前回は、5文型の主役となる名詞で情報を伝える方法について説明しました。英語は厳格な5文型からできているため、客観的な記述の側面のみが強調されがちです。今回は、ここに微妙なニュアンスを与える助動詞と時制について解説していきます。
第5回「微妙なニュアンスを伝える表現」を解説していきます。
第5回もくじ
1. 確信の強さと強制力を伝える助動詞
技術文書に多い書き手の確信の強さと、仕様書や契約書での義務の強さを示す使い方について説明します。
・確信の強さ
書き手の確信の強さは、助動詞がない場合が最も強く、must > will > can > should > would > could > may > mightの順になります。
This device reduces the cost.(この装置はコストを減らす。)は、書き手が100%確信していることを示しています。現在形は、書き手が真実であると考える場合に用いるからです。助動詞を入れた場合のそれぞれのニュアンスの違いを、日本語で確認しましょう(図1)。
最も強い確信
This device
must
reduce the cost.
この装置はコストを減らす
に違いない
。
ほぼ100%の予測
This device
will
reduce the cost.
この装置はコストを減らす
だろう
。
可能性と能力:意味の違いは文脈から判断
This device
can
reduce the cost.
この装置はコストを減らす
可能性がある/ことができる
。
mustより弱い確信や予想
This device
should
reduce the cost.
この装置はコストを減らす
だろう
。
控えめな予想
This device
would
reduce the cost.
この装置
なら
コストを減らす
だろう
。
控えめな可能性
This device
could
reduce the cost.
この装置
なら
コストを減らす
可能性がある
。
約50%の可能性
This device
may
reduce the cost.
この装置はコストを減らす
可能性がある
。
最も弱い可能性
This device
might
reduce the cost.
この装置はコストを減らす
可能性がある
。
would、couldは、それぞれwill、canの過去形としても使いますが、過去形によって現実との距離感を示すため、上記の例文のように、ある条件下という仮定的なニュアンスを示します。また、控えめであるため丁寧表現にも使われます。
I
would
appreciate it if you
could
reply as soon as possible.
早急にお返事いただけると幸いです。
should は、mustの「違いない」に対し、多少の不確定要素を表すのに適しているため、ビジネスの数値目標で「見込み」を示すのにも使われます。
The total cost
should
be $1,000 or more.
総額は1,000ドル以上になる見込みです。
・義務の強さ
助動詞は、仕様書などの契約当事者間の権利や義務の法的強制力を示すためにも使われます。
shall/must
は、最も強い強制力を示し、表示された内容を履行しない場合は契約違反となり、損害賠償や、契約解除の対象となることを表明しています。最近は堅苦しいshallよりmustが使われることが多くなっています。
For piping designs, ASME Standards
shall/must
be used.
配管設計は、ASME規格を用いるものとする。
will
にはshall/mustのような法的拘束力はありません。発注者や書き手の意図を表します。
The Contractor
will
submit three copies of specifications to the owner.
請負業者は、発注者に仕様書の写し3 部を提出すること。
shouldは、mustより弱い圧力を相手に与えます。mustが「~ねばらない」といった命令調になるところを、should により、相手を考慮した少し控えめな表現で、助言や軽い命令を伝えます。
The machine room
should
keep the humidity of 50%.
機械室は50%の湿度を保つようにしてください。
may は許可と可能性を示し、強制力はありません。
許可
Power cables and control cables
may
be in common conduits.
動力配線とコントロール配線を同一の電線管に入れてもよい。
可能性
Our QA
may
request a residential engineer on site.
当社品質保証部は、常駐エンジニア1名を現場に要求する場合がある。
否定文の
may not
は「~してはならない」として法的文書でよく用いられます。
You may not infringe the copyright, trademark or other proprietary rights of any party.
いかなる第3者の著作権、商標権、またはその他所有権を侵害してはならない。
2. 時制は脳内事実を明確にする
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 技術英語・工業英語の3つのCとは
- 第2回 主語と動詞は文の要
- 第3回 冠詞の攻略
- 第4回 情報は名詞で伝える
- 第5回 微妙なニュアンスを伝える表現
- 第6回 ロジカルに伝える