前回は、チームが備えるべき条件や、ゴールやミッションの重要性、チームマネジメントの重要課題を紹介しました。チームマネジメントの最終目的は、高度なチームパフォーマンスを実現し、チームを目標達成に導くことです。そのためには、メンバー全員で協力し合うチームワークが大切になります。しかし、チームワークが十分に発揮されるようにマネジメントをすることは容易ではありません。そもそもチームワークとは、いかなるものなのでしょうか。また、どのように作り上げていけばよいのでしょうか。
第2回「チームワークの科学」を解説していきます。
1. チームワークとは何か
チームワークは、元々の言葉の定義では、単に「チームで行う仕事」を意味しています。しかし、私たちの社会生活の中では、もっと広い意味で使われることの方が多くなっています。チームで効率良く仕事をするには、メンバーがチームの目標を正しく理解し、その達成に向けて的確な連携や判断をしながら行動することがとても大切です。
このプロセスが順調に進むと、当然のことながら「チームで行う仕事」の出来映えは良くなります。この現象を踏まえて、メンバー同士が的確で協調的な判断・行動を実践している状態を「チームワークが良い」と表現するようになったのです。このようにして、チームワークは、チームの活動プロセスにおける、メンバー同士の円滑な連携や助け合いを意味する概念になっています。
メンバー同士が円滑に連携し、助け合いながらチームとしてまとまりのある仕事を行うために、忘れてはならないことがあります。それは、チーム全体で心理的に調和が取れているか、ということです。
具体的に考えてみましょう。良好なチームワークを発揮するには、チーム目標の達成に向けて、メンバーが強い動機づけ( やる気)を持っていることが大事です。しかし、やる気はあっても、メンバー各自がバラバラに行動したのでは、良いチームワークを発揮しているとはいえません。
直面する状況で互いに意見を出し合い、耳を傾け合って、チームとして統合された考え方を共有することも大事です。よくコミュニケーションを取り合い、互いの考え方や行動傾向を理解し合って、規律を守りながら調和的な判断や行動を実践することが、優れたチームワークの発揮につながります。
言うまでもなく、良好なチームワークを作り上げることは、チームマネジメントの最も重要な課題です。メンバーたちは、元々、異なる個性や能力を持っています。最初は考えや行動がバラついているのが当然です。しかし、チーム目標の達成を目指して互いを理解し合い、各自の違いを受け入れ合うことで、良好なチームワークを作り上げることが可能になります。では、チームワークはどのようにして醸成されていくのでしょうか。より具体的に説明していきましょう。
2. チームワークの醸成プロセス
チームワークの醸成には、何よりもコミュニケーションが大切です。
図1に、チームワークが醸成されていくプロセスを説明した理論図を示します。この図でも、コミュニケーションはチーム活動の全てのプロセスに影響を及ぼす形で描かれています。言ってみれば、コミュニケーションは、メンバーたちの考えや感情を伝え合って、チーム全体としてまとまりのある考え方や思いを形作る基盤です。人間の身体に例えると、血流に該当するものと考えてよいでしょう。
チームワーク良く仕事を進めようとするならば、メンバーたちは、まずは個人としての役割や責任を果たすことが大事です。しかし、それだけで終わるのではなく、チームとして目標を達成することを常に意識して、他のメンバーの様子やチーム全体の仕事の進み具合などを見守り、確認しながら、チーム活動に取り組む必要があります。この見守りが、図1の中心に位置する「モニタリング」です。
気が付いたことを伝え合う「フィードバック」を行いながら、うまく仕事が進んでいないメンバーがいれば、必要に応じて「支援 」を行います。そして、互いに仕事が円滑に進むように「相互調整」をしながら、チーム活動を進めていきます。ここまでは、チーム活動を実践するときの行動に注目したプロセスです。
チーム活動を繰り返し、これらの行動を実践していくことで、次第にメンバーが重視する価値観や決まり事が出来上がってきます。それは「チームの指向性」と呼ばれます。具体的には「このチームで活動するときは、時間厳守が最優先事項だ」とか、「このチームでは、メンバー全員が公平に仕事を負担することを大事にしている」といった認識です。どこかに明文化されていなくても、メンバー全員が共有している考え方や価値観、心構えなどがこれに該当します。
また、チーム目標の達成に向けて、メンバー全員が前向きに取り組むことを促進したり、やる気や元気が出るように励まし、活気づけ たりするような行動・姿勢・態度は「チーム・リーダーシップ」と呼ばれます。
リーダーシップというと、管理職やリーダー役の人が発揮すべきものと捉えがちです。しかし、チームの目標達成を促進するように働きかけることは、役割や立場に関係なく、どんなメンバーにも発揮してほしい影響力です。これがチーム・リーダーシップです。
「チームの指向性」と「チーム・リーダーシップ」は、醸成されるチームワークの、心構えに該当する特性であるといえます。モニタリングなどのチームワーク行動を繰り返し実践することで、メンバーたちがチームワークの心構えを身に付けていくと考えられます。つまり、コミュニケーションをよく取りながら、チームの目標達成に向けた行動を繰り返し実践することで、メンバーたちは、チーム全体で共有する価値観や規律などを学習していくのです。そして、チームワークという、チームの文化・風土とも呼ぶべき特性を醸成していきます。
3. チームワークを行動でとらえる
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 チームとは何か
- 第2回 チームワークの科学
- 第3回 チームビルディング(チーム作り)に大切なこと
- 第4回 チームが陥りやすい心理的罠
- 第5回 チームマネジメントのターゲット
- 第6回 チームマネジメントとリーダーシップ