n型半導体とp型半導体|半導体の基礎知識2

半導体の基礎知識
著者:長岡技術科学大学 名誉教授 産学官連携研究員 内富 直隆

前回は、金属と半導体の違いについて説明しました。そのとき、半導体のフェルミ準位が禁制帯の真ん中にあることを図示しました。このような半導体は、真性半導体と呼ばれます。今回は、真性半導体に何か不純物原子を導入するとどのように電気伝導が変化するか、さらに、半導体デバイスの基本的な構造がpn 接合であることを解説します。

第2回「n型半導体とp型半導体」を解説していきます。

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1. n 型半導体と電子伝導

n 型半導体は高純度の半導体(主にSi)に、不純物としてリンやヒ素などを加えて作られている電子が主役の半導体です。IV 族半導体のシリコンSi は、四面体構造に位置したSi がお互いに電子を出して共有結合し、単結晶構造になっています。整然と並んだSi 結晶に、V 族元素であるヒ素Asを導入します(図1)。これをドーピング、あるいは不純物ドーピングと呼んでいます。

n型半導体(Si半導体にヒ素Asをドーピングした場合の電子の発生の様子)
図1:n型半導体(Si半導体にヒ素Asをドーピングした場合の電子の発生の様子)

As 原子は、V 族(5 価)に属し、4 価のSi に比べて1 つ電子を余分に持っています。このため、Si 原子を置換したAs 原子の周りを、クーロン相互作用で電子がぐるぐると回るようになります。この状態は、水素原子の原子核の周りを回っている電子に似ています。この電子が束縛から離れると(イオン化すると)、結晶の中を自由に動くことができるようになり、これを自由電子と呼んでいます。このようなイメージを持って、半導体のバンド構造を見てみます。

V 族のAs やリンP をドーピングすると、これらの原子のエネルギー準位はバンドギャップの中に形成されます。そのエネルギーは、図2 に示すように、伝導帯の近くに形成されることが分かっています。これを、ドナー準位と呼びます。ここに収容された余分な電子は、熱エネルギーをもらうと伝導帯に励起され、自由電子になって結晶中を動き回ることができるようになります。このような電子が主役の半導体を、負(negative)の電荷を持つ多数キャリアが存在するという意味で、n 型半導体と呼んでいます。キャリアとは、電荷を運ぶ自由な粒子を指し、特に電気伝導体における電流を担う電子やイオンなどの粒子を指します。

真性半導体とn 型半導体(EDは電子を 供給するドナー準位)
図2:真性半導体とn型半導体(E D は電子を供給するドナー準位)

一方、III 族とV 族からなるガリウムヒ素GaAs の場合はどうでしょうか。Ga 原子の位置を、IV 族のSi で置換してみます。Ga とAs の共有結合から見ると、Siは1つ電子を余分に持っています。従って、GaAsにSiをドーピングするとバンドギャップの伝導帯に近いところにドナー準位を作り、GaAs は伝導帯に電子を供給するn 型半導体になります。このとき、バンドギャップの中央にあったフェルミ準位は、伝導帯の近くまで移動します。これは、フェルミ準位の位置が、ドナー不純物のドーピング量に依存しているためです。ドーピング量をさらに増やしていくと、フェルミ準位は伝導帯の中にまで入り、半導体でありながら金属的な性質を示すようになります。フェルミ準位とは、絶対零度において、電子をエネルギーの低い状態から順番に詰めていき、電子が満ちる最大エネルギー値になる準位をいいます。

通常、どれぐらいの量の不純物がドーピングされるのでしょうか。Si やGaAs 結晶(第1 回の図3 を参照)から見積もると、単位胞に原子が8個あるので、1cm 3 中におよそ10 22 個の原子が含まれることになります。従って、トランジスタの作製では、10 万分の1% レベルでドーピングを制御するために、超高純度な半導体結晶が必要です。

2. p 型半導体とホール伝導

p 型半導体は高純度の半導体に、不純物としてホウ素やアルミニウムなどを加えて作られているホール(正孔)が主役の半導体です。真性半導体のSi 結晶に、ホウ素B やアルミニウムAl のようなIII 族元素をドーピングさせます(図3)。

p型半導体(Si半導体にホウ素Bをドーピングした場合のホールの発生の様子)
図3:p型半導体(Si半導体にホウ素Bをドーピングした場合のホールの発生の様子)

III 族元素(3 価)はIV 族元素と比較して電子が1 つ不足しているため、四面体構造の共有結合で電子1 つ分の穴が空いた状態の結合が生じます。この穴を埋めるために電子が移動してきます。n 型半導体の電子の場合と比べると分かりにくいのですが、あたかも正の電荷を持つ穴が逆方向に動いているように見えます。この穴をホール(正孔)と呼び、ホールが移動することで電流が生じます。このような正(positive)の電荷を多数キャリアとする半導体を、p 型半導体と呼びます。

この状況を図4 に示したバンド構造で見てみると、p 型半導体の不純物準位は価電子帯の上部に存在します。この不純物準位に価電子帯の電子が励起されることで、価電子帯には電子の穴が空き、これがホールになります。III 族とV 族からなるGaAs の場合はどうでしょうか。Ga原子の位置を、II 族の亜鉛Zn で置換してみます。Ga とAs の共有結合から見ると、Zn は1 つ電子が不足しています。従って、GaAs にZn やマグネシウムMg のII 族原子をドーピングすると、バンドギャップの価電子帯に近いところにアクセプター準位を作り、GaAs は価電子帯にホールを生成するp 型半導体になります。

真性半導体とp型半導体(EAは、電子を受容するアクセプター準位)
図4:真性半導体とp型半導体(E A は、電子を受容するアクセプター準位)

一般に、半導体材料に不純物をドーピングして制御することは難しい技術です。青色発光ダイオードを実現させた窒化ガリウムGaN は、通常n 型半導体を示します。しかし、デバイスの作製にはp 型GaN 半導体も必要であり、従来のドーピング技術では実現が困難でした。研究者である赤崎勇と天野浩は、技術的なブレークスルーとして、Mg をドーピングした際に電子線を照射することでp 型半導体の実現に成功し、ノーベル物理学賞の受賞につながりました。

3. pn 接合はダイオード

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全6回で下記の内容を解説しています。

  • 第1回 半導体とは
  • 第2回 n型半導体とp型半導体
  • 第3回 エレクトロニクスを支える電子デバイス
  • 第4回 フォトニクスを支える光デバイス
  • 第5回 半導体集積回路
  • 第6回 社会を支えるさまざまな半導体の応用

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