前回は、キッチン空間の設計について紹介しました。今回は、空間の明るさについて説明します。
第4回「空間の明るさについて考えよう」を解説していきます。
第4回もくじ
1. 生活照明の基本
蛍光灯やLEDバルブなどを使い分け、空間を過不足なく照らし、生活所作に支障をきたさないように計画するのが照明計画です。建築面積が500m2を超えるような中規模集合住宅や商業店舗などの照明計画では、専門の設備設計士が関与・分担します。しかし、150m2以下の戸建住宅クラスの設計では、ほとんどの場合、意匠設計者が照明計画も行います。そのため、不慣れな場合は、照明の基本を押さえておくとよいでしょう。
JISでは、住宅環境の照度基準として、勉強部屋などの机上面照度で750Lx(ルクス)、リビングルームなど、だんらん空間の照度は約250Lxを必要としています。また、通路や階段室など、足元を照らす程度でよい場所では10Lxあれば十分です。住宅居室内の場合、照度に関する法定規則はないため、この基準を目安に照明機器を選定・設置検討するとよいでしょう。また、照明器具にはそれぞれ配光データ(光の広がり方や、照度分布を示したカタログデータ)が示されています(図1)。これを参照し、適切な照明器具を選定します。
配光曲線図とは、照明器具からの光がどの方向へどれだけの強さ(光度)で出ているのかを示します。左図の光度(cd)は、光源の光束(Lm)が1,000Lmの場合の値を表します。水平面照度曲線図は、照明器具の光の広がり方向と、照度(Lx)の関係を示したものです。縦軸に光源高、横軸に水平距離をとり、光源高における直射水平面照度を求めます。1/2の照度角とは、光源の直下照度の1/2の照度になる点と光源中心を結んだ線、そして光源中心の鉛直方向線とのなす角度をいいます。
生活照明は、全般照明、局部照明、建築化照明に分類されます(図2)。
全般照明は、部屋全体を均一に照らすもので、ダウンライトやシーリングライトなどが該当します。局部照明は、壁に掛けた絵画やサイドテーブルの手元など、対象を限定して照らすもので、スポットライトやテーブルスタンドなどがあります。建築化照明は、いわゆる間接照明のことであり、壁や天井の懐(ふところ)などで拡散反射させ、間接的に照らす方式のものです。建築側の空間要素を用いて照らすため、建築化照明といいます。建築化照明は、光源が直接見えないので、スタイリッシュ、かつムーディーであり、柔らかな光が得られます。一方で、生活所作に必要な照度を補うには不十分なため、局部照明などを組み合わせて使うようにします。
2. 「明るさ」と「明るさ感」
物理的な明るさと、人間が感じる明るさ感は違うものであることを理解しておくことは重要です。図3は、左右どちらもの図も、同じ空間を同じダウンライト12灯で照らしています。ただし、右の方が明るく感じる空間になっています。
違いは配光角度にあり、左図は狭角タイプで床のみを照らしているのに対し、右図は壁面にも当たるよう、広角タイプを用いています。同じ照度でも、壁を照らすとより明るく感じる傾向があります。これは、光で壁を洗うように照らしているので、ウォールウォッシュ効果と呼ばれます。
しかし、明るい方がよいというばかりではなく、落ち着いた、ムーディーな印象の部屋にしたいならば、左の方式の方がよいでしょう。さらに、壁面に暗めの仕上げや塗装を施したり、ウッド調の素材を用いたりすることにより、明るさの重心を下げる、つまり床面に対して壁面の明るさを抑えるといった工夫も考えられます。
照明計画は、単なる照度問題を超えて、実に奥が深いものです。照明方法や対象物の素材選定により、明るさ感のデザインが可能になる興味深さを秘めているといえます。
3. 照明の組み合わせによる空間効果
全6回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 住居・空間の「ひろさ」について
- 第2回 空間の心理的な「ひろさ感・心地よさ」
- 第3回 キッチン空間を考えよう
- 第4回 空間の明るさについて考えよう
- 第5回 空間の色彩について考えよう
- 第6回 商業空間について考えよう