内燃機関のサイクル|熱工学の基礎知識2

熱工学の基礎知識

著者:信州大学 名誉教授 平田 哲夫

前回は、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する熱機関の原理を説明しました。今回は、ピストン式内燃機関とガスタービンのサイクルを解説します。熱エネルギーを仕事に変換して、動力を生み出す装置を、熱機関といいます。熱機関は、外燃機関と内燃機関に分類されます。外燃機関とは、機関の外部から熱を加えて作動流体を加熱するものを指します。一方、内燃機関は、自動車のエンジンのように機関の内部で燃料を燃焼させ、作動流体を加熱するものを指します。本稿では、内燃機関の動作原理やサイクルについて取り上げます。

第2回「内燃機関のサイクル」を解説していきます。

基礎知識DL

1. ピストン式内燃機関の動作原理

自動車などのエンジンは、ピストンとシリンダなどから構成されます。図1に、ガソリンエンジンの構造を示します。ピストンは、上死点と下死点の間を往復運動し、クランク機構を用いて回転運動に変えます。上死点とは、ピストンが最も左に移動し、ガスが最も圧縮された状態の点をいいます。下死点とは、ピストンが最も右に移動し、ガスが最も膨張した状態の点をいいます。

吸気弁と排気弁、および点火プラグなどは、シリンダ頭部に設置されています。吸気弁は、ガソリンと空気の混合気をシリンダ内へ導きます。点火プラグは、圧縮された混合気に電気火花で着火します。このとき混合気は爆発的に燃焼し、その燃焼ガスはピストンを押し出して動力を生み出した後、排気弁を通って外部へ排出されます。

ピストン式内燃機関の構造
図1:ピストン式内燃機関の構造

内燃機関は、吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気の行程を繰り返します。図2に、4サイクルガソリンエンジンの動作を示します。ここでいう4サイクルとは、ピストンの上死点から下死点(または下死点から上死点)の動作を1つのサイクル(行程)として、4つの行程から構成されるものをいい、2往復に1回の燃焼を行います。

4サイクルガソリンエンジンの動作原理
図2:4サイクルガソリンエンジンの動作原理(引用:平田哲夫、他2名、例題でわかる工業熱力学(第2 版)、森北出版、2019 年、P.31)

4サイクルガソリンエンジン動作原理を、図2の(1)~(4)を用いて説明します。

(1) 吸気行程
ピストンは上死点から下死点に移動し、空気とガソリンの混合気を吸気弁から吸入します。このとき排気弁は閉じています。

(2) 圧縮行程
ピストンは下死点から上死点に移動し、吸入した混合気を圧縮します。このとき吸気弁と排気弁は閉じています。

(3) 燃焼・膨張行程
圧縮された混合気に、点火プラグで着火します。そうすると混合気は爆発的に燃焼し、シリンダ内の圧力と温度は急激に上昇します。燃焼ガスはこのとき発生する高圧力により、ピストンを上死点から下死点に押し出し、仕事(動力)を外部へ生み出します。このとき吸気弁と排気弁は閉じています。

(4) 排気行程
燃焼したガスは再び燃えることはないので、ピストンは下死点から上死点に移動して、排気弁を開いて外部へ放出します。このとき吸気弁は閉じています。

内燃機関の動作は、(1)→(2)→(3)→(4)を連続的に繰り返します。仕事を生み出すのは(3)の膨張行程だけです。その他の行程で必要となる仕事は、(3)の膨張行程で生み出された仕事の一部を用います。

2. ピストン式内燃機関のサイクル

前項で説明したガソリンエンジンの動作を、p-V線図に表します(図3)。なお、図2と図3(a)の4つの行程はそれぞれ対応しています。

ガソリンエンジンのサイクル
図3:ガソリンエンジンのサイクル(参考:インジケーター線図、2020年)

以下に、図3(a)のa~fにおける行程の状態を説明します。

(1) 吸気行程(状態a→b)
ピストンは混合気を吸入し、このとき吸気弁などは流動抵抗となります。そのためピストン内の圧力は少し低下し、下に凸の状態変化となります。

(2) 圧縮行程(状態b→c)
吸入した混合気を圧縮するためにピストンは上死点に移動します。それに伴い、シリンダ内の圧力は上昇します。

(3) 燃焼・膨張行程(状態c→d→e)
混合気に点火すると爆発的に燃焼するため、シリンダ内の圧力は急上昇します。ここで熱量QHを受熱します。高圧になった燃焼ガスはピストンを押し出して膨張します。ピストンは下死点に移動して、シリンダ内の圧力は低下します。

(4) 排気行程(状態e→f)
排気弁を開いて燃焼ガスを外部へ排出します。ここで熱量QLを放熱します。

設計するときは、エンジンの効率や出力などを理論的に計算することが必要です。その際、図3(a)の実際のサイクルを、前回述べた等圧変化、等容変化、および断熱変化などに置き換えて理想化します。以下にその方法を説明します。

図3(b)は、理想化されたサイクルを示します。状態1→2と状態3→4の行程では、ピストンは速く動きます。そのため、外部との熱の授受はなく、断熱変化と考えます。また、状態2→3の行程では、ピストンは上死点の位置にあり、燃焼は一瞬で起こるため等容変化と考えます。状態4→1の排気と状態0→1の吸気の行程は、ピストンは下死点の位置にあり、単に燃焼ガスの熱量を外部へ放熱したと考え、状態4→1の等容変化に置き換えます。

このように理想化されたサイクルでは、受熱量QHや放熱量QLなどを理論的に計算できるため、生み出す仕事W(=QH-QL)や熱効率などを求められます。図3(b)は、火花点火式ピストンエンジンの代表的なサイクルで、これをオットーサイクルといいます。熱機関については、拙著「例題でわかる工業熱力学(第2版)」(平田哲夫、他2名、森北出版、2020年)にて詳しく説明しています。

3. ピストン式内燃機関の効率向上法

4. ガスタービンの動作原理

5. ガスタービンのサイクル

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 熱エネルギーを動力に変換する方法
  • 第2回 内燃機関のサイクル
  • 第3回 蒸気タービンのサイクル
  • 第4回 冷凍機・ヒートポンプのサイクル
  • 第5回 伝熱現象の基本1
  • 第6回 伝熱現象の基本2

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