前回は、マイクログリッドとVPPについて紹介しました。天候予測の精度が上がり、スマートメーターと蓄電を組み合わせた需要制御システムが普及すれば、天候により変動する再生可能エネルギーからの発電を、安定した電源として見なすことが可能になります。島国である日本の送配電系統(グリッド)がアジア各国と連携し、一体的に運用されることも予想されます。その頃には、従来型の大規模発電所と分散型電源の区分もなくなり、蓄電とも一体化した制御が普通になるでしょう。最終回となる今回は、スマートグリッドの今後の姿について解説します。
第7回「スマートグリッドの今後」を解説していきます。
1. 主力電源となる再生可能エネルギー
現在、世界的に風力発電、太陽光発電の発電規模が増大し、そこから供給される電力が総発電量に占める比率も急増しています。しかし、天候に左右される発電量によって、送電系統の安定性は大きな影響を受けます。その安定性を維持するために、スマートグリッドが大きな役割を果たします。スマートグリッドの具体的な機能は、通信・制御技術の進展によって大きく変化していきます。究極のスマートグリッドがどのようなものかを定義することは難しいものの、それは「従来からの集中型電源と送電ネットワーク系統との一体運用に加え、情報新技術の活用により、太陽光発電などの分散型電源や需要家の情報を統合・活用して、高効率、高品質、高信頼度の電力供給システムの実現を目指すもの」(出典:横山明彦「スマートグリッド」)と考えられています。
さらに、スマートグリッドの機能を大きく高めるものに、蓄電技術の進化があります。ここで注意が必要なのは、大型蓄電池(リチウムイオン電池が主流ですが、NAS電池、フロー電池なども使われます)は蓄電の一角を支えるものであり、他にもさまざまな蓄電方法があるということです。例えば、電気が余っているときに水をくみ上げて貯蔵(蓄電)し、不足時にそれを下流に放水して発電するという、古くから行われている揚水発電があります。また、地下の大きな空洞に高圧空気を送り込んだり噴出させてタービンを回す、あるいは、再生可能エネルギーが余っているときに重量物を電気モータで釣り上げ、そのまま位置エネルギーとして貯蔵し、必要な時にそれを降ろすことで発電機を回して発電する新しい方式の開発も行われています。さらには、余剰の電気を使って水を電気分解することで発生させた水素を、高圧、あるいは液化して貯蔵し、必要に応じて燃料電池やタービンなどで発電する新しい技術も実用化されつつあります。
資源エネルギー庁の「エネルギー白書2019年」では、世界におけるエネルギー源ごとの発電構成の予測(単位:TWh)として、2030年には再生可能エネルギーが過半数を占めるとしています(表1)。再生可能エネルギーは、まさに主力電源になる途上にあるといえるでしょう。デンマークは、2050年に再生可能エネルギー100%を目指すエネルギー計画を策定しています。再生可能エネルギーの比率を高くするためには、送配電系統の制御を今よりも緻密なものとする必要があり、スマートグリッドの活用は必然となります。
2. 世界の送配電系統の連系
歴史的に見れば、発電や送配電の事業は国単位で管理されてきました。しかし、発電コストには国の間で差があるため、2国間、あるいは、多国間で電力の輸出入が行われるようになっています。典型的な例がEU諸国間で見られるものであり、その電力の流れは系統の安定制御にも影響してくるため、レベルの高いスマートグリッド技術で調整が行われています。
先進国の中で、隣接する国と送電系統が結ばれていないのは、日本と韓国だけとされています。日本は島国だからできない、ということではありません。実際にイギリスは、フランスなどと海峡をわたる高圧直流海底送電線で結ばれています。いま、日本の自然エネルギー財団が、アジア大陸の砂漠地帯に太陽光発電や風力発電を設置し、日本などと高圧直流送電線で結ぶアジア・スーパーグリッド構想を示しています(図1)。アジア諸国を結ぶ36,000kmに及ぶ高圧直流連系線の計画です。同様の計画は中国と韓国も発表しており、これを、世界を対象にした計画にする流れが具体化しつつあります。実現すれば、世界の電力供給網をスマートグリッドで結ぶ長大な計画になるでしょう。
アジア・スーパーグリッド構想は、Desertec Foundation(デザーテック財団:非営利団体)が2003年に提唱した、アフリカのサブサハラ地域(サハラ砂漠より南の地域)に大規模な太陽光、および集光型太陽熱発電を建設し、そこからの電力を高圧直流送電線で地中海を経てヨーロッパに送るというプロジェクトから生まれました。資金や地域の政治的安定性などの問題から実現が危ぶまれてはいるものの、まだ可能性が追求されています。
3. 集中型発電と分散型電源の一体化
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 グリッドとその制御
- 第2回 電力事業の歴史とグリッドの関係
- 第3回 送電系統(グリッド)の広域化
- 第4回 電力事業が直接制御できない発電設備が増加
- 第5回 スマートメーターがグリッド制御の要に
- 第6回 マイクログリッドとVPP
- 第7回 スマートグリッドの今後