送電系統(グリッド)の広域化|スマートグリッドの基礎知識3

スマートグリッドの基礎知識

著者:YSエネルギー・リサーチ 代表 山藤 泰

前回は、1880年代後半に始まった電力事業が、大規模な送配電系統(グリッド)を形成していくまでの歴史を解説しました。その後、電力事業による電力送電ネットワークは世界各国で広がっていきましたが、こうした伝統的な電力事業とは別の、発電だけをする事業者がアメリカを中心に登場しました。今回は、20世紀半ば頃に登場したIPP(独立系発電事業者)と、送配電系統の広域化について解説します。

第3回「送電系統(グリッド)の広域化」を解説していきます。

基礎知識DL

1. IPP(独立系発電事業者)の登場

伝統的な電力事業は、需要の増加に合わせて発電設備を追加しました。その時には、規模の利益を得ることができる、大型の発電設備を導入しました。発電設備には、石炭・石油・ガス火力、水力、地熱、さらには原子力などがあります。それぞれ稼働から発電開始までの時間や、出力制御の容易さなど、稼働の特性が異なるため、需要予測と実需要に則した全設備稼働の制御は、電力事業が一括して実施していました。しかし、20世紀半ば頃から、こうした電力事業とは別に、規模の大きい発電設備を建設し、そこからの電力を電力事業に販売する新しい事業が、アメリカを中心に始まりました。IPP(Independent PowerProducer:独立系発電事業者)と呼ばれています。IPPの持つ発電設備は、電力事業にとって投資や管理の必要がないため、そこで作られた電力を長期契約で買い取りました。ただし、IPP事業が始まった頃には、電力事業の設備と同じレベルの運転制御に従うことが必須要件でした。当時の電力事業は、自ら直接制御できる電源でなければ受け入れなかったのです。その後、IPPは従来型の発電設備だけでなく、発電出力の変動が不規則な再生可能エネルギーを利用した発電も行うようになります。

20世紀後半には、世界の経済成長に伴って電力需要が大きく伸びました。従来の電力事業にとって、その需要に対応することは、資金的に見ても簡単ではありませんでした。そこへ登場したIPPは、頼れる存在となったのです。電力事業は、設備投資の資金や発電所を稼働させる人員の確保をしなくても、IPPから電力を購入することで需要に対応できました。さらに、契約によって長期に安定したコストで電力を入手できただけでなく、設備の稼働も制御できました。アメリカを中心に市場を広げてきたIPPは、ヨーロッパや日本などにも定着し、電力事業に電力を供給しています。後に電力市場が自由化された際、電力事業に変わったものも多く見られます。

2. 電力送電ネットワークの広域化

電力事業がその電力供給範囲を拡大することで、別の電力事業と供給範囲が隣接するようになり、送電系統が相互に接続されるようになりました。国土面積が大きいアメリカの場合、相互につながった系統に電力を供給する事業者の数も膨大になり、各事業者による系統の制御が難しくなります。そのため、広域の送電系統をまとめて管理する組織が生まれました。現在、アメリカの送配電系統は、東部地域、西部地域、テキサス州と、3つの区域にまとめられています。東部と西部、西部地域とテキサス州の間は小容量の高圧直流で結ばれているだけで、ほぼ独立した3つの系統になっており、それぞれに系統管理組織が作られています。テキサス州が完全に独立した系統区域になっているのは、できるだけ連邦政府に介入させたくないという、州政府の方針によるものです。隣接した州との電力取引は州際通商となり、連邦政府の管理下に入ってしまうため、それを避けた結果です(図1)。従って、3つの地域の電力周波数は60Hzで同じですが同期しておらず、それぞればらばらに運用されています。なお、東部・西部地域の系統は、カナダとも繋がっています。両国間で電力の輸出入が行われているのです。

アメリカの系統管理区域図
図1:アメリカの系統管理区域図

イギリスの場合は、元々が国営電力事業だったため、全体の系統が早くつながりました。ヨーロッパ大陸では、国ごとに送配電系統が構築されていました。EU(欧州連合)が設立された1993 年頃からは、隣接する国の系統とも接続されるようになっています。ただしイギリスは、ヨーロッパ大陸と海峡を隔てて大容量の高圧直流海底送電線で結ばれているため、隣国との電力周波数は同じ50Hzでありながら、系統制御は独立した形になっています。スカンジナビア半島もヨーロッパ大陸とは大容量直流で結ばれていて、独自の制御を行っています(図2)。

ヨーロッパの送電系統区分
図2:ヨーロッパの送電系統区分

アメリカと同様に広大な国土を持つ中国は、国営電力事業が電力を供給しているため、電力ネットワークは1つにまとまって運用されています。奥地にある水力発電などの電力を、超高圧送電によって沿岸部の需要地に供給するなど、国全体をカバーする巨大な送配電系統になっています。韓国も電力事業は国営のため、国内が1つにまとまった送配電系統になっています。

日本では、第1回で述べたように、東西で周波数が2つ(50Hzと60Hz)に分かれています。また、北海道と本州東部の交流電力は同じ周波数(50Hz)であるものの、両区域の間が高圧直流で接続されているため、北海道の送電系統は本州と直流で切り離されているという特異なものになっています(図3)。太平洋戦争中、日本発送電という国策会社があり、東京配電、関西配電といった配電事業会社に電力を供給していました。終戦後間もない1951年、地域単位に発電から電力販売までを1つの民営事業が行うことになりました。その後、1995年に電力市場の自由化が始まってから、発電・送配電・電力販売が、段階を追って別事業として分離されるようになっています。

日本の送配電系統
図3:日本の送配電系統(北海道と東北を結ぶ連系線は、2019年3月から90万kWに増強)、(引用:資源エネルギー庁、2017年10月、P.14)

送配電系統が行き渡っていない地域が多い発展途上国の一部では、太陽光発電と蓄電池などの利用で、送配電系統に依存しない電力供給を行えるようになりつつあります。これは、後の回で解説するマイクログリッド技術の応用といえます。

3. 送配電系統制御組織の設立

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全7回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 グリッドとその制御
  • 第2回 電力事業の歴史とグリッドの関係
  • 第3回 送電系統(グリッド)の広域化
  • 第4回 電力事業が直接制御できない発電設備が増加
  • 第5回 スマートメーターがグリッド制御の要に
  • 第6回 マイクログリッドとVPP
  • 第7回 スマートグリッドの今後

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