チームが陥りやすい心理的罠|チームマネジメントの基礎知識4

チームマネジメントの基礎知識

著者:九州大学 大学院 人間環境学研究院 教授 山口 裕幸

前回は、チームビルディングにおいて大切な基本事項を紹介しました。実際にチームビルディングを行ってみると、さまざまな障害に直面するものです。環境の変化による外発的な障害だけでなく、チーム活動を継続する過程で表面化する内発的な障害もあります。外発的な障害は予見が難しい場合もありますが、内発的な障害はあらかじめ知っておけばスムーズに対応できます。そこで今回は、チーム活動の内発的な障害と、対処の仕方について解説します。

第4回「チームが陥りやすい心理的罠」を解説していきます。

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1. 社会的手抜きとサッカー効果

個人で課題遂行に取り組むのと、仲間と一緒に集団で取り組むのでは、どちらの方がより生産性が高くなるでしょうか?単純作業や慣れ親しんだ課題であれば、仲間と一緒に集団で取り組んだ方が生産性は上がります。しかし、複雑に考えて行う作業や、初めての課題、不慣れな課題の場合には、個人で取り組む方が生産性は高くなります。

チームで活動するとき、メンバーは他のメンバーから多様な影響を受けながら、作業や課題に取り組みます。例えば、単純な作業に集団で取り組む場合、他のメンバーの存在が生理的な興奮(アロウザル)を喚起し、活動を促進して生産性を高めるといわれています。

その一方で、一緒に頑張っている他のメンバーの存在を認知すると、なんとなくホッとして緊張が緩んでしまいます。責任感も少し薄くなり、単独で課題を遂行するときの自分の精一杯のパフォーマンスには及ばない結果になりがちです。こうした現象は「社会的手抜き」と呼ばれています。決して意図的に精一杯頑張らないわけではなく、ついつい気が緩んでしまうのです。これは、チーム活動をするときには誰もがよく陥ってしまう状態です。あらかじめ、そのようなものだと思っておくのがよいでしょう。

ただし、チーム活動において意図的に怠ける人がいることには、注意が必要です。「他のメンバーが頑張っているから自分は適当にやっておけばいいだろう」と考え、自分は怠けながらも、チームとして得られる賞賛や利益はしっかり享受します。こうした意図的に怠ける行為は「フリーライディング(ただ乗り)」と呼ばれます。

現象としては、フリーライディングも社会的手抜きと類似した形で現れるため、その見極めは難しくなります。しかし、フリーライディングは、きちんと見極めて取り締まることが大切です。フリーライディングが見逃されてばかりいると、真面目に一生懸命頑張っているメンバーは不公平 感を覚え、真面目に頑張ることが馬鹿らしく思えてしまいます。その結果、真面目だったメンバーもフリーライディングをする側に回ってしまいます。それが続くと、チームはフリーライダーばかりになって、きちんとした成果を挙げることができなくなってしまいます。

一人でもフリーライディングをしているメンバーを見かけたら、怠けないように注意しましょう。チーム全体でまとまっていくために一人ひとりの頑張りが重要であることを、あらためて説明することが大切です。最初は一人でも、フリーライディングは瞬く間に周囲のメンバーを巻き込み、悪影響を及ぼして、チームを駄目にしてしまいます。そうしたフリーライディングがもたらす悪影響は「サッカー効果」と呼ばれます。サッカー(Sucker)は「駄目にしてしまう人」という意味で、スポーツのサッカーとは異なります。また、腐ったリンゴ効果(Bad AppleEffect)と表現されることもあります。

みんなで頑張ることは、チーム活動の精神的支柱です。社会的手抜きなのか、フリーライディングなのかを見極めるためにも、チームで活動するときは、自分の仕事にだけ集中するのではなく、周囲のメンバーの仕事ぶりに注目しながら見守る「モニタリング」が大切です。

2. チームエラーと権威勾配

ミスやエラーを犯した本人がそれに気付かない場合、周囲のメンバーが指摘し、訂正・修正を行えば、チームとしてのミスやエラーにつながることはありません。しかし、周囲のメンバーが気付かない、気付いても指摘できない、正しく訂正・修正できない、といったケースも多々あります。

図1に、チームエラーについて説明した図を示します。

チームエラーの概念図
図1:チームエラーの概念図(参考:Sasou K.&Reason J.、Team errors: Defini-tion and taxonomy、Reliability Engineer-ing& System Safety、1999年、P.1~ P.9)

特に、気付いても指摘できない「指摘の失敗」は、チームエラーの削減に取り組む際、大きな課題となります。他のメンバーのミスやエラーに気付いて指摘すると、相手が気分を害してしまい、場合によっては人間関係が悪化するのではないかという心配が、この「指摘の失敗」と深く関係しています。

相手が先輩、あるいは上司であったり、自分の専門とは異なる分野の専門家であったりすると、この心配は恐怖といってもよいほど強いものになります。相手の方が強い権力や高い権威を持っている場合、ミスやエラーの指摘は、その権力や権威への挑戦・反抗と受け取られるリスクがあるからです。メンバーの関係性に権威勾配がある場合、気付いても指摘できないチームエラーは、さらに発生しやすくなるでしょう。

どんなチームにも、先輩と後輩の関係、上司と部下の関係、専門性の異なるメンバーの存在は避けがたくあるものです。権威勾配によるチームエラーの誘発を抑えるには、前回紹介した「心理的安全性」の醸成が重要です。心理的安全性が備わるチームにしていくには、その前提として、失敗は学習するチャンスだと考える認知の枠組みを共有していくことが大切です。

誰でも失敗はしたくありませんし、できれば他のメンバーに知られたくありません。ときには自分の失敗を隠してしまうことさえあります。しかし、一人の失敗を率直にみんなに報告すれば、他のメンバーはミスやエラーが発生する可能性を知ることができます。自分も失敗するかもしれないと考え、他者の失敗から学ぶことができるのです。メンバーが互いに失敗を隠さず報告し合えるチーム規範・風土を醸成することで、誰かのミスやエラーに気付いたメンバーは気兼ねなくそれを指摘して、互いに注意していこうと前向きに考えるようになります。

3. 役割や方針の食い違いから生まれる対立

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 チームとは何か
  • 第2回 チームワークの科学
  • 第3回 チームビルディング(チーム作り)に大切なこと
  • 第4回 チームが陥りやすい心理的罠
  • 第5回 チームマネジメントのターゲット
  • 第6回 チームマネジメントとリーダーシップ

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