前回は、チーム活動の内発的障害を解説しました。チームマネジメントは、チームの目標を達成し、成果を挙げることを目指した取り組みです。しかし、結果ばかりを気にした働きかけでは、自律的にチーム活動に取り組む、持続可能性の高いチームを作り上げることは難しくなります。目標を達成し、成果を挙げるチーム力を育むには、どのような働きかけによるチームマネジメントが有効なのでしょうか。今回は、チームマネジメントが狙いとすべきターゲットについて考えます。
第5回「チームマネジメントのターゲット」を解説していきます。
1. チームの成果・有効性を支えるチームの成果・有効性を支えるメンテナンスプロセス
チームマネジメント活動の全体像は、氷山モデルで表すことができます(図1)。このモデルを参照しながら、説明していきます。
チームで活動するとき、真っ先に明らかにしたいことは目標です。その目標を達成するには、どのような課題や業務を遂行する必要があるかを明確にすることは、チーム活動の出発点といえるでしょう。これらの目標や課題、業務、仕事の内容は、コンテントと呼ばれます。すなわち、チームマネジメントの最終目標は、コンテントを的確に遂行することであるといえます。
このとき、コンテントの遂行をどのような手順で進めていくのか、適切な計画を立てることも重要です。まずは、達成すべき目標について、第1 段階、第2 段階、第3 段階と、段階が進むごとに最終目的の達成に近づくように設計します。そして、各段階の目標を達成するための手続きを明確にして、それをチームメンバーで共有する取り組みを実施します。さらには、目標達成の予定期日に向けて、各段階を完了する時間計画を立て、それを守って業務が進むように働きかけていきます。これら一連の活動は、タスクプロセスと呼ばれます。リーダーをはじめとして、メンバー各自が、チーム目標の達成を促進するように働きかける影響力、すなわち課題達成リーダーシップを発揮することが期待されます。
コンテントを成し遂げるためには、適切なタスクプロセスの実践が必要です。つまり、適切なタスクプロセスが、コンテントの実現の基盤となります。では、適切なタスクプロセスは、チームを形成すればすぐに実現できるものでしょうか? タスクプロセスでは、各メンバーが自分の責務を果たすだけでなく、他のメンバーと協調し、連携して進めることが必要になります。そうしたチームワーク行動は、チームを組んだからといって、自ずとできるようになるとは限りません。
実際には、チームワーク行動を的確に実践することは、容易ではありません。メンバーがみんな、やる気を持って積極的にチーム活動に参加することに加え、円満な対人関係や、信頼に基づく人間関係を構築し、維持することも重要です。さらには、自由闊達(かったつ)に意見交換し合えるチームの雰囲気や、風土・文化を育み、継承することも大切な取り組みになります。これらの要素を育み、強化していく取り組みは、メンテナンスプロセスと呼ばれます。充実したメンテナンスプロセスがあってこそ、適切なタスクプロセスが実現できるのです。
このような、コンテント、タスクプロセス、メンテナンスプロセスの関係性は、図1 に示した氷山モデルで確認すると分かりやすいでしょう。チームマネジメントに携わる者にとって、コンテント、およびタスクプロセスは、外部にいても目に見える形で認知できるのに対して、メンテナンスプロセスは外部からは見えにくく、チーム活動に参加して初めて実感したり、目の当たりにしたりするものといえます。
最深部にあるメンタルモデルは、長時間かけて、メンバーたちが無自覚のうちに共有できるようになった価値観や信念に該当します。そのチームの、常識といえるものです。どんなメンタルモデルが形成されているかによって、メンテナンスプロセスにも影響が及びます。
メンタルモデルは、普段は明確に表出されることは少なく、緊急事態のような特別なときに、明確な根拠もなく、メンバーが行う判断や行動に表れます。したがって、最深部に位置するとはいえ、これに働きかけることは容易ではありません。チームマネジメントによって、より優れたものになるように働きかけるべき最重要ターゲットは、メンテナンスプロセスであるといえるでしょう。
2. 経験と知恵を共有するチーム学習
メンテナンスプロセスは、チーム活動を通して形作られていきます。信頼に基づく人間関係や、チームの雰囲気、風土は、チームの目標達成を目指すメンバーたちが相互に作用し合い、さまざまな経験を重ねることで醸成されていきます。その過程では、考え方や価値観、判断の基準、みんなで守るべき規範などが、互いの食い違いを調整しながら、共有されていきます(図2)。
各メンバーは、成長の過程でさまざまな経験を通して、自分なりの価値観や信念、知識や知恵を形成し、保持するようになります。それぞれに個性があるわけです。もちろん、教育や社会経験を通して獲得したメンタルモデルの中には、チームを形成した初期段階から共有しているものもあります。
同じ国や地域で生まれ育つと、このメンタルモデルの共有部分は一定程度大きく、逆に、異なる国や地域で生まれ育った者同士の共有部分は非常に小さいと考えられます。いずれにしても、チームの形成初期段階では、メンバーのメンタルモデルは多様に拡散していて、まとまりが弱いと考えた方がよいでしょう。
しかし、チーム活動に取り組んでいくことによって、共有経験が蓄積されます。この取り組みは、チーム学習と呼ぶことができます。メンバーみんなが、チーム活動で共通の経験を積み重ねる中で、さまざまな知識や知恵を身に付けます。学習しているのです。その結果、メンバーみんなで活動を振り返るときに、一緒の場面、光景を思い出しながら、話ができるようになります。また、チームの目標についても、最初は、各自が自分なりの捉え方をしていたところ、チーム活動を重ねる中で、みんなで共通した捉え方へと精緻化していくことができるようになります。
チーム活動が長期にわたると、メンタルモデルの共有が進みます。そして、あうんの呼吸でコミュニケーションを交わすことや、他のメンバーのしぐさや様子を垣間見ただけで、そのメンバーが考えていることを推測できるようになります。このように、共有化が進んだメンタルモデルは、チームメンタルモデルと呼ばれます。メンタルモデルの共有を図ることは、信頼に基づく円滑な意思疎通を実現するチームを作り上げる上で、大切な取り組みとなります。
3. 環境に適応する自己革新性
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 チームとは何か
- 第2回 チームワークの科学
- 第3回 チームビルディング(チーム作り)に大切なこと
- 第4回 チームが陥りやすい心理的罠
- 第5回 チームマネジメントのターゲット
- 第6回 チームマネジメントとリーダーシップ