前回は、チームマネジメントのターゲットについて解説しました。チームビルディングには、チーム目標の達成を推進するチームリーダーシップが発揮されることが理想です。その理想に近づくには、一人ひとりがリーダーシップを身に付けていくことが大切です。チームリーダーを任されたとき、どのように考え、振る舞えば、適切なチームマネジメントを実現するリーダーシップを発揮できるのでしょうか? 最終回の今回は、チームマネジメントを推進するリーダーシップについて説明していきます。
第6回「チームマネジメントとリーダーシップ」を解説していきます。
1. 対話と協調に基づくリーダーシップ
リーダーシップと聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?万事を即断即決し、部下に指示・命令を下すリーダーの姿を思い浮かべるかもしれません。確かに、頼りになるリーダー像を尋ねられれば、公平で的確な判断を行い、それに基づき、各メンバーになすべきことを伝え、実行させることで、チーム全体の目標達成と利益獲得を実現する人物をイメージするでしょう。
こうしたリーダー像は、古くから続いてきた組織管理観を反映するものといえます。しかし、単独で判断し、指示命令するスタイルのリーダーシップは、今日の社会でも有効であるといえるでしょうか?やや時代遅れの印象を持つ人も少なくないでしょう。
図1に、組織管理観の歴史的な推移を簡潔に説明したモデル図を示します。
組織を管理するために、かつては「職階制と規則に基づく権力による支配」が中心的役割を果たしていました。これは、職階制によって地位の上下関係、役割関係とそれに基づく権限を規定し、また各種の規則によって、組織成員の考えと行動を画一的に管理しようとする考え方であるといえます。
ところが、組織を構成するのはさまざまな個性を持った複数の人たちです。仕事の進め方をめぐって、組織を構成するメンバー間で意見が対立することは、しばしば起こります。そんなとき、自分の意見を十分に聞いてもらうことなく、職階制に基づく権力の強弱や、役割を規定する規則に基づいて決定がなされていくことは、メンバーにとって納得のいく結論の出し方とは言い難いものです。
その上、自分の意見とは異なる方針を無理強いされると、やる気を出して仕事に臨むことも難しくなります。そんな状態が長く続くと、組織の活力は削がれていきます。
今日では、「職階制と規則に基づく権力による支配」だけでなく、「メンバーと対話を行って、意見の対立や利害の葛藤を調整しながら、相互協調的にマネジメントを行っていくこと」の重要性が認識されるようになっています。強い権力を持つ立場の人間にとっては、自分の思い通りに組織を動かすことの方が楽ですし、時間もかかりません。ある意味で効率的といえるでしょう。
しかし、その強い権力を持つ立場の人間の判断が不適切であれば、組織全体が危機に瀕することになります。また、メンバーは、常に権力者の指示命令を待つようになり、組織は自律性を失い、環境の変化に適応する力を失うことにつながります。
チームマネジメントを実践するとき、メンバーがやる気を失い、常に指示待ちの姿勢で活動するのでは、チームの目標達成はおぼつかないことになります。メンバー一人ひとりは、自分の意見を持っています。チームは、その意見を積極的に発言できる場である必要があり、そのことが、メンバーの前向きなやる気を引き出すことにつながります。
したがって、チームマネジメントにおけるリーダーシップは、メンバーの意見に耳を傾けるところからスタートすることが基本です。また、意見の対立が発生する場合には、当事者たちの考えを聞き、メンバーにも伝えるなど、透明性を保ちつつ公平に意見交換を行い、調整を図る必要があります。
2. メンバー全員のリーダーシップを引き出す
リーダーシップは、リーダーだけに求められるものなのでしょうか? リーダーシップとは、メンバーが組織やチームの目標達成を促進するように発揮する影響力を意味する概念です。もちろん、リーダーには是非とも発揮してもらいたい影響力です。しかし、メンバー一人ひとりも発揮できるものであり、発揮してもらうべきものなのです。
チームマネジメントにおいては、メンバー全員のリーダーシップを引き出すことが大切です。メンバー一人ひとりが、前向きにチームの目標達成を目指して考え、行動する体制をとることができれば、メンバーはモチベーションを高く役割を遂行します。また、積極的に自分の意見を発言して、他のメンバーと議論する姿勢を醸成し、心理的安全性の構築が期待できます。そのことは、チームが自律的に、また創造的に自己変革していく力を身に付けることにつながり、環境の変化に的確に適応していく持続可能性を高めることを意味します。
チームも、組織としての特性を備えた集団です。ただし、その規模は3 ~ 20 人程の、小さなものであることがほとんどです。メンバー数が多く、規模が大きい集団では、その目標は余りに遠く、大きく感じられ、自分の役割が果たす貢献を実感するのは難しいものです。しかし、上記のような小さな規模のチームであれば、チームの目標達成と自分の役割とは結びつけやすく、また、捉えやすくなります。
以前に紹介したように、メンバー全員がリーダーシップを発揮することは、チームリーダーシップと呼ばれます。チームの目標達成と自分の役割とを結びつける視点を持つことにより、各メンバーがチーム目標の達成を目指して、自分の役割を積極的に果たすことができます。また、互いに周囲のメンバーに促進的な影響を及ぼすことができれば、チームリーダーシップが実現されたチームと認めることができるでしょう。
一方で、リーダーが果たすべき役割を明確に規定して、それをメンバー全員で分担しようとする考え方もあります。それは、共有リーダーシップと呼ばれます。リーダーが果たすべき役割を明確に規定できれば、それは、有効なアプローチでしょう。しかし、実際には、リーダーの果たすべき役割は多種多様にあり、また状況によって新たに出現することもあり、混乱を招く恐れもあります。
役割分担の線引きを杓子定規に決めてしまうよりも、「誰かがやらなければならない仕事ならば、自分がやろう」という気持ちをメンバーみんなが持ち、チーム活動に臨む体制を整えていくことの方が、実用的なチームマネジメントにつながるといえるでしょう。
3. 「 成果へのこだわり」と「 和気あいあい」の両立に向かって
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 チームとは何か
- 第2回 チームワークの科学
- 第3回 チームビルディング(チーム作り)に大切なこと
- 第4回 チームが陥りやすい心理的罠
- 第5回 チームマネジメントのターゲット
- 第6回 チームマネジメントとリーダーシップ