蒸気タービンのサイクルを取り上げます。火力発電所や原子力発電所では、化石燃料の燃焼熱や核燃料の核分裂反応熱により水を蒸発させ、蒸気タービンを駆動します。タービンを回した後の蒸気はそのまま捨てることはせず、冷却して水に戻し、再び加熱して水蒸気となり、サイクルを形成します。本稿では、水の蒸発特性、火力発電所の機器構成、および蒸気タービンのサイクルなどを紹介します。

第3回「蒸気タービンのサイクル」を解説していきます。

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1. 蒸気の一般的性質

図1 は、大気圧(0.1013MPa)の下での水の蒸発過程を示しています。図中には圧力p、温度T、比容積v の値も示します。ここで比容積とは、水(または水蒸気)1kg あたりの容積です。

水の等圧蒸発過程
図1:水の等圧蒸発過程(引用:平田哲夫、他2名、例題でわかる工業熱力学(第2版)、森北出版、2019 年、P.95)

大気圧下の水(圧縮水という)を加熱すると(図1(a))、温度は上昇して100℃になります(図1(b))。さらに加熱しても、水と蒸気は共存した状態になり温度は100℃で変わりません。これを、その圧力に対する飽和温度といいます。飽和温度にある水を飽和水、それより低い温度の水を圧縮水といいます。飽和水をさらに加熱すると、図1(c) に示すように水の一部は蒸発し、水と蒸気は共存した状態になります。このような状態の蒸気を、湿り蒸気といいます。湿り蒸気の加熱を続けると、図1(d) のように、飽和水は全て蒸発し終えた状態になります。この状態の蒸気には、水分(飽和水)は含まれていないので、乾き飽和蒸気といいます。さらに加熱すると、図1(e)に示すように、蒸気の温度は上昇し、比容積も増加します。この状態の蒸気を、過熱蒸気といいます。

蒸気タービンで発電する場合は、水を加熱して蒸気にする過程と、タービンで仕事をした後の蒸気を凝縮(凝結ともいう)して水に戻す過程とを組み合わせて、サイクルを形成します。そのサイクルを図示するためには、蒸気の状態をp-V 線図に表す必要があります。

2. 蒸気のp-V 線図

図1 の蒸発過程は等圧過程のため、p-V 線図では水平線で表し、図2に示すp=0.1013MPa における点線のa-b-c-d-e で示されます。他のさまざまな圧力においても同様に蒸発過程を調べ、飽和水である点b と乾き飽和蒸気である点d をそれぞれ結ぶと、図2 に示す蒸気線図となります。点b を結んだ線を飽和液線、点d を結んだ線を乾き飽和蒸気線といいます。

水と蒸気の状態を表すp-V線図
図2:水と蒸気の状態を表すp-V線図

飽和液線の左側は圧縮水の領域、乾き飽和蒸気線の右側は過熱蒸気、それらに挟まれた部分は湿り蒸気の領域です。蒸気タービン発電における水の状態変化は、このp-V 線図に表示して検討することになります。

なお、飽和液線と乾き飽和蒸気線の交点を、臨界点といいます。一般的に、ガスの液化を行う場合、ガスの温度が臨界温度よりも高ければ液化しません。空気を液化するには-140.7℃、ヘリウムを液化するには-267.9℃以下に冷却する必要があります。臨界点の値はその意味においても重要です。

3. 火力発電所の機器構成

4. 蒸気タービンのサイクル

5. 蒸気タービンサイクルの効率向上法

6. 核分裂反応と原子炉

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 熱エネルギーを動力に変換する方法
  • 第2回 内燃機関のサイクル
  • 第3回 蒸気タービンのサイクル
  • 第4回 冷凍機・ヒートポンプのサイクル
  • 第5回 伝熱現象の基本1
  • 第6回 伝熱現象の基本2

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