前回は、回帰分析について説明しました。今回は、分散分析を解説します。第3回では、統計学では全体のばらつきを表すために、データを2乗して変動を求めることを説明しました。データは2乗するとばらつきが分解できます。データを2乗して計算する意味を考えましょう。
第7回「分散分析」を解説していきます。
1. 分散分析とは?
図1は、設備Xと設備Yで生産した部品Aの実測データからbの目標値との偏差を計算した結果です。なぜこのような偏差になったのか、その要因を調べましょう。
全体で目標値からどれだけの偏差があるかは、偏差の平均-0.086により求められます。偏差の要因を調べるには、目標値からの偏差を分解、目標値からの変動を分解、目標値からの変動を設備の変動と誤差変動に分解、の3つのステップがあります。それぞれ説明します。
・目標値からの偏差を分解
偏差の平均である-0.086は22個の偏差の共通データなので、各偏差からこの共通データを分ければ、dの各偏差の固有部分が発見できます。
例えば、設備X のNo.1では、bの目標値との偏差が0.1なのでdの固有部分は、0.186(0.1- (-0.086))になります。同様に、設備YのNo.1では、bが-0.2なのでdは、-0.114(-0.2-(-0.086))になります。
設備の違いは、設備別の目標値からの偏差の平均と、全体の偏差の平均との差で求められます。設備Xを使うことによる差は、設備Xの偏差の平均0.000と全体の平均の差-0.086で0.086(0.000-(-0.086))、設備Yを使うことによる差は、設備Yの偏差の平均-0.173と全体の平均の差-0.086で-0.087(-0.173-(-0.086))となります。
fのその他は、固有部分から設備の違いを引いた残りです。設備XのNo.1では、dの固有部分0.186からeの設備の違い0.086を引いて0.100、設備Y のNo.1では、dの-0.114 からe の‒0.087を引いて-0.027(-0.114-(-0.087))となります。図2は、目標値との偏差の要因の分解手順を整理したものです。
・目標値からの変動を分解
図3は、分解した目標値からの偏差と共通部分を2乗した一覧です。偏差の2乗で、変動の合計である全変動は0.930となり、記号S
T
で表します。ここで、2乗したデータ数を自由度と呼び、fで表します。S
T
は22個のデータを2乗しているので、自由度は22(f
T
=22)になります。
共通部分の2乗は、一般平均の変動と呼ばれSmで表します。Smは目標値からの偏差の平均を2乗して、データ数だけ合計したものです。一般平均の変動Smは偏差の合計の2乗をデータ数で割って求めるため、自由度は1でfm=1となります。
・目標値からの変動を設備の変動と誤差変動に分解
図4は、分解した目標値からの偏差の固有部分、設備の違い、その他を2乗した一覧です。設備の偏差を2乗した合計は、設備による変動S
A
の2つの式で求められます。
式2の分子は、偏差の合計の2乗、分母は偏差の合計を計算したデータ数になります。A設備とB設備の偏差の合計は、11個のデータを合計して求めたので、分母は11になります。
設備の変動の自由度f A がいくつか見てみましょう。式2より2乗の数は0 2 /11 と-1.90 2 /11 で2 つです。ここからSmを引きます。Smの自由度は1なので、f A =1となります。
その他の2 乗和は誤差変動Seと呼ばれ、Se=S T -Sm-S A =0.930-0.164-0.164=0.602と計算できます。誤差変動の自由度feは、fe=S T の自由度-Smの自由度-S A の自由度=22-1-1=20と計算できます。
Seを求める上式を整理すると、X設備とY設備全体での全変動、一般平均の変動、設備の変動、誤差変動は、X設備とY設備の全2乗和S T = 一般平均の変動Sm+ 設備の変動S A + 誤差変動Seで表すことができます。S T =Sm+S A +Seに数値を代入すると、0.930=0.164+0.164+0.602となります。
2. 分散分析表でばらつき計算をまとめる
分散分析表を用いることにより、ばらつきの要因別に分解し、その影響の強さを知ることができます。図5は、ばらつきの計算結果を分散分析表にまとめたものです。一番左の欄には、要因を記入し、2番目の欄は要因別のf(自由度)を記入します。3番目の欄は、要因別のS(変動)を記入し、次の欄は、変動÷自由度で要因別のV(分散)を計算します。その次の欄はS' (純変動)です。最後の欄はρ(寄与率)で、S' (純変動)との比率を記入します。
S'(純変動)とは、変動から自由度に比例した分の誤差分散を引いたものです。この設備全体の分散分析表は、22個のデータなので、目標値との差も22個あります。しかし、誤差変動の自由度は20で、目標値との差が20個しか含まれていません。残りの2個は、SmとS A の中に自由度分が含まれています。SmとS A の中から自由度の数だけVe(誤差分散)を引かなければ、本来の変動は求められません。S'(純変動)=S(変動)-f(自由度)×Ve(誤差分散)で求められます。
・分散分析表の見方と使い方
分散分析表では、寄与率に着目します。寄与率の値は、ばらつき(変動)に対する影響度を表しているので、この値が大きい場合、その要因は重要です。寄与率を見ると、一般平均が14.4%、設備が14.4%、誤差が71.2%になっています。1番大きいのは誤差の71.2%で、これは一般平均と設備の違い以外にも何か要因が存在していることを示しています。誤差の寄与率が大きいときは、データを層別したり、新たな要因を検討したりする必要があります。
3. 計算結果を検定するF値とは
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 統計とは
- 第2回 グラフの種類と活用
- 第3回 統計量の求め方
- 第4回 正規分布と管理図
- 第5回 相関分析
- 第6回 回帰分析
- 第7回 分散分析
- 第8回 実験計画法