前回は、統計量について説明しました。今回は、正規分布と管理図を解説します。私たちの周りには、平均値を中心に左右対称にデータが分布する例がたくさんあります。例えば、性別・年齢別に見た身長・胸囲・コレステロール値、工場で生産される製品の長さ・重さなどです。まずは、正規分布曲線とは何かから見ていきましょう。
第4回「正規分布と管理図」を解説していきます。
第4回もくじ
1. 正規分布曲線とは
正規分布は、英語でNormal distributionといい、平均値付近に集積して、平均値から離れるにしたがって少なくなるデータ分布のことです。グラフで表すと、中心が一つで左右対称な釣り鐘型の分布となります。この分布は、発見者の名前を取って、ガウス分布と呼ばれることもあります。正規分布は、自然科学、社会科学のさまざまな場面で用いられます。
図1 の左のグラフは、女性の足のサイズと人数のヒストグラムです。女性の足のサイズは、23.5cmを中心に分布していることが一目で分かります。これを連続した曲線で描くと、右のグラフのように山のような形状になります。このような左右対称で裾の広い曲線を、正規分布曲線といいます。
・正規分布曲線の求め方
図2 は、正規分布曲線の基本カーブです。正規分布曲線は、平均値μ(ミュー)のところで最も高くなり、平均値を中心に左右対称な分布曲線で、中心からの幅は標準偏差σ(シグマ)で数値化することができます。正規分布曲線は、平均値μと標準偏差σという2つの要因で形状が決まります。
平均値μから右(+ 側)へσだけ進んだところと、平均値から左(- 側)へσ進んだところに変曲点があります。変曲点とは、右曲がりから左曲がりへ、あるいは左曲がりから右曲がりへ変わり、接線によって曲線が両側に分けられるような点です。
・正規分布曲線の見方
図2 から、平均値μから標準偏差σの大きさになるときの確率X が読み取れます。シグマの範囲がμ-σ≦X≦μ+σのときの確率は68.3%、μ-2σ≦X≦μ+2σのときの確率は95.4%、μ-3σ≦X≦μ+3σのときの確率は99.7% です。
安定した工程から生産される工業製品の性質は、正規分布することが知られています。図2の正規分布では、平均値から±3σ(3×標準偏差)の範囲にデータの99.7% が含まれているので、標準偏差の3 倍以上離れた測定値が出現する確率は0.3%(100-99.7)しかありません。つまり1,000 回に3 回、10,000 回に30 回しか起こらないのです。この値は極めて小さいものなので、もしそういうデータが得られたときは、工程で何か異常が発生しています。原因追及と対策のアクションを取りましょう。
2. 管理図の活用
管理図とは、品質管理において、製造工程が安定した状況で管理されているかどうかを判断するために用いられるグラフです。図3 は、時系列的に取られた管理データを折れ線グラフに表し、管理線を記入した管理図です。管理線には中心線(CL:Center Line)、上方管理限界線(UCL:Upper Control Limit)、下方管理限界線(LCL:Lower ControlLimit)があり、この範囲から外れた場合、工程に異常が発生していると識別することができます。
・管理図の種類と選び方
管理図は、管理データの性質と活用の狙いにより、多くの種類があります。どの管理図を使うかは、管理対象のデータが計量値か計数値かにより異なります。また、活用の目的を明確にして、管理図を選定することが肝要です。表1 は、管理図の種類と使い方の一覧です。
管理図は、計量値と計数値に分かれています。計量値とは、寸法、重量、時間、温度、圧力、電圧などの連続量として測定されるデータで、計数値とは、製品の数、販売台数、人数、欠点数などの個数を数えて得られるデータ(正の整数値のみ)です。
計量値の管理図には、平均値と範囲を表す X -R(エックスバー・アール)管理図、中央値と範囲を表すMe-R(メデイアン・アール)管理図、個々のデータと移動範囲を表すX-Rs(エックス・アールエス)管理図があります。 X -R 管理図は、長さ、重さ、時間、強さ、収率など連続値によって管理する場合に使われます。Me-R 管理図は、平均値の代わりに中央値を用い、計算が簡単なため現場向きです。X-Rs は、データを取るのに時間や経費がかかり、データがあまり取れない場合に用います。
計数値の管理図には、不適合品数を表すnp(エヌ・ピー)管理図、不適合品率を表すp(ピー)管理図、欠点数を表すc(シー)管理図、単位当たりの欠点数を表すu(ユー)管理図があります。np管理図は、検査個数が一定のとき、不適合品数によって管理する場合に用います。p管理図は、検査個数が一定でないとき、不適合品率で管理する場合に用います。c管理図は、一定の群(サンプル)の中に含まれる欠点数で管理する場合に用います。u管理図は、群(サンプル)の大きさが一定でないとき、一定単位中に含まれる欠点数で管理する場合に用います。
3. 管理図を指標化した工程能力とは
全8回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 統計とは
- 第2回 グラフの種類と活用
- 第3回 統計量の求め方
- 第4回 正規分布と管理図
- 第5回 相関分析
- 第6回 回帰分析
- 第7回 分散分析
- 第8回 実験計画法