これまでの電気メーターは、電力の消費で発生する磁界によって金属の円盤を回転させ、その回転数を電力消費量として数字(kWh)で表示していました。電気料金を徴収するためには、検針員がこの数値を確認し、記録しなければなりません。最近では、この電気の流れをセンサで測定してデジタルデータとして保存し、一定時間ごとに無線通信で送るスマートメーターに切り替わりつつあります。これにより、検針員が不要になるだけでなく、需要家ごとの電力消費量の変化を正確に把握できるようになります。今回は、グリッド制御の要となるスマートメーターについて解説します。
第5回「スマートメーターがグリッド制御の要に」を解説していきます。
1. スマートメーターの機能
電気料金は、電気の消費量を計量することによって、一定間隔(日本では毎月・国によって隔月、半年ごとなど)で徴収されます。従来、計量に使われてきたアナログ方式のメーターは、積算された数値(kWh)だけを表示します。それを検針員が見て記録し、その戸別データをコンピュータに入力して、料金計算をしていました。スマートメーターの場合は、電力の消費によって変化する電圧・電流をセンサで測定し、内蔵の半導体メモリ(記憶装置)にデジタルデータとして保存します。そのデータを、無線通信機能によって一定間隔(日本では 30 分)で地域ごとに設置された受信装置に送り、さらにそこから、戸別のデジタル情報を全体処理するデータセンターに送ります。隣にあるスマートメーター経由で、地域の受信装置に伝送することもあります。
スマートメーターの取り付けは、アメリカから始まりました。世界的に見ると、その普及はいまだ途上段階といえます。日本の取り付け進捗状況を、図 2に示します。2024 年頃までには取り付けが完了する予定です。諸外国での取り付け状況は、図 3 で示すように、国によって大きな差があります。
スマートメーターの取り付けがアメリカで始まったとき、プライバシーの侵害になる、メーターからの電波で健康を損なう、などの理由で拒絶事例が発生し、訴訟になったものもあります。しかし、今ではスマートメーターの取り付けは、ほぼ義務化されています。拒否することもできますが、その場合は一定額の費用の支払いが必要となります。
ヨーロッパでは、EU が加盟国に対して早期取り付けを要請しています。イタリアでは取り付けが 100% 近くである一方、ドイツでは議会が個人情報を侵害すると反対し、導入が進んでいません。イギリスは EU を離脱しましたが、早期取り付け目標を変えていません。しかし、メーターが建物内に設置されていて立ち入りを拒まれることも多いため、政府担当部局の想定よりもかなり少ない取り付け数になっています。
イタリアで導入が進んだ背景には、多発していた盗電がスマートメーターの取り付けによって激減し、電力事業の収支が向上したことがあるといわれています。盗電を行うには、メーターが回らないように、メーターを一時的にバイパスして配線します。その時には電気メーターに電気が流れないため、1 日に何回も電力消費を測定するスマートメーターの場合、すぐ異常な消費として見つかってしまうのです。
2. 電力需要が正確に把握でき、検針員も不要になる
これまでにも述べたように、電力の総需要量と総供給量(発電量)は、どの時点でも常に、かつ厳密に一致していなくてはなりません。それを可能にするためには、どの発電設備を稼働させるか、起動開始時間や出力をどのように変えるかなどを、天候予測も併せ、遅くとも前日からの需要予測によって準備する必要があります。そうしないと、発電設備の稼働が電力需要の変化に対応できず発電量に過不足が生まれ、最悪の場合には広域停電に至る可能性もあります。
電力事業者は、電力需要の変化を知るために、変電所を流れる電力の状態を把握し、必要であれば、その下流の送電線に設置した計測器で監視しています。基本的には、系統全体の周波数の変化が極力小さくなるように、発電設備の稼働を制御します。周波数が高くなれば発電量を減らし、低くなれば発電量を増やして、50Hz あるいは 60Hz を維持するのです。この場合、需要がどのように変化するかの予測が重要となります。
従来の電気メーターは、取り付け場所での消費量を測定するだけで、そのデータを遠方に送る通信機能はありませんでした。しかし、スマートメーターは、日本では 30 分単位という短時間で消費量を測定してデジタルデータにし、その数値を収集しているところにデジタル通信で送ります。さらに、必要があれば、そこからの指示で数値を送ることもできます。このようにして蓄積してきた数値データによって、需要予測の精度を上げることができるため、発電所の稼働の制御も行いやすくなるのです。スマートメーターが計測した電力消費量は、日本の場合 30 分ごとにデータとして送信されるため、それをひと月分累積することによって、料金計算ができます。毎月メーターの指針を見に来ていた検針員の必要性がなくなるため、その労務費の削減効果は大きくなります。逆に、検針作業という職を失う人も出ることから、労働組合がスマートメーターの設置に反対したこともありました。現在では、その問題は労使の話し合いで既に解決済みとなっています。
3. 電力消費を的確に予測し、制御もできる
全7回で下記の内容を解説しています。
- 第1回 グリッドとその制御
- 第2回 電力事業の歴史とグリッドの関係
- 第3回 送電系統(グリッド)の広域化
- 第4回 電力事業が直接制御できない発電設備が増加
- 第5回 スマートメーターがグリッド制御の要に
- 第6回 マイクログリッドとVPP
- 第7回 スマートグリッドの今後